ソフビそのものについて、僕の浅い知識と独断と偏見でアレコレ勝手に語る、ソフビ雑記のコーナーです。
今回のテーマはソフビの価格について。
ブーム、人気、製造原価、転売……いろいろな要因で、現在はソフビの価格が一昔前より上がってしまいました。
現在、ミドルサイズと分類される15センチ程度のソフビの価格は、4千円~一万円程度の価格帯になると思います。僕がコレクションを始めた当初の1.5倍から2倍程度の値上比率かと思います。
元よりインディーズソフビって、一般の人とコレクターの値段予想にかなり差があります。自分の親に何気なく聞いたら、5~10分の1の価格を提示されました。ある意味、その値段価格は間違っていなくて、もしインディーズソフビが、マスメーカーによって何千個と量産される製品だったら、そのような価格になっていたと思うんです。インディーズソフビは、小ロット生産の世界なので、どうしても値段が高くなってしまいます。材料の大量発注での値引、金型償却の面でのコストカットができません。
でも、僕にとっては、この場合の「高価」は商品に見合わない価格設定という意味ではなく、自分の財布の中身を鑑みて、という意味です。
ソフビを作るのに、どれくらいお金や労力がかかっているのでしょうか? 身の程知らずですが、いつかは自分も作ってみたい、なんて妄想しているので、ちょっと気になります。
僕がきちんと見積もりしたりした話ではなく、ネット上の情報やら、ふわっと聞こえてきた話をまとめて、どんぶり勘定をしただけなので、もしかしたら全然違うかもしれませんが、ミドルサイズのソフビを作るのに、50万円から100万円以上制作費として必要と考えています。
その内訳は、どこからどこまで他人に委託するかで変わってきます。
いつもどおりニワカ知識なので、抜けているところ、間違っているところあればご指摘ください。
1.デザイン
▲もっと上手く描けると思ってたんや……
いきなり原型から入る場合もあるかと思いますが、構想を練って、デザイン画を仕上げます。前、右、左、後ろ、上、後ろ、分割や構造など図面化します。
この作業も本職のデザイナーさんに委託することが可能だと思います。プロでなくても、ハイアマチュアの友人・知人にお願いする場合もあるかもしれません。
この項目に掛かる予算は0円から20万円くらいかな、と思っています。
なお、この記事で本人が手掛ける場合は0円としますが、自分が作業している訳ですので、実際は費用がかかっています。インスピレーションを得るためにも資料や勉強をしている訳ですし実費負担も相応にある。自分のサービス残業は断固として拒否するのに、クリエイターさんにブラック起業のような真似はしてはいけない……。
2.原型
粘土などを使って立体造形をします。
こちらも原型師さんに外注することができます。こちらも予算は0円から20万円くらいかな、と思っています。人気原型師さんだったら天井知らずかもしれません。
ソフビの場合、プロでなくとも素人ならではの、洗練されていない愚直さも魅力のひとつなので、デザインと原型部分は自分が手掛けてもよい気がしますね。もちろん知識不足で成形時抜きに無理のあるデザインをしてしまう事もあって、金型の作り直しなどリスクもあると思いますが……。
4.蝋型置換
粘土などで作った原型を型取りして蝋型にします。蝋型にしてから金型にしないと、溶かして中の型が取り出せません。
この際、原型を分割して、パーツ同士をつなげるカンチャクや、原料のゾルを流し込む湯口をつくります。
いきなり蝋型からつくり、原型とする方法もありますが、かなり難易度の高い制作方法のようです。
蝋型置換作業自体も素人には難しいそうなので、これは職人さんに完全委託が一般的と思われます。
予算なのですが、これが見当がつきません。希望的観測も入っていますが、おそらく金型代と一括になっていると思いますので、次項に預けます。
5.金型
蝋型の回りに金属の膜を何重も纏わせて厚みと強度を増して、金型をつくります。専用の施設が必要なので、完全にプロ任せです。素人目線では一番コストがかかる部分です。
実はブームが加熱する少し前に作家デビューされた方に、どれくらいお金がかかったのか聞いたんですが、その時はだいたい二十万円程度と教えてもらいました。ただ、この値段がどこまで含まれているのかわかりません。金型をつくるだけの費用なのか、蝋型置換やヘッダー制作、成形代を含むのか……。
しかも、現在の金型代って当時の倍に膨れ上がっているらしいです。金型はオーダメイドなのでサイズもパーツ数もバラバラでしょうから、現在は30~40万円程度でしょうか? これに蝋型代が含まれていない可能性もあります。
また、これは金型が一つで済んだ場合です。多色成形で分けたい場合は金型を別にしないといけないですし、スタンダードやジャイアントサイズの場合はパーツ数が多くて、ひとつの金型には収まりません。
今回、ミドルサイズの場合と仮定したのは、おそらく3~4パーツ程度で15センチのサイズって、金型ひとつに収まるサイズだと思うんです。
6.成形
こちらも職人さん任せの作業となります。
原料のゾルは一斗缶みたいなものに入っていて、おそらく缶単位で購入するのだと思います。この原料費に加えて、成形工場の施設使用費、職人さんの作業費。
またしても、なんとなーくですけど、原料の缶ひとつからミドルサイズの場合50個程度作れると思っています。これ一個の単価ベースで費用を考えましょう。一個1000円の場合は5万円、一個2000円の場合は10万円です。正直、一期制作するごとに10万円を用立てするのはキツイな……って思います。
7.加工・組立
成形された素体のバリ取りやカンチャク穴を開けます。これは作家本人が作業されることが多いように思います。
でも自分も何回か未組立キットを作ったことがあるのでわかるんですけど、この作業かなり大変だし危険だし神経使います。小ロットなので、加工失敗したら損失デカイです。
不慣れだとケガの危険もありますし、神経使うので組立に時間がかかります。一個一時間かかれば、50個で50時間。仕事しながらだと一週間以上掛かりそうです。
加工や組立に道具が必要です。カッターは安いけど消耗品ですし、専用のドライヤーやヒートガンも欲しい。
8.塗装・仕上・付属品など
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外注の場合、なんとなく成形費よりは安くすみそうですけど、それも仕様によりけりでしょうか。一個500円で請け負ってくれたとして2万五千円……。50個を半日で塗ってくれたらありそうな見積もりですが、専業ソフビ作家さんでも数週間かけてらっしゃる方も居られますし……うーん。
自分で塗る場合は、塗料は当然必要ですし、筆やウェス、エアブラシなども用意する必要があります。また、金属の塗装マスクをつくれば、さらに制作費が嵩みます。一枚数万円すると思います。
ドールアイや、磁石、中に入れるモールなどのギミック、付属品(チェーンやマント、スカーフ、レジンパーツなど)を取り付ける場合、その材料費も必要です。
9.パッケージ、梱包、発送作業
ヘッダーを作る場合は、自分でデザインするか、それとも外注するか。印刷費だけでも数千円~数万円。
袋を用意し製品を詰め、ヘッダーを折り(綺麗に折る機械は導入しますか?)、ホチキスて留めて、梱包します。
緩衝材やダンボールを用意して詰めて送る。
これをいくらで売りますか?
僕のどんぶり勘定ですが、蝋型・金型・成形のみを外注し、それ以外に道具や塗料など諸々準備して50万円制作費がかかったとします。
第一期完成した50個。
販売できる50個の価格をいくらにすればいいでしょうか?
もし一個一万円だったら、制作費はペイできますが、自分の作業時間のぶん、大損となります。そもそも、有名な作家さんでもミドルサイズで一個一万円はなかなか躊躇してしまう価格設定です。
こういう場合、一期での制作費回収は諦めざるを得ません。でも、自分が勝手に設定した数ですが、50個売るってすごく大変だと思います。売れなければ、次はなかなか生産することができません。たぶん、ソフビ作家さんって現状一期目は赤字スタートなんだと思います。数期目でやっと利益が生まれてくる。ようやくできた利益を制作費に充てる……。ですから、自分の作品をとても大切にされている。
インディーズソフビを取り扱われる小売店さんも、凄く大変だとおもうんですよ。間にはいるぶん、粗利も減ってしまう。メディコム・トイなんて大きな企業が扱っていたのは本当に奇跡みたいな、この文化を普及させようとする執念みたいなものなんだと思います(……なので、最近コラボものが少なく、高額商品ばかりなのかしら……)。
作家さんや小売店さんは、成功を約束されている訳でもなく凄い苦労されているのに、右から左へ流しているだけで莫大な金をピンはねしている転売屋は許しがたい存在と思うのです。
インディーズソフビって、すごくお値打ちじゃないですか?
回答編:あくまで一例として