昨日の記事で、2018年に購入したソフビ紹介が最後でした(紹介し忘れたシリーズが残ってますが)。アクションフィギュアの収集から、コレクターさんの影響でソフビを集めだして、はや7年。指人形から30センチオーバーの大型も含めれば、500体オーバーのソフビに囲まれて生活しております。
求道者としては、未だ道なかばの半人前ですが、とある方に触発されて、製品レビューではなく、ソフビそのものの魅力や今後についてを語ってみよう……そういう趣旨の記事です。僕の主観や肌感覚で好き勝手書くので、極論・暴論も多数見受けられると思いますが、興味あるかたはお付き合いください。
というわけで、ソフビそのものについて、僕の独断と偏見でアレコレ勝手に語る、ソフビ雑記のコーナーです。
ソフビとは
これだけで、くわしくは別の記事で論じて行きたい興味深いトピックスですが、ここでは、中空構造の軟質ポリ塩化ビニル(塩ビ、PVC)で作られた玩具と定義します。
もちろん、これには異論があるでしょう。この定義だと、ファションドールや美少女フィギュアやスタチューなども範疇にはいってしまう場合もあります。ソフビか否かを判断するのに、可動箇所のあるなし、(接着などの)カンチャク以外のパーツ接合方法、海外製か日本製か、製造ロットの多寡など、人それぞれに基準が定まっていない現状があるのではないでしょうか? あらためて定義しようとすると意外とふわっとしていて、難しいことに気付きます。それはつまり、ソフビそのものが未だキチンと語られていないという証左なのだと思います。しかし、人間はカテゴリー分けが大好きな動物なので、もっと小さな群にわけていけば、フォーカスされると思います。
僕がここで語るソフビとは、主にインディーズソフビ、パチソフビ、オリジナルソフビ、怪獣ソフビ、ヒーローソフビ、ジャパニーズソフビ、レトロ(スタイル)ソフビ、アートソフビ、デザイナーズソフビと呼ぶものたちです。
魅力1:壊れにくい
中空構造(中身が空洞)であるソフビは、元をたどれば土偶や陶人形などの土人形がルーツになると思います。やがて、紙を張り合わせた張り子、ソフビの直接的な前身であるセルロイドへと至ります。これらの難点は、壊れやすいことでした。落下の衝撃で破損し、水に弱く、燃えやすい。
それらと比較するとソフビは遥かに扱いやすく、丈夫です。弱く脆いものに高い価値を与えるのは難しいです。
もちろんソフビも経年劣化し、環境によっては破損します。特に寒いときには硬化して、衝撃によって壊れることが多いとされます。密閉空間に長時間放置されると、可塑剤(柔軟性を与えたり、加工をしやすくするために添加する物質)が気化して、ヌメリが発生、ソフビを曇らせたり、塗料にダメージを発生させます。
魅力2:価格、価値
昨今のブームによって、ずいぶん高騰してしまいましたが、一部のメーカー・作品を除けば、一般人でも購入可能です。これについてもテーマとして語りたいです。
また、手放す手放さないにかかわらず、二次市場(中古市場)においても高い価値を持つということは、コレクターにとってとても大事なことです。現状、その価値は「マニアなだけにわかる」範囲に収まっていますが、今後は広く一般にその価値が理解されていくような作品が増えていくのではないでしょうか。それによって過去の作品の再評価につながっていくと思います。
ソフビは長い歴史があるにもかかわらず、同好の士の趣味の範囲で作られ販売されてきました。その背景には、少数ロットから製造可能な参入障壁の低さがあります。副次的に少数であることが希少性を生み、価値を創出してきました。この部分も大変魅力的ですが、もうそろそろ市場規模も大きく円熟を迎えましたし、世界的に認知されるようなメーカーや作家さんが誕生しても良いころだと思います。その兆しはあります。
音楽の世界にインディーズとメジャーがあるのなら、ソフビの世界にもそれがあっても良いと思うのです(ここでいうメジャーとは一般大衆化されるということではないです)。そういう動きが、たとえば浮世絵のようなかつては市民に親しまる世俗のものだったものをアートとして評価されるようになったように、ソフビもまた日本を代表するような名物に変えるのだと思います。
そんなことになったら、今まで気軽に購入できたソフビが買えなくなってしまうではないか! と嘆くことになってしまうかもしれません……そして、すでにその動きは始まっています。でも僕は、ソフビの今後の発展、新しい作家の誕生は、この流れの先にあると思っています。それに僕たちの好きな、あのアンダーグラウンドの陰鬱な感じのするソフビはなくならないと思います。そのステージでこそ輝く作家さんや作品も多いです。
魅力3:コレクタブル性
一度に生産される数が少数であるソフビは、成型色や塗装パターンを変えてシリーズを重ねていきます。そこにコレクタブル性が生まれます。同じコレクター同士でトレードする。中古市場を使って集める。誰がやれと言ったわけでもなく、自分が始めた茨の道です。集めた際には得も言われぬカタルシスが待っています。
ソフビにはフォーマットがあります。
いまひとつふわっとしていますが、我々が感じる「ソフビらしさ」、「これはソフビだ、そうじゃない」とするものが、確かにあります。そこには作成者のかつて集めていたソフビの原風景が溶け込んでいて、それがイデアとなって、集めているソフビがちがうメーカーであっても不思議とソフビというだけで一体感が生まれるのだと思います。
魅力4:作家性・アート性
ソフビはアートか? これもまた一つの語るべき事項ですが、僕個人としてはおおいにアートです。
無論、作成難度や製造キャパシティの問題ではなく、プレミアム性を出すために製作数を減らし、付加価値をつけるために「アートトイ」と喧噪することについては、断固としてNO! という立場です。
ソフビという素材そのものは、子供の玩具だった背景を鑑みても、チープな素材です。チープな素材を元に美しいモノや豊かな世界観を表現すること自体が僕にはアーティスティックに感じます。ソフビ人形のスタイルは、寸胴短足でエッジはゆるく、西洋的な美しさやカッコよさとは違います。そこに新しい価値観を感じます。まったく違う価値観創出や問題提議はアートの範疇だと思うのです。金持ちの投資がアートではないんです。
ソフビ作家の中には、体系的に美術を学んでいるわけではなく、同人的なノリでかつて好きであったソフビを自分のオリジナルのデザインで生み出すという想いで作られている方も多いです。デザインから原型へ、原型から蝋型へ、蝋型から金型、金型から成形作業、成形から塗装作業。ひとつひとつの作業は、プロの職人さんに任せているパターンもありますが、一個人が安くはない投資をし、強い想いを込めて生み出したものには強い魅力を感じて当たり前だと思います。
ブーム時に雨の後のたけのこのように現れては消えていった数々の作品が今ひとつだったのは、安易に今ソフビが売れるという気持ちが先行して、この部分が欠けていたのが一つの要因だったのではないでしょうか。
魅力5:コレクター同士のつながり
狭い世界ですので、同じ趣味の友人とつながるのは容易です。引っ込み思案であっても昔ならともかく、SNSを使えば簡単です。孤独に集めるには、なかなか迷いが生まれやすい趣味だと思います。趣味というものは、極めつけは人とつながる方法の一つなんでしょう。いくらボッチの僕だって、「自分はこういう人間だ」と世の中の人に対して表現するものの一つがソフビだったのです。
ソフビ雑記目次