個人制作によるナラティヴアドベンチャーGOODBYE WORLDをクリアしました。
だいたい90分くらいで全実績が解除できる小作品(オマケ含まず)です。
SwitchとSteamで配信中。Steam版をプレイ。
製作者自身の実体験を元にした、二人の若きゲーム開発者の半生を描いたアドベンチャーゲームです。選択肢などはなく、リニアな物語となります。
大きなネタバレなし。
ノスタルジックなブラウン管テレビ風フィルタ処理された、職人芸的細やかなドット絵グラフィック上で、キャラクターが生き生きとアニメーションします。
専門学校で知り合ったプログラマーの蟹井とグラフィッカーの熊手が、ゲーム個人製作者としての道へ進みますが、現実の壁に打ちのめされて、思うようにならない状況、熊手がある決断を下します。
ハローワールドというのは、プログラム言語を覚えるときに、最初に画面に表示する常套句です。自分にとって新しい世界が開いたことを歓迎する、とてもワクワクするような言葉です。では……グッバイワールドは???
物語は不穏な空気に最初から包まれています。
無駄にプライドが高く、コミュ障のきらいのある蟹井の行動は、自分に近い存在に感じられて、すごく心が痛い……。自分の黒歴史を覗いているかのようだ……。
思いやりがあり、才能ある熊手に、こういうタイプは内心劣等感を感じています。ソースは俺。蟹井みたいな人間は、何故か自分の才能を信じ切っていて、人間関係が上手く結べないのも、自分には才能があるので大丈夫なんて思っていて、コミュニケーション能力に優れた人は、そのぶん才能がないに違いないと思い込む、それで差し引きゼロだ、と根拠なく考える。ソースは俺。
社会不適合者に対する、陳腐な言葉が心をえぐる。
自分が信じていたものが、人から否定された時の絶望感。
自分もゲームレビューで、ひどいこと書いていたかもなー……なんて思うのですが、蟹井自身がゲームの批評が辛辣なので、反省して損した。
やっぱり人間は、他人の粗捜しが得意なクソ種族だぜ。
ゲーム内容は、13話のアドベンチャーパートに、12個のパズルプラットフォームアドベンチャーが挿入されます。このゲームは、蟹井の思い出のゲーム、あるいは蟹井が開発したゲームの体をなしており、物語の展開に難易度が深く関わっています。
内容としては、2Dのマインクラフト(あるいはテラリアか)のようなブロック設置ができるプラットフォームアクションゲームです。
劇中、蟹井が言うようにレベルデザインがメチャクチャで、物語の展開にあわせて難易度が激変します。
敵やトゲがブロック設置で壊せることに早く気がつければ……半分もクリア出来なかったです。
ユーザーは簡単に、神ゲー/クソゲーと言いますが、ゲーム開発ってメチャクチャ大変みたいです。詐欺師じゃないかぎり、クソゲーは誰も作りたくないはずで、それでも世の中で売れるゲーム、売れないゲームが分かれるわけで。
面白いゲームなのに、周知がまったくされずに埋もれるゲームもあり。
ゲーム開発者の心情を表したゲームという感じでしょうか。
創作にかかわる人や、その気持ちを少しでも理解したい人は是非、という内容。約90分でクリアできるとボリュームが少ないと感じるかもしれませんが、描きこまれたグラフィックと切れ味ある演出と、良い映画を見終わった余韻があり、価格に見合った体験でした。
とても素晴らしい作品でした。