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Necrobarista ネクロバリスタ-化石化したジャンルの飛躍を感じる作品

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去年のビットサミットに出展され、2019年度に発売予定だったものの、新しい言語を追加することを理由に、約半年発売延期していたネクロバリスタがついに発売、さっそくプレイしてクリアしました。

 

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ビットサミットで手に入れたグッズ

ビットサミットでデモ版をプレイして、ずっと楽しみにしていました。

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さらっと通しプレイしただけなので、結構サブストーリーが残っています。前半はネタバレ無しの感想です。

ノベルゲーという、言い方は悪いかもしれませんが、ある意味、化石化したジャンルを進化・革新させる可能性のある作品に感じました。一方、価格相応というか、オープニングムービーから感じた物語の壮大さと内容はかけ慣れていて、こじんまりとしていて、ちょっと肩透かしを食らってしまった感はありました。もしかして別ルートあるのかな? 実績は100%アンロックできてしまったので、それはなさそう……。

 ノベルゲーの限界の克服

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そもそもノベルゲーってそういうもんだよ、って言われてしまったらそれまでなんですけど、記憶がうろ覚えなんですけど、数年前にシュタインズゲートを作っている会社だったか、Fateを作ってる会社だったかが(ニトロプラスだったかも知れぬ)、ノベルゲー(テキストアドベンチャー)は、技術力(開発力)やマシンスペックがなくてもつくりやすく、一定のセールが見込めるジャンルだ、って言ってたんですよ。

なるほど、たしかに。

かわいい、かっこいいキャラの立ち絵とテキスト、音楽があればノベルゲーは成立し、コンソール機、モバイル、古いPCでも楽しめます。

 

でも、進化が止まっていたように僕は思えたのです。キャラクターにボイスが付く、キャラクターがアニメーションするなど、ちょっとしたパワーアップはありましたけど、結局のところ、それってアニメの劣化版という立ち位置に思うのです。キャラが喋って動く、というのは、なんだかノベルゲーにかけられた呪いのように思えたのです。

 

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ネクロバリスタでは、テキストそのものを大事にしているような気がします*1。一見、フルポリゴンで描かれたビジュアルはリッチに見えますが、アニメーションはごくごく短時間、もしくは静止物を台車撮影しているかようなカメラワークで、「フィンチ家の奇妙な屋敷でおきたこと」のようにグラフィカルに配置されたテキストを読むプレイスタイルになります。

 

 

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ノベルゲーでありがちなバックログ機能がなく、演出でフレーム外に配置されたテキストを見逃してしまう場合や、ハイライトされたキーワードをクリックしようとして読み飛ばしてしまうということがありましたが、言葉がもつ儚さを感じさせる演出の一部と捉えました。

追記:マウスホイールで5カット分前に戻ることが出来ました。

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あらすじとゲームプレイ

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オーストラリアのメルボルンにあるカフェ「ターミナル」は、死者が二十四時間だけ、この世に滞在を許された場所。そこに死んだことをまだ理解できない一人の青年が現れます。

ゲームプレイは、セミアニメーションのメインパートと、その合間に一人称視点でカフェ内を散策するパートがあります。

 

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メインパートでは、黄色くハイライトされたキーワードがあります。クリックすると、なかなか皮肉の効いたいい感じの注釈が入ります。

 

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これらのキーワードはパートの最後に表示され、その中から7つを選びます。ゲームプレイ中、クリックしようとして間違って読み飛ばしてしまうことが多発しますが、クリックした・しなかったでは変化はしないようです。

 

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キーワードは関連する属性をもっています。登場人物やジャンルなど。

 

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一人称視点の散策パートでは、カフェの中を歩きまわることができ、店内のオブジェクトを選択するとサブストーリーが読むことができます。ロックされているストーリーもあり、解除には前述のキーワードに対応したアイコンを必要とします。

 

(ネタバレ)ゲームの問題点

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ターミナルのキャラクターデザインは、NHK教育テレビのアニメーションみたいな感じですごく好みなんですが、関係性が物語序盤から完成しきっていて、しかも説明されないため、プレイヤーは誰に感情移入したらいいのかわかりません。一人称視点で移動する「私」は誰なのか? 最後までわかりませんでした。

発売前の想像では、6話程度のボリュームで、1エピソードごとに死者(客)が入れ替わり立ち替わりオムニバス形式で切り替わり、最終的に全部がつながる……という感じの物語構造と思っていました。

ボリュームはちょっと信じられないくらい短く、キャラクターや設定をすこし理解できたころには話の終盤でした。ボリュームが多いゲームが良いとは一概にも言えませんが、このお話だったら、もう少し欲しかったです。

 

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メインストーリーは、理解できるまで「なんの話なんだ?」と歯がゆいです。サブストーリーは、オーストラリアの地域に根ざした話、食文化など、興味深く、メインパートと違って凝った演出はありませんが、小粒ながら面白い話が揃っていた印象です。しかし、メインパートのキーワードが鍵になっているというシステム上、読みたいのに鍵が足らずに読めない、パートが別れているサブストーリーもあるので話が前後してしまう、オブジェクトのところまで移動が面倒、未読か既読か選択状態にしないとわからない……などの問題点があります。このあたりの作りは、もう少し詰めた方が良かったかもしれません。

 

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ターミナル店内そのものは、大変魅力的なので、自由に散策できるのは結構楽しいです。

 

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オープニングムービーに登場するキャラクターの半数がほとんどメインパートに関わってきません。想像していたボリュームよりこじんまりに感じた理由です。

続きものなのか、それとも当初の脚本とは別物になってしまったのか……? 凝った演出のゲームなので、そちらに開発リソースが奪われてしまったのでしょうか?

 

(ネタバレ)まとめ

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当初は、Va-11 hall-Aからインスパイアされた作品なのかな、と想像していましたが、かなり毛色の違うゲームでした。劇中に赤い彗星という名のプロレスラーについての言及はありましたが(笑)。

期待したとおり、演出面で光る作品でした。キャラクターの理解が追いつかず、続編や過去編みたいなのが出たらぜひ遊びたいですね。ゲームシステムそのものは完成しているのだし、洗練して派生作品を作って欲しい。

 

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隻腕のロリ・社会不適合者悩める若人とか同性愛者とか、ダイバーシティには考慮された作品に思いました。

 

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アシュリーのロボットは、たぶんネクロマンシーの実験で動物を復活させたものだったのかな? ソフィー(手紙で登場するすごい錬金術師?)は最初から本番で行け、って言ってたのとはちょっと矛盾するような。

このシーンはニーア・オートマータのポッド同士の会話を連想しました。

 

オーストラリアとコーヒーはとても関係が深くて、地元のカフェの人気が高すぎて、スターバックスも進出失敗したみたいですね。

 

ネッド・ケリーは実在の人物で、ウィキペディアを一読して、どういう人物か読むと、なんで儀式に当然のように居たのか理解でき、面白いです。

参照-ネッド・ケリー - Wikipedia

 

 

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*1:※中国語 (簡体字)には音声が付くので、開発会社は意識していないのかもしれない