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冷静に考えてBALMUDA Phoneとは何だったのか?-自分の気持ちにケリをつけるための記事

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今週のお題「自分に贈りたいもの」

デザイン家電メーカーのBALMUDAが、スマートフォン市場へと参入するというのは、多くのガジェッターが注目するニュースでした。僕もプレスリリースが出るやいなや、記事にして追っかけてきました。

 

画一化され面白みの無いスマートフォン市場に、個性はピカイチの「新たな選択肢」となりうる製品を送り出す。

 

そう言われれば、期待が先行してしまうのは致し方ないことではないでしょうか。

結果として発表されたBALMUDAPhoneは、価格には到底見合わないスペック、世界で一番美しい製品を作ったと豪語するには片腹痛い醜いデザイン、アプリで好きなものがインストールできる時代にウリはプリインストールアプリでそれが不要な人にとっては微妙、と市場を含めて評価は散々なものでした。

 

製品発表当時、感情的になってしまい、製品名を伏せる形で酷評記事を書きましたが、その後、外部役員によるインサイダー取引、株価暴落、技適問題、出荷停止、買取拒否、取扱キャリアのやせ我慢?発言など様々なニュースが界隈を賑わせ、色々な意味で名実ともに伝説のスマートフォンになりました。

さて、そろそろ話題も出尽くしたところで、改めて一度は欲しいと思った、このスマホについて、ちゃんと気持ちにケリをつける必要があると思いました。

バルミューダフォンの何が良かったのか、悪かったのか、誰向けの製品なのか、できる限り冷静になって評価して昇華させてやりたいと思います。

良かった点

難関のスマートフォン市場へ殴り込んだベンチャー精神

今回の件でも明らかになりましたが、顧客のスマートフォンに対する審美眼というのは、めちゃくちゃ厳しいです。

BALMUDAが得意としてきた白物家電(生活家電)とは異なり、スペックシートによる比較が容易で、事実として優れた製品がしのぎを削る激戦区です。

BALMUDAは「コモディティ化された」として、進化の袋小路にあって、これ以上差別化が難しい製品カテゴリーと評していますが、それでも明らかな違いを出すために、湯水のごとく研究資金が投入されている修羅の世界なのです。

そんなカテゴリーに、会社として次のステップとして無謀とも言える賭けに出た、そのパンクロック精神には、心の底から敬意を表します。

BALMUDAPhoneを取り扱ったソフトバンクも、その点は良かったと言ってるので、今後も日和らず、別のベンチャー会社が参入してきても、尻込みせずにちゃんと支援してあげろよ、と釘をさしておきたいので、これは良かった点とします。

今回の失敗で、日本から画期的な製品を世に出す機運が失われたら、良い点ではなくなります。

 

社長のジョブズ発言

ネットでは揶揄していますが、僕はこの点も評価しています。

新しいApple製品が出るたびに、ジョブズが生きていたら……云々とジョブズの代弁者気取るくせに、Apple製品買い続ける連中よりも、自分の会社の製品で、我こそはポストジョブズと行動している人のほうが立派です。

本当にジョブズかは別ですが。

smoglog.hatenablog.com

 

悪かった点

マーケティング手法と製品のミスマッチ

画一化され面白みの無いスマートフォン市場に、個性はピカイチの「新たな選択肢」となりうる製品を送り出す。

非常にキャッチーなコンセプトでしたが、この文章を真に受けると、今スマートフォンに不満や退屈さを感じる、多くのユーザーが対象となってしまいます。

BALMUDAPhoneの場合、直接ライバルはiPhone(MiniかSE2)でしょう。

しかし、ブランド力、処理能力、カメラ、機能、価格などあらゆる点で劣っています。

そもそも画一化されたスペックに満たない製品が、どうして一般ガジェットオタクの「新たな選択肢」となるのか? あまりにも言ってることと製品が食い違う。これが大きな反発になってしまいました。

 

結論として、マーケティングがミスリードで、そもそもターゲットは我々ではない、ということです。

製品スペックから紐解くかぎり、BALMUDAPhoneのユーザーはかなり特殊です。

他人と違うものが好き、インダストリアルデザインに無頓着、スペックに見合わない高額品を厭わない経済力、アンチiOS(もしくはOSに頓着しない)、スマートフォンを長時間使わない。

結果として購入した人は、使命感にかられたレビュアー、BALMUDA好き、スマートフォンに興味ない・ほとんど使わない・なんでも良いと思ってるお金持ち、の3パターンが考えられます。

 

そんなごくごく少数に人向けの製品をマーケティングするのに、今回の方法は悪手・ミスリーディングという他ありません。

たとえば、最初はBALMUDA製品をこれまで購入してきたお得意様だけが購入できる、という特別な販売方法だったらどうでしょうか。

その方法だったら、購入者は全員特別な気持ちで製品を購入できるでしょう。

僕のような購入できていない人間の酷評は、購入できない人の見苦しいヤッカミと処理できます。

中には、特別感にかられて購入してみたい、という新規ユーザーも現れるでしょう。

このマーケティングなら、最初から自分は興味を持たなかったでしょう。

結果論ですが、たくさんの人に製品を知ってもらいたい、とするなら、この方法でも良かったと思います。注目度も変わらなかったと思います。

 

アプリだけは、ストアでも自由にダウンロードできるようにして、BALMUDAの世界観の一部を味わってもらう。フル機能はBALMUDAPhoneで、って感じで展開しても良かったように思いますが、やっぱりアプリに開発資金を使うのはもったいないと感じました。

 

 

デザイン

BALMUDAPhoneの製品自体の評価は、自分は嫌いなデザインですが、好きな人もいるのでしょう。

よくデザインに趣味嗜好があるから、良い悪いは人それぞれと言いますが、断言します。

デザインによって、好き嫌いは別れますが、良いと悪いは絶対に存在します。

 

BALMUD Phoneは悪いデザインです。

 

全ての面を曲面で構成する、という特に意味のないデザイナーのわがまま一点のせいで、色々な部分にしわ寄せがでています。

すでに、本体分解動画が非公式のチャンネルで公開されており、京セラが手掛けたBALMUDAPhoneの作りは実直で、価格に対してボッタクリというほどのひどいものではないそうです。

しかし、全ての面を曲面で構成しているせいで、ただでさえ小型スマホなのにバッテリー容量が少なくなり、カーブした端面が薄いせいでフロントカメラが搭載できず古い機種のような太いベゼルと、余白が余っている印象なのにパンチホールカメラという、合理性の欠ける端末なっています。

良いデザインというのは、見た目だけにとどまらず、機能と価格のバランスを含めて、趣味嗜好を凌駕してユーザーが当たり前のように受け入れられるものです。

 

丸っこい見た目という、特に目立った利点ではない要素のために、ユーザーが必要としている・当然クリアすべき当たり前の要素が欠けています。それを個性というのは、アバタもエクボ、我が子カワイイの盲目的な評価です。

 

そもそも、ディスプレイサイズが実験の結果、最適サイズが見つかったというのに、部品が納まらずにインチサイズを大きくした、そんな妥協の産物を「この世で最も美しいもの」 と豪語できる神経を疑います。

 

プレスリリースが出た時の僕の記事で、僕はこう書いてました。

ただ自社のブランドロゴをキラリとつけただけの「他とほとんどスペックの変わらない、デカイ画面、薄い本体、性能の良いカメラのスマホ」 を売る訳がない

 ……まあ……確かにそうでしたが、まさかそれ以下のものを売るとは。

 

結果、BALMUDAPhoneがもたらすもの

BALMUDAってちょっと高価いけど、かっこいいし、イケてる機能ある白物家電に憧れを抱いていました。

BALMUDAPhoneが値段が妥当ではないと言われていますが、僕にはただでも使いたくない、所持しているのを見られるのが恥ずかしいと感じるくらいの製品だと思っています。

BALMUDAPhoneの登場によって、BALMUDAの他の製品が、なんだか信用できないものになってしまいました。

 

ひとつの製品が、一人のアンチを生み出した。

それくらい破壊力のある製品だった。

BALMUDAPhoneは、良くも悪くもインパクトのある製品でした。

 

BALMUDAは賭けに出て、負けた。

現場は大変でしょうが、それだけです。

時計の針は戻せない。

しかし、白物家電の評価が本物なら、再起も図れるでしょう。

生半可なモノではもう無理です。

 

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