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百英雄伝-クラファンバッカーの所感その1シナリオ/世界設定編:意図したレトロさなのか、単純に雑なのか

初代PS時代のRPGの名作とされる、幻想水滸伝I&IIのオリジナルメンバーが再集結した精神的続編の百英雄伝がついにリリースされた。クラウドファンディングで、当時ゲーム部門で歴代もっとも出資を集めて、期待された本作だった。

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僕は、本作をクラウドファンディングで出資し、苦い経験を被った。

「百英雄伝 クラウドファンディング 炎上」で検索すれば詳細がわかるが、レビュワーである僕のスタンスを理解してもらうのに、簡単に説明する。

まず、このクラウドファンディングを立ち上げた元幻想水滸伝の開発者たちは、「自分たちはゲーマーであり、皆さんと同じように数々のゲームのクラウドファンディングに出資して、何度もモヤモヤさせられた経験がある(おそらく進捗レポートがなかったり、時短独占リリース契約で当初リリース予定だったストア・機種で発売されなかったりなどのことを言ってるのだと思われる)。そういう過去の失敗談から学んで、バッカーをモヤモヤとさせないようにするので、安心して出資してくれや!!!」 という呼び込み方をしたのだった。

そして、月日が経ち、しっかりと開発進捗レポートが届き、安心して見守っていたところ、とある年にXboxから発売日と同時にゲームパスでのフリープレイが発表されたのだった!!

もちろん、ゲームのクオリティアップのため、マイクロソフトのサポートが必要と言われれば、一定の理解はできる。だが、先行出資者である我々にその報告がまったくなかった(守秘義務があったとしても、進捗レポートにて、賛否が分かれると思うが近日大きな発表があるなどの匂わせくらいは欲しかった)のが裏切られた気持ちで残念だった。

当然、通常価格よりも安いから出資した人は、詐欺ではないか、と怒りを募らせる人も多かったし、クラファンページは荒れに荒れた。いくら後から苦渋の決断でした、と謝罪されても、我々クラファンバッカー組は、金づるとしてはもう用済みだ、とばかりに切り捨てられ、マイクロソフトに揉み手してすり寄ったイメージだ。

なにより悲しいのが、発売された百英雄伝がどんなに名作であっても、怒りによって楽しめないのではないか? という懸念であった。

その後も前日譚であるアクションRPG「百英雄伝Rising」のクラファンバッカーへの配布遅れによって、初期出資者がゲーパスフリープレイ組の後からしか遊べない、そもそも重大新情報や先行プレイはメディア先行というスタンスなど、開発のスタンスや運営にもモヤモヤが募った。

しかし、百英雄伝リリース直前、開発スタジオ代表でシナリオライターの村山吉隆氏が逝去された。最終調整段階での急逝であり、故人のことを想うと発売を見届けることができず、無念だったように思う。

虫が良く不謹慎な話であるが、故人を恨むほどではないな、と思い直し、今回の件は勉強させてもらったと思うことにした。今後は、たとえ、どんな仕打ちを受けたとしても、自分の僅かなお金で発売できるかもしれない一助になれば本望だ、と思えるようなプロジェクトに出資しよう、と思った。

発売して遊んでいても、恐れていた怒りはまったく沸かない。

だが、こういう経緯があり、百英雄伝を評価する際、どうしても厳しい目になってしまうのをご了承いただきたい。

前置きが長くなってしまったが、今回はシナリオと世界設定についての所感である。

プレイ時間は3時間程度と序盤も序盤、その時点での評価は早くないか? と思うかもしれないが、開始数分から思うところがあり、それはグラフィック、システム、UIにも同等にある。それらは、大部分がまだ開放されていない状態だ。また、グラフィック、システム、UIはアップデートされる可能性があるが、シナリオライター急逝の状況で、シナリオ面の改定は望みが薄いだろう。

冒頭数時間の流れにそって、自分がどこが気になったか思うところを述べていく。

総勢100人超えの一大叙事詩の始まりにしてはアッサリしすぎた幕開け

オープニングは空が映し出され、滑空する小鳥が猛禽に襲われているシーンだ。

被写界深度操作によって、リッチにボケ味が効かされたグラフィックを魅せることを狙った演出だと思う。

小鳥を助けるため、主人公ノアは猛禽に石を投げつける。

しばし小鳥と戯れ、橋から村の奥に振り返ると奥に自警団(だっけ? 貴族の私設兵団のような)が集まっているのが見える。

主人公ノアは、今日兵団入りしたばかりの新人だ。この村の近くで、古代文明の遺跡が発見され、隣国の帝国軍と合同で遺跡調査へ乗り出すシーンである。

いきなり疑問なのだが、本日初日のノアは、隊長や先輩方を待たせる形で一番最後にノコノコやってくる。

そして橋の位置は、村の入口とは別、袋小路の民家へ向かう道にある。

つまり、主人公ノアは、新人のクセに一番最後に慌てることなくやってきて、襲われている鳥を見つけるほど余裕がある。

その後のノアのセリフから察するキャラクター性とは、かなりかけ離れた印象だ。

このワンシーンを切り取っても、シナリオと絵面のミスマッチが感じられる。

想像だが、先行してシナリオが書かれ、後からビジュアルを作ったら、違和感が出てきた感じがする。

このシーン、別にノアを兵団の新人ではなく、最初から隊長として登場させれば、この場だけではなく、後々の展開においても違和感はない。

シナリオ担当の故・村山吉隆氏は、幻想水滸伝I&IIのシナリオ担当、特に幻想水滸伝IIは屈指の名シナリオと評されるので、この場面展開の雑さは、資金面が理由だったのか、発売日が理由だったのか。話の流れ的にオカシイと思えない感性なのか、作り直す余裕がなかったのか。

 

ありきたりなオープニングかもしれないが、たとえば、主人公と帝国貴族が最初から戦闘状態、鍔迫り合い状態から、「昔は友情を結んでいたのに、どうしてこうなっちまったんだろうな……」と過去を回想するという始まり方だったら、このオープニングよりはドラマチックに感じたかもしれない。

 

ディテールの甘さ

異世界の世界設定で、気になる部分はたくさんあり、例えば村の住人の話を聞くと、ある男の子は獣人を見たのは初めてだ、と言うし、村の道具屋では住人の奇異の目にさらされて逃げ隠れている獣人兵がいる。

しかし、この世界、獣人は他の田舎村にも普通にいるし、街道を行き来している描写もある。この村に獣人が来ない理由はあるのだろうか? 兵団の隊長ガオウも新人のとき見回りとかしたことないんだろうか?

 

この世界独自設定に「魔導レンズ」というものがある。これは古代文明のオーバーテクノロジーのようだ。一方で「ルーン」というものもあるようだが、「魔導レンズ」と「ルーン」はどう違うのだろう? 英語の場合、「魔導レンズ」は「ルーンレンズ」と記されるので同じだろうか? 

魔導かルーンかどっちかに統一しなかった理由はあるんだろうか? 「魔導レンズ」と「ルーン」は、戦闘以外にこの世界ではどういう風に使われているんだろうか? 貴族も一般人も「魔導レンズ」と「ルーン」が普通に使う世界、貴族の成り立ちはどういったものなんだろうか?

街のルーン屋で、どういうものなのかわかるかもしれないと入店すると、何やらポーションのような容器が並んでいる。ルーンとは液体なのか????

どうもルーン屋は、きちんとルーンとはこういうモノです、というディレクションされたものではなく、一般的な中世ファンタジーの魔法屋のイメージでしかないように思われる。

こんなふうに、世界設定の部分で、「ふんわり」した印象を受けるのだ。

 

話をシナリオに戻そう。

主人公ノアは、隣国帝国の貴族、セイと合流して遺跡探索へ向かう。

ゲストキャラ状態の帝国貴族兵の装備を確認。おそらくパーティー離脱すると思うので、追い剥ぎできるか確認しようとしたのだ。

装備は外せないようだ。

それはともかく。

貴族様が一般人と同じ、ヘッドバンドと布の服を装備している……。

こういうところ!!!!

性能は同じでも、貴族なんだから帝国兵士官服とかそういう装備にしたら雰囲気でるのに……。

ディテールの甘さを、これで好しとするほど、開発状況が芳しくなかったのか、そこまで意識がまわらなかったのか。

この甘さ、ぬるさ、雑さが作品全体を支配していそうでげんなりする。

 

プロットの杜撰さ・ビジュアルとのミスマッチ

遺跡探索を通じて、一般人のノアと帝国名門貴族のセイは友情を結ぶ。

ダンジョン探索中、どう見てもちょっと登れば越えられそう崩れた場所を「行き止まりだ」 と言い張り、さっきまでなんともなかった床が崩壊し、青年貴族セイが巻き込まれてしまう。

「あぶない!」 とセイを救うわけでもなく、ただ崩壊に巻き込まれに行く主人公ノア。

仲間の声が届かないほどの深い遺跡の硬い石の床まで自由落下するが、なぜか無傷だった。

暗転の中、水音で「ボチャーン!」 で助かった理由簡単に説明できねぇ……? 気をうしなったセイを岸まで泳いで救ったノア、力尽きたノアを介抱するセイという流れで、ただ崩壊に巻き込まれにいったポンコツノアという状況が解消できるし、他国の貴族と平民の間に生まれた友情の説得感も強まるのにな……。

 

ノアが気絶中、セイは周囲を散策したが出口なし。仲間の救出を待って、しばしノアとセイが語り合う。そして、唐突に壁が崩落して出口ができる……展開が雑過ぎるだろッ!!!

なあなあ、ちゃんと二人が無傷だった理由、都合よく出口ができた理由、伏線回収あるんだよな????

 

困難を乗り越え、友情コンボ(本当にそういう名前なんだよ……)を発動する二人。

仲間と合流し、やたらと固く、第2形態のほうが弱いのボスを倒し、目的の古代のアーティファクトを回収する。

合同演習は大成功。

しかし、その背後でノアの国とセイの国の情勢がきな臭くなっているのだった。

 

そして半年後……。

ノアは兵団の隊長代理になる。

す、スピード出世っすね。

人材いないのかな……。

でも、国の首脳会談に出席するような貴族のお嬢様の私設兵団なんだよな。こんなイイ加減でいいのかな。

最初に書いたとおり、最初からノアが隊長だったら良かったんじゃね?

もしくは、ガオウが強敵から身を挺してノアを守って亡くなってしまって、臨時でノアに隊長代理を託す。その後、ガオウそっくり(内部データ的には同一)の弟が出てきて、「お前なんて認めねーよ!」 みたいなイベントが発生し、問題解決して認められ正式に隊長になるとかなら熱いのに、めちゃくちゃ蛋白……。

 

……とは言っても、まだ序盤、焦る時間じゃない

しかし、百英雄伝の魅力はそこではないのかもしれない。

総勢100人を超える仲間達との群像ドラマ。

そこへ到達すれば、面白さが加速するに違いないと期待している。……している。

 

しかし、いきなり「俺を仲間にしたければ〇〇を3体倒して来い」 っていう生成AIでも作らなさそうな創作性のカケラもないテンプレイベントが発生し、がっくり肩を落とした。

……期待……。

 

百英雄伝は、現状幻想水滸伝I&IIの精神的続編が出ただけで感涙モノという生粋のファンか、このレビューを読んで、こまけぇところをグチグチとアホらしいと思った貴方にオススメだ。

遊ぶ時間が人生の無駄だ、と思えるほど壊滅的に出来が悪いわけではないが……現状、懐古的JRPGのクラファン初の作品としては、シー・オブ・スターズのクオリティには太刀打ちできない。

システムやUI、グラフィックについても思うところあるので、もうしばらくプレイしてみて、感想固まったところでレビューしたい(さっそくアップデート来ていた)。

 

続き:コントローラを置くことにしました。

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