90年代黄金期絶頂の日本のRPGをオマージュして制作された「シー・オブ・スターズ」 を、隠し要素含めて完全クリアしました。
総プレイ時間は約37時間。真エンディングを開放する収集要素については、攻略サイトを利用しましたが、大満足のボリュームでした。ちなみにほとんどSteamDeckで遊びました。めちゃくちゃ良かったです。スクショの共有に問題がありましたが……。
記事後半にストーリーについての重大なネタバレがありますので、その前に警告を入れます。
Sea of Starsを端的に説明すると、アートスタイルはクロノトリガー(BGMにクロノトリガーを担当した音楽家が一部楽曲を提供)、バトルシステムはスーパーマリオRPG、ゼルダの伝説のようなパズル要素を含むダンジョンが組み合わさった、16ビット世代に直撃なタイトルです。しかも、単なる懐古主義ではなく、現代に合わせたブラッシュアップが施されています。
- 絢爛豪華なアートワーク
- 一戦一戦がとても重厚なバトル
- 現代のAAAタイトルが継承できなかったもの
- ストーリーは1ミリも理解(共感)できない(ネタバレ)
- このスタイルは過去のものではなく、別系統として進化していく
絢爛豪華なアートワーク
最初のトピックは、圧巻のグラフィックスです。
各エリアをつなぐ、ワールドマップというスタイルはクロノトリガーを踏襲したものです。細かく書き込まれたピクセルアートは圧巻です。キャラクターたちのアニメーションも豊富かつ滑らかで、とても丁寧です。
主人公たちは太陽と月を操り、昼と夜を自由に操作できるのですが、描画されるあらゆるオブジェクトの影が、滑らかに動いていきます。夜になると、キャラクターの放つ光や蝋燭の光がきちんと影をつくってアニメーションします。
あまりに自然だけど、どうやってるんだろ? と不思議に思っていたのですが、おそらくですが、ピクセルアートのフィールドのレイヤーの下に、どうやら見えないポリゴンのフィールドがあるようですね。
めんどくさそうな仕様ですが、フィールドの高低差の破綻無さも、この見えないポリゴンのレイヤーのおかげのように思いました。
一戦一戦がとても重厚なバトル
バトルは、クロノトリガーと同じシンボルエンカウント方式。
通常攻撃、防御、スキルなどで特定のタイミングでボタンを押すことで、ダメージアップしたり、連続攻撃したりできる、いわゆるスーパーマリオRPGのアクションコマンドバトルの要素があります。
攻撃には属性があり、スキルを使用してくる敵に対して、特定の属性攻撃を与えることで(上の画像では木槌=打撃攻撃を2回)キャンセルができます。
パーティーメンバー達は、一人ですべての属性攻撃をカバーできないため、キャラの入れ替えを駆使して戦う必要があります。控えメンバーとしてずっとベンチを温めているような状態にはならず、活躍の機会が必ずあるわけですね。
攻撃や防御、スキルを使用すれば、コンボゲージが溜まります。
三段階でストックできるゲージを使用して、仲間とペアを作って合成技を使うことができます。ペアとなるキャラを呼び出すことが簡単にできるので、瀕死状態の仲間と緊急入れ替えなどにも使えます。
通常攻撃では、属性付与とダメージアップの効果のあるマナを敵が噴出しますし、MPも回復します。昔のRPGでは、ボタンポチポチしてるだけだった「たたかう」が、とても重要な意味をもっているバトルデザインが秀逸に感じました。
個人的なバトルの不満点は、最終奥義である究極技にアクションコマンドがなく、カットシーンをタラタラと見ているだけ、というのが邪魔くさかったです。
ボス戦などでは、結構ゲージが溜まりやすく、何度も使用していたので、アクションコマンドの介入タイミングがあるか、もしくはスキップ機能が欲しかったですね。
バトルは、結構考えて戦わなくてはいけないような難易度になっていて、ボタンポチポチ押しているだけで終わらせたい人には向いてないかもしれません。
逆に、昔のフィールドの敵がめちゃくちゃザコになるので、スキップできるようにしてほしかったです。
難しいようでしたら、秘宝というアイテムで難易度が調節できます。
僕の場合、サポート系の秘宝はオンにして、チートすぎるのは封印していました。
あまりレベルが上がらないゲームで、戦闘頻度も高くなく、1回のバトルが長くなりがちなので、ちょっと癖があるかもしれません。個人的には、とても良い難易度に感じました。
このゲームでは、戦闘不能になっても数ターンたつと復活するので、参戦メンバー3人全員がHP0にならないとゲームオーバーになりません。この設計も自分好みでした。圧倒的劣勢から、それでも諦めずになんとか復帰させて、敵を倒す。
レベルは、一部上昇するポイントを任意で割り振ることができます。
たぶん、一番重要なのはHPです。最高でも300くらいしか最大HPがあがらないので、少しでも盛っておけば、格段にゲームオーバーしにくくなります。
次に重要なのはMPです。たった1ポイントしか上がらないので、最初はまったく振ってなかったのですが、スキルが強力なこのゲームでは、MPの最大値の高さはかなりのアドバンテージとなります。スキルを使用することで、コンボ・究極技のゲージも溜まります。MPが多ければ多いほど、スキルブッパして、コンボや究極技を連続で繰り出すというループが生まれるのです。
他の基礎ステータスは、装備品などで盛れるので、重要度が低くなるかな。強いていえば、防御か魔法防御を取る感じでしょうか。
現代のAAAタイトルが継承できなかったもの
昔のAAAタイトルってこういうのだったよな、ってしみじみ感じます。
今の大規模タイトルは、たしかにグラフィックス面ではめちゃくちゃ豪華になりましたし、オープンワールドの作り込みは素晴らしいですよ。でも、どこか一点豪華主義的といいますか、予算が足らなくて余剰部分・遊びの部分がないと感じます。
シー・オブ・スターズでは、もう本当にコテコテではあるんですが、街つくり、ボードゲーム、クイズや小さなメダル的なアイテム集め、釣りなど、各種アクティビティが豊富です。
サブクエストがクエストボードでタスク管理され、プレッシャーを与えてくることはありません。
もう本当、こういうので良いんだよ……ってしみじみ思いました。
ストーリーは1ミリも理解(共感)できない(ネタバレ)
世界を滅ぼす強大な邪神へ立ち向かう宿命を背負った二人、という王道も王道のあらすじですが、Sea of Starsのシナリオは、とてもアバンギャルドです。開発スタジオの前作がザ・メッセンジャーなのですから、それも当然なのかもしれませんが、僕個人としては、あまり好みのシナリオではありませんでした。
出てくるサブキャラクターは誰も彼もが尖っていて、とても力強いキャラクター造形です。逆に至点の子の二人が食われている印象です。二人の名前がすっと出てこないくらいには……。
このゲームの主人公ってガールなんですよね、どう考えても。指輪物語のサムとか、ダイの大冒険のポップとか、真の主人公ってこっちじゃ? って思う名作はありますけど、Sea of Starsの二人はイマイチ魅力を感じられませんでした。
ヴァレアとゼイル(調べた)って、自分の意思ってあるのかな。与えられた使命を最後まで疑いもせず遵守して、お人形さんみたい。ふたりとも良い奴ではあるものの、もう少し人間臭さが欲しかったです。
物語は、重要な登場人物たちが、プレイヤーへの説明義務を放棄して、訳知り顔で勝手に物語の次の章へ進めていきます。
いつまで経っても伏線回収されないまま、通常エンドは「俺たちの戦いはここからだ!」 という感じでポカーンとしてしまいました。馬鹿な僕にもわかるように、もうちょっと種明かしみたいなパートが欲しかったな。
先代の至点の子は一体何がしたくて、裏切ったんだろう……。校長が黒幕と思ってたので、意外性があり面白かったんですが、もうすこし心情を語って欲しかったです。校長が職務放棄するシーン、めちゃくちゃ良かった。
真エンドへの到達は、ミニゲームや収集要素を完全に集めることで開放されます。
マップ上でオウムを呼ぶとヒントがもらえるのは助かりました。
ちなみに、真エンドのガールの復活のシーンってまんまクロノトリガーですよね。
ガールの復活は、自分は有りだと思いました。べ=ストがパーティー参入時、「え、こいつなの?」 と思いましたが、いろんな場面でメタモルフォーゼするのも面白いし、キャラも可愛くて、とても好きになりました。あの瞬間、入れ替わっていたとは……名演技ですね。
ガールがセライに惚れてたとは気が付かなかった。その後どうなったんでしょうね。
このスタイルは過去のものではなく、別系統として進化していく
星の海をわたり、セライの世界に渡った時、「うわー、コレだよ! これ!」 って思いました。現代の最新ゲームはとても良くできているけど、こういう飛躍したシーンが描けていないように思うのです。その場かぎりで、大胆に素材を使い捨てできない。
描く部分を限定して、想像の余白を残すことで、もっと豊かなゲームに作る可能性が、この時代のゲームにはあったように感じます。
Sea of Starsは自分にはマッチしなかった部分があるものの、開発者の情熱は本物で、ここまでやるか、と何度も鳥肌が立ちました。おまけ要素であるはずの開発室でも、一人ひとり顔が違うし、前、後ろ、横のグラフィックス描いてるし……、良い意味でイカれてました。こういう熱意あるゲームが評価されて、脚光を浴び、沢山売れてほしいと思ってます。