インディータイトルながら、海外では今年もっとも優れたゲームに贈られるゲーム・オブ・ザ・イヤーなど、数々の栄冠に輝いたHades（ハデス）の日本語翻訳の追加が、PC版にやってきました。Switch版は６月２４日配信予定。当初冬と予告されていたのですが、かなり遅れましたね。Switch版のあとに、PC版が追加されると思ってたので、個人的にありがたいです。
Switch版の発売により、おそらく爆発的ヒットすると思いますので、どんなゲームなのか参考になれば幸いです。
ハデスは、クオータービューのローグライトアクションゲームです。ローグライトとは、僕の解釈で言うと、ランダム生成されるダンジョン、ランダムで落ちているパワーアップ要素、ゲームオーバーすれば最初からやり直しの３つの要素があるゲームです。
自分もあまりわかっていなかった細かい違いですが、ローグライクとの違いは、ローグライクは、元となったローグをオマージュしたターンベースのダンジョンクローラーで、不思議なダンジョンがそれに当たります。
ローグライク=ローグのような、ローグライト=ローグ要素がある別ゲー、の違いなので、一部のコダワリの強い人以外はどっちでもえーやん、って感じ（実際、公式ストアページでもローグライク・ダンジョンアドベンチャーって書いてある）。ブロガーからすると、正しい言葉を使いたいけど、検索ワード的には、どっちも入れたほうが無難だよなー……ってちょっと厄介。
さて、ローグライトアクションゲームという、インディータイトルでは、最近流行りのジャンルですが、ゲーム・オブ・ザ・イヤーを獲得するほど、どこが評価されたんでしょうか。
日本語翻訳が付くまで二年ほどかかりましたし、基本海外レビューを翻訳したものを読んだのですが……正直、あんまりピンと来ませんでした。
スピーディーで、テンポよく、非常にクオリティが高い。ふーん……ただ単に出来がいいだけ？ 僕のゲームレビューを何本か読んでもらえば、ご理解いただけるかと思いますが、自分は、出来の良さよりも、荒削りでもキラリと光る革新性のほうを評価するほうです。
その点、ハデスのメディアレビューは、このゲームならではの面白みがわかりませんでした。
舞台設定も、凡庸に感じました。冥府の王ハデスの息子が、家出を敢行。その手助けとしてオリンポスの神々が功徳（アビリティ）を授けて、手助けするというもの。ギリシア神話がモチーフということで、オリジナリティを感じません。設定＆システムでいうなら、このゲームを開発する会社の前作のTransistorのほうが尖っているように感じました。
実際、ハデスを３０分プレイして、「特に新鮮味を感じないな……」と返金リクエストを一瞬考えました。踏みとどまった要因としては、ローグ要素の一つ、死んだら最初からやり直し、全て失う……のではなく、持ち帰って強化できる要素が多いことと、スタート地点に戻る度にストーリーが更新されて、キャラクターと新しい会話ができることがあったからです。
死んだら一区切りではなく、スタート地点に戻る度に、タスクリストが更新されて辞め時を失うのです。この感じは、牧場物語やスタデューバレーのような農業シムに似た感覚です。
そう、このゲーム、かなりテキストがリッチなんですよ。日本語追加が、当初冬と予告されていたのですが、かなり遅れてしまった理由も、ここにあるんでしょうね。
死んで戻る度、徐々に新しいキャラが追加され、謎や伏線が回収されていきます。
気づいたのは、ローグライトアクションに珍しい重厚なストーリーは、ゲームプレイとも融合していて、それがローグライトゲームの最大の欠陥を上手に解消していると思いました。
その点を詳しく説明します。このゲームは、前述のとおり、ハデスの息子ザグレウスが、親戚であるオリンポスの神々の手助けを受けて、冥府を脱出を目指すゲームです。
マップ上の敵を一掃すると、シンボルマークが現れて、それをクリックすると、オリンポスの神々が降臨して、３つのアビリティから一つを選んで習得することができます。
アビリティはランダムで、そこは確かにローグライト。ですが、通常のローグライトであれば、会話などなく、ただのアイテムを拾ったという感じになると思います。
ローグライトの欠点というのは、このランダム要素が、ゲームのおもしろさではなく、ストレス・攻略の障壁になっている点だと思うんです。自分の得意な・好みのアイテムやアビリティがドロップしなかったとき、難易度が上がってしまう・やる気を失ってしまう。アンロックされ種類が豊富になってくると、もういっそ最初からビルドさせてくれ、って感じてしまう。
対して、ハデスは、アビリティ習得や武器選択に至るまで、全部ストーリーがあって、回数を重ねるごとに、更新されていくんですね。
ステージの序盤で、苦手なアビリティが出て、ダメージを多めに食らってしまった。こんなとき、普通のローグライトゲームだったら、今回の挑戦をリセットして最初から始める、ってことになります。
ハデスの場合、今回は攻略を諦めて、回収できるアイテムを獲得すること、神々と会話して、隠された設定を公開させる……そんなモチベーションに変わるんですね。あらゆる選択・あらゆるループが無駄にならない。ここが革新的。
また、最初にギリシア神話なんて、オリジナリティ感じないというふうに書いたのですが、一枚絵が美しく、キャラの個性も強くて、どんな神がでてくるのか楽しみになります。
武器はステージ最初に選択できるんですが、この武器も敵を倒せば倒すほど、ストーリーがアンロックされていくので、別の武器を試そうって気になるんです。攻略中に性能が変化するので、ランダム要素によるシナジー効果を積極的に楽しもうと思えます。
バトル難易度は、かなり高いです。自分の初期HP５０に対して、食らうダメージは通常モンスターなら一桁台なのですが、敵はHPも多いので、最低でも二発はヒットさせないと倒せません。モンスターが多く、乱戦になりがち。バトルはハイスピードで、ボタン連打で指がつらい……そのハイテンポの中、敵の背後や、攻撃パターンを読んだり、トラップにかけたり、考えることが多いです。
プレイフィールはすごく良いので、操作に関してストレスはありません。
そして、ステージの最後にボスが待ち受けています。これがまあ……強烈な強さ。何度も何度も死にます。自分には無理だ……
そう思ったとき、救済の「ゴッドモード」 がアンロックされます。この導入のしかたも、素晴らしいです。ゴッドモードをオンにすると、死ぬ度にダメージ耐性が２％ずつ向上します。前述のとおり、一回のダメージは一桁台なので、２％上昇した程度で、効果は全然でてきません。何度も、何度もループすることで、少しずつダメージが下がり、難易度が低下するのです。
しかし、先はまだ長そうだ……。
まだ見ぬキャラクターや武具に加えて、王子の出生の秘密、ハデスやオリンポスの神々の真意、ストーリーの核心が気になるところ。
インディータイトルなので、値段も手頃で、かなりおすすめな一本です。
