天王寺にある大阪市立美術館にて6月4日まで開催されている「木×仏像展」に行ってきました。
概要
本展覧会は日本の木彫仏の魅力を再発見することを目的とし、素材である「木」に注目しながら鑑賞していただく企画展です。一本の樹木にこだわり、由緒ある古材にこだわって造られた仏像。その造形に親しみ、楽しむ空間を提供いたします。
日本人は古来より樹木に対して畏敬の念をもって見あげてきました。先ごろ造替のなった出雲大社の心御柱(しんのみはしら)や、本年も諏訪大社で行われた7年に一度の御柱(おんばしら)祭りにその一端がうかがえるでしょう。人間よりはるかに大きな樹木は、人間の寿命をはるかに超えた長い時間風雪に耐えて大地に立ち続けます。樹木は日本人にとって身近でありながらも、祈りの対象でもありました。そうした「樹」を伐り出し、大地から切り離された「木」に彫られた仏像や神像、それが本展のテーマである木彫像です。本展覧会では仏像の素材となった木の種類、あるいは木材の用いられ方など素材に注目することによって、仏像に込められた深い意味を理解する手掛かりとし、その魅力を再発見します。
また、本展覧会ではこのような仏像の素材と共に、彫刻作品としての卓越した「技」にもご注目いただきます。それぞれの樹木の特性を的確にとらえて振るわれた槌(つち)と冴えわたる鑿(のみ)は、時に緻密に、時に大胆に、自由自在に扱われます。世界にも類を見ない木彫の技を間近にご覧いただくことで、優れた造形の背景に確かな技術が存在し、伝えられてきたことをご理解いただけることでしょう。
何の木で造られたの?どうしてその木なの?どうやって彫ったの?
素朴な疑問に答えながら素材の秘密を探り、技術の妙に目を見張る。本展覧会ではあなたの知らない仏像の世界へご案内いたします。(出品予定作品:約60件)
会期:平成29年4月8日(土)~6月4日(日)
本展のチケットでコレクション展も観ることができます。
場所は天王寺公園の敷地内にある大阪市美術館です。昭和11年に開館したそうな。
天王寺公園の中には、動物園や”てんしば”というカフェやショップ、フットサルコートなどがいっしょになった施設も併設されていました。
もう少し来るのがはやければ、桜も満開だったでしょうね。
個展の構成については、仏教伝来からの時代の流れと、日本独自に発展した仏像の作り方との2つの流れにそって展示されていました。素人的には、年代と作り方の2つの流れがわかりにくく、展示物も年代がゴッチャになって盛り過ぎに感じました。第二会場は特にまとめて押し込みました感が否めなかったです。
あと外国人の(言いたくないけどアジア系の)マナーが非常に悪かった。展示物のケースをベタベタ触る。蹴る。そしてそれを注意しない学芸員。
展示物の感想ですが、例に倣って図録を買ったので、これを見ながら気になった展示物を思い出しつつ、書いていこうと思います。
図録の価格は2000円。買って損なし。
◯菩薩立像‐飛鳥時代(七世紀)東京国立博物館
おそらく会場で最初に観ることになるであろう仏像です。5頭身くらいの頭部のが大きく、アンバランスな体型をしています。
エッジの立った眉と鼻のラインは仏像的ですが、ずっと土着的(日本独自なのか?)で大地母神的な印象を受けます。ギリシャ彫刻っぽい感じもする。
壁に据え付けられていたのか、ペラペラでレリーフ的。
◯弥勒如来坐像(試みの大仏)ー奈良〜飛鳥時代(8〜9世紀)奈良東大寺
ソフビコレクターの思っている弥勒とは違って(でも奇譚倶楽部のブツゾーネツケにはラインナップしてます)、こちらは悟って世界平和を成し遂げた姿。指の造形など、当時の精一杯という感じがしますが、これはこれで面白くおもいました。衣装の皺が二次元的というか絵的というか、筆で描いたよう。
◯阿弥陀三尊像 ‐ 平安時代(9世紀)大阪・四天王寺
阿弥陀様と両隣の脇侍の3体からなる像。3つセットとして祀られたのは近年になってからで、少なくとも作られた当時は両脇の菩薩は別だったらしいです。
両脇の菩薩像のポージングは、片足立ちになっていて、垂れ下がった腰布が接地面積を稼いでいます。
仁王立ち以外のポージングのソフビがあってもいいな、と結局オモチャ脳で注目してしまう。
◯十一面観音菩薩立像 ‐ 平安時代(9世紀)大阪・長圓寺
ふくよかで人の良さそうなお顔立ちをした11面観音さま。頭頂部の顔は残念ながら風化してよくわからないですが、憤怒の顔などが見えないので、この雰囲気はそのためかもしれませんね。
◯宝誌和尚立像 ‐ 平安時代(11世紀)京都・西往寺
本展のメインビジュアルにも採用された像です。
京都国立博物館の「京のいざない展」で見て以来2回め。
演出としては京都の方がお金がかかっていましたが、今回2回めということもあってか、荒々しい彫刻や虫食い跡、木が朽ちた部分など、前回と違った印象を受けました。虫食い跡、木が朽ちた部分は仏師が意図して作った部分ではないのですが、時代を経た重みといいますか、その部分も仏像の魅力の一部なんでしょうね。これってインディーソフビにも通じている気がして、時に「巧すぎて面白くない」という評価がされる作品がありますが、得体のしれない部分や、意図して作ってないのに妙に惹かれる部分と似ているような気がします。
◯阿弥陀如来坐像 ‐ 平安時代(12世紀)大阪・大門寺、鎌倉時代(13世紀)大阪・専修寺、鎌倉時代(13世紀)奈良・新薬師寺
3体の阿弥陀如来像が一箇所に展示されていました。本展では仏像の背面も見れる構成になっていて、それがとても良いのですが、僕は特にこの3像で良く感じました。たっぷりとした広い背中のラインは、今にも動いてきそうで、漫画のガンツのワンシーンを連想しました。
◯釈迦如来立像 玄海 ‐ 鎌倉時代・文永十年(1273)奈良国立博物館
個人的に今回見た仏像の中で一番でした。インパクトが凄い。
螺髪のひとつひとつの配置から渦を巻いていて、衣装の皺は完全な装飾になっています。
お顔立ちは厳しい感じ。
頭身は最初の菩薩立像と同じ感じ。
京都清涼寺の仏像を模したものらしいのですが、ここまで独自解釈が許されるとは。
隣に同じく模像がありましたが、頭身もスタイルも全然違います。
ソフビコレクター的には仮面ライダーとカオスマンくらい違います(見た目の話)。
以上、駆け足でしたが木×仏像展の感想でした。
コレクション展については、木×美術-絵画と工芸-と題されており、木×仏像展と合わせてみるのを推奨されているような内容でした。
またコレクション展のひとつ、「丸山石根 西国三十三所観音御画像Ⅱ」が見応えありました。言い方悪いかもしれませんが、ミュシャ好きとかにも良さげ。