smogbom

蒐集/レビュー/散財。アートトイ,ThreeA,ソフビ,民藝。ウルトラライトハイキング。Giant MR4r。Apple,Mac,iPhone。

ゴジラ-1.0の感想-ゴジラ最高傑作かも知れん(にわか談)

正直、シン・ゴジラを超えることはない、と思って甘く見てました。

前の席の女性が、髪をかきあげる度にアップルウォッチの画面がチラチラして、最高に腹が立ちましたが、映画は良かったです。クソが!!!

見てもないのに、スタンド・バイ・ミー・ドラえもんや、ドラゴンクエスト・ユアストーリーの悪評に影響して、山崎貴監督自体が興味無かったんですけど、めちゃくちゃ良かったです。

得意のVFXの素晴らしさはもちろんですが、真っ当な怪獣映画として、実直にシン・ゴジラとバチバチに勝負しています。ゴジラが繰り返してきたテーマからの脱却と発展を果たし、どうやたってアベンジャーズは作れない邦画のヒーローモノの答えがここにあるようで胸熱でした。

 


www.youtube.com

 

以下ネタバレ。

 

改めて、僕が思うゴジラのテーマとは。

文明が発展していく中で、環境破壊などが進み腐敗が進んでいきます。負の遺産として怪獣が誕生し、驕り高ぶった人類へと制裁を加える。その中で人類は自らの過ちを認め、一致団結して怪獣を倒し、滅んだ街を再建し、新しい未来へと歩を進めます。

この映画では、時代設定が戦後間もない日本であり、ようやく復興の兆しが見えたころ。そうなってくると、泣きっ面に蜂状態といいますか、これまでのゴジラとはテーマが違ってきます。予告編を見た時は、たんなる怪獣パニックで底の浅そうな映画になりそうと思ってしまいました。

 

映画の始まりは、水面を写して、島の遠景へと映るシーンで、このカットはこれまで何万回繰り返されてきたんだろう、と凡庸なプロローグに気落ちします。

ところが、主人公が特攻隊員で、死ぬ決心ができずに機体の故障と偽って整備のために島に上陸したと知り、俄然面白く感じます。

特攻は、日本にとってもセンシティブなテーマです。もう二度とあってはならない蛮行であると同時に、美談や悲劇として昇華されてきました。

正直、この映画に登場する人々が、戦時中や敗戦後にかつての日本を否定するような言い方をするのは、ちょっと調子が良すぎるのでは? ありえない、と感じましたが、これがこの映画の大きなテーマなのでしょう。

 

主人公は、純粋に自分の命惜しさに特攻任務を受領することができませんでした。それは現代人の我々にとっては正しいことなのですが、当時の人からすると兵士として日本を守るという責務を放棄した恥ずべき行為でした。

映画の格子として、この「果たすべき行為から逃げてしまった」 主人公の背負った十字架が、ゴジラという強大な怪物を誕生させた、という風に出来ています。

島で、ゴジラを倒すチャンスすら逃して、本来帰れるべきだった整備士の人を死なせてしまい、主人公は、すなわち(そんな訳ないのですが)特攻任務を果たせば日本を勝利に導き日本を救ったかもしれない英雄だった自分を幻視させます。

 

この冒頭のシーンで、この映画は日本VSゴジラではなく、一人の人間VSゴジラの構図をはっきりさせます。正直、日本への帰属意識とか愛着とか薄れている現代なので、こういう単純なヒーローものの方が、多くの人に刺さりそうです。

 

主人公は、孤児の赤子を抱えた女の子を保護し、心を通わせるのですが、島での体験が尾を引いて、その後もゴジラによってたくさんの人命を失わせることからも、どうしても夫婦になり幸せになることができません。このあたりのロマンス要素も奥深くてよかったです。友人も言ってましたが、NNKの朝ドラにしか見えませんでしたが(笑)。

 

木製の船とゴジラが対決するシーンは手に汗握りました。

こんなジョーズは嫌だ……と思いながら見ていました。

今回のゴジラは、体型は中華資本ゴジラのマッシブさがあり、顔は日本のゴジラのデフォルメが効いていて良かったです。

戦艦と戦うシーンは、ハリウッドのゴジラVSコングにも似たようなシーンありましたが、こっちの方が良かったです。

smoglog.hatenablog.com

東京に上陸してからは脚本にちょっと難があるように感じました。

まず、ゴジラがどうして東京を目指すのかがわかりません。僕の解釈では、ゴジラは主人公の「果たすべき任務から逃げたから生まれた存在」 なので、両者が相対するのは必然なのですが、もう少し補強が欲しかったな。島で因縁めいたものを感じるシーンが欲しかったです。

また、ゴジラが東京に向かうことを知っていたのに、ヒロインを銀座へ向かわせたのも無理があります。この時、主人公は前向きにヒロインとの結婚を考えていたので、仕事に行くな、って言えたでしょう。

あの時、ゴジラが熱線を放ったタイミングも都合が良すぎです。島のシーンで、ゴジラは自分のテリトリーを示すのに、破壊活動を行うみたいな伏線があれば良かったかもしれません。このあたりは、このゴジラ、ちゃんと脚本読んで、ポーズもキメキメしてお利口だな、って思って白けてしまいました。

 

決戦シーンは圧巻でした。

まず、映画の絵面として素晴らしい作戦です。ゴジラの口から凝固剤を注入するという、シュールでちょっとトンマな作戦よりも、ずっとパニック映画として良いアイディアでした。二段構えの作戦の裏で、主人公が独断で奥の手を構えるという展開も素晴らしい。

難点としては、直前のブリーフィングシーンで、日本軍は機体が脆くて安全装置もない、ってセリフを言ってしまったせいで、結末がわかってしまったことです。

そんなに観客は馬鹿じゃないと思うんだよな。ま、わかってて感動しましたが。でも、爆弾の安全装置のほうが脱出装置のスイッチだと思ってました(笑)。出撃時、楽しそうに操縦していたのは、死ぬかもしれない悲壮感の中では奇妙に映りましたが、事前に脱出装置のことを話しているとなると、納得です。

決戦シーンの最後の熱線発射前のゴジラを正面から写したカットが尋常じゃないくらいかっこよかったです。

 

ラストシーン、生還したヒロイン。ちょっとご都合主義では? と一瞬思いましたが、その身体にはゴジラを思わせる痣が……、ゴジラ細胞による不死性で復活したのだ、と推測できます。ゴジラもまた再生しており、ヒロインのその後と次回作への含みともなっていますね(続かないとは思いますが)。ここもシン・ゴジラの第5形態を示唆するラストと対応していて、バチバチにやりあってんなー!! と思いました。

 

素晴らしい映画でした。

 

 

 

smoglog.hatenablog.com

smoglog.hatenablog.com

smoglog.hatenablog.com