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映画ブルージャイアントの感想(後半ネタバレ)

大好きな漫画が映画化されたので見てきました。
楽曲の素晴らしさに打ちのめされました。物語も感動的。映画ならではの展開にはびっくりしました。演出もよかった。とても良かったです!!!

 


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『BLUE GIANT』(ブルージャイアント)は、石塚真一によるジャズを題材とした作品です。

音の出ない漫画で、音楽漫画を描くということは、僕は逆に利点と考えていて、絵の演出によって、とんでもなくすごい音楽を読者に想像させることができます。逆に映像化することによって、実際鳴る音楽が、読者の想像を超えて納得できるか、というところが争点になってくると感じました。

有名なところだと、BECKの実写映画では、神がかった歌声を持つ主人公の歌声をあえて無音状態にして想像させるという演出があったみたいですね(未視聴なので、うまくやれていたのかはしりませんけど)。

音楽にはまったく詳しくないのですが、劇中音楽に感じたことも記します。

演奏者が誰それとかの前情報がなくても楽しめる作品ですので、ここでブラウザバックしてもらっても大丈夫です。

後半文句も言ってますので、注意。

 

主人公の宮本大の演奏について。

正直、最初に感じたのは、「これが宮本大の演奏なのか???」 という違和感でした。

自分が想像した演奏とはかなり違って、もっと前衛的というか、もっと聞き手を置いてきぼりの超高速な演奏を想像していたのです。なんかわかんないけど圧倒される、みたいな。

実際の演奏は、結構ゆったりで、聞きやすい(簡単という意味ではなく)、一音一音がとても深くて味わいやすいような演奏に感じました。

最初こそ違和感がありましたが、とくにJASSとなってバンド演奏になると、自分の中でバッチリ想像の宮本大の演奏として噛み合った感じ。漫画を読んでも、脳裏に鳴り響くのはこの音になりそうです。

 

玉田俊二のドラム演奏は、石若駿さんです。東京藝術大学首席とかSrv.Vinci(King Gnuの前身)、millennium paradeのドラマーとして活躍、今日本でもっとも忙しいドラマーと言われてる人なので、そんな人が玉田! と一番ぶったまげた部分です。玉田は劇中では一番ド素人スタートなので、ここは見どころ。映画は漫画の東京編にあたり、この期間は宮本大よりも、玉田と雪祈の物語に思えた(映画をみてなおさら)ので、彼の成長と、ラストのエモーショナルすぎる玉田のソロドラムは、銀幕が涙で滲んでかき消えてしまいました……。

 

沢辺雪祈の演奏は、劇中の音楽も担当しているピアニストの上原ひろみさんが担当。ここはなんの心配もしてなかったです。自分でも知ってるし、CDも持ってるくらい。

ソロ演奏中に野暮なモノローグを入れず、演奏それ自体で納得させる力技を魅せたのが素晴らしかったです。

漫画で、トイレの中で「(内蔵を絞り出すようなソロ演奏が)できた……」 って泣くシーンが好きだったので、カットされたのが悲しい。

ってか楽曲がカッコ良すぎる。N.E.Wって曲が好きだったな。

 

 

 

以下、物語のネタバレを含む。

 

 

 

 

 

映画においては、一番の改変があったキャラクターは雪祈ですね。漫画版では圧倒的に嫌なヤツだったんですが、最初から「初見は誤解されがちだけど、根はいいヤツ」 という感じで描かれていたように感じました。女の子のヒモみたいなシーンもないし、不遜すぎる態度も柔めになっていたように感じました。

それ故に事故が、漫画版よりも唐突に感じてしまったように思いました。漫画版では、あんなに嫌なヤツなんだし、当然の報いのように感じた(自分は死亡フラグが最初から立ってるように感じたキャラだった)んです。

なので映画版の場合、ソーブルーの二人でのライブシーンを盛り上げるためのお涙頂戴展開ではないか? という作為を感じさせてしまったように思いました。

観客の誰もが涙するのは、音楽が素晴らしいから? それとも失われる才能を悲しむ気持ちか? それともそんな不幸を跳ね除けてひたむきに演奏する二人に感動して???

いや、そんな背景は、雑音でしかない! 素晴らしい音楽はただそれだけで感動的なんだと、憤る自分の気持ちで冷静になれない自分がいました。

しかし、この後の展開が良かったです。病院から抜け出した雪祈が合流して、片腕でライブに参戦。この改変は漫画版を超えたように感じました。JASSとしてのラストライブをちゃんと3人で迎えることができましたし、最高のライブでした。それにしても作曲した譜面を片腕演奏にしても(本当に片腕で演奏してる譜面なのか自分にはわからん)遜色ないってすごいなー……。

 

演出に関して。

演奏中のトリップ効果のある演出が凄まじかった。漫画版の勢いも感じられました。

各ライブシーンで、あまりにも似た演出が多様されてしまったので、続編などがあれば、同じ手は難しいかもしれません。

 

アニメーションに関して。

これははっきりと良くなかったです……。

冒頭のシーン、妹から渡されたおにぎりを頬張るシーンで、作画枚数が足りてないな、って感じました。

演奏シーンが良ければ、問題ないさ、って思いましたが……たぶん、「ぼっち・ざ・ろっく」の演奏シーンが良すぎたんだろう、と感じてます。

 

カメラが引いたシーンではどうにも、キャラクター達から音楽が奏でられてるように感じられませんでした。

手書きアニメーションの演奏シーンはまだ良かったのですが、3Dポリゴンを使ったアニメーションは、近年見たことないくらい酷かった。

プロポーションが、2Dアニメーションの宮本大と比べると、肩幅がありすぎて、親和性が全然ない。多分別々のスタジオで作られていたとお思うのですが、うまく連携がとれなかった? パンデミックのせいとかで……。シーンが切り替わると、違和感があって……スン……とテンションが下がってしまった。

スラムダンクが良すぎたのかもしれませんが、たぶんカット割り毎にCGのプロポーションを弄ってないので、すごくマペット感がありました。

サックスを吹くとき、手書きアニメーションでは息を深く吸って演奏するんですけど、CGアニメーションでは、ちゃんと空気を肺にいれて吹いているようにどうしても感じられませんでした。

ドラムもちゃんと叩いてるように見えない。ギリギリスカしてるように感じられる。製作者側もわかっていて、ドラムソロシーンは手書きアニメーションで作られているんだと感じました。

 

アニメーションの出来に目を瞑れば、音楽は最高の作品だったと思います。

 

 

 

 

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