鳥山明がドラゴンボール連載終了後に手掛けた短期集中連載作品の中の一本、サンドランドがアニメ映画化されたので、鑑賞してきました。
一言感想を言ってしまえば、「アニメ映画なんて、こういうのでいいんだよ」。
昨今のヒーロー映画、アニメーション映画といえば、配慮の上の配慮、重厚なテーマ、演出にと、僕は少し窮屈すぎて過食気味です。マーベル映画を見出したころは、それも新鮮で良かったんですが、最近はもうちょっと何も考えずに面白い、エンタメ全振りな作品を、さらっと見たいと感じていましたので、この作品はとても良かったです。
サンドランド連載当時、鳥山明は「戦車と老人が描きたい」 という想いだけで、構想し、連載開始したといいます。女性登場人物がほぼいない(悪魔達は性別不明の種族もいますが)、この作品は現代ではかなり異質ですし、一部の活動家の方の批判対象になるような描写もあると感じます。
しかし、作家が描きたいと思ったものを描くな、と制限させる権限は、我々にはないです。好まない作品を見ないという選択肢はあるかもしれませんが。
映画オリジナルのヒロインを登場させるとか、そういうことをせずに、映画化させたことに賛を贈りたい。
サンドランドは、子供から大人まで誰もが見れるエンタメ作品ですが、かといって底の浅い作品だとは感じませんでした。
人間に邪悪な種族とされている悪魔は、謂れなき差別を受けるマイノリティ達の象徴と言えますし、ラオ老人が自分のしでかした過ちをキチンと責任とろうと奮闘して、次の世代に引き渡す姿は、好き勝手やっておいて「これからは君たちの時代だ」 と投げてしまうような老害達には、苦いものを感じさせてくれそうです。ゼウ大将軍はそのままいつまでも世代交代しようとしない(国王をきちんと導かない)老害でしたけど……。
日本のアニメーションは、ずっとこういう言われなくても「当たり前に正しいこと」 を描いてきたように感じます。もしかすると、日本昔ばなし的な文脈で、古来より受け継がれてきたのかもしれませんね。
アニメーションは、最初ラウの乗ってる車のサスペンションのアニメーション描写が甘い? 車の裏側ちゃんと作ってない? と感じて心配したんですが、戦車がとてもかっこよかった。縦長の独特のフォルムをしていて、内装まできっちり作られています。アニメ調のCGアニメーションは極まったという感じで、見ごたえに関しては、僕はピクサー作品や、スパイダーバースと見劣りしないと思いました。
個人的には、もっと戦車バトル、悪魔と人間のタッグバトルが見たかったな。ベルゼブブの覚醒戦闘シーンは正直普通でした。
戦車のプラモデルあったら作りたいなぁ。