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エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス-今見たからこそ固まる感想

※微妙なネタバレ有り。一部の人に不快な表現あり。

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どれほどの人が、この映画が本年度アカデミー賞作品賞を含む最多7部門受賞を取るに値する作品である、と理解できるだろうか。

シン・仮面ライダーを鑑賞した日に、上映前に長蛇の列ができていたので、なんだろう? と思ったら、アカデミー賞授賞式の主演女優が感動的なスピーチをニュースが放映されていた、本作品の上映を待つ待機列だった。

僕はこう見ても、「人種、信条、性別などの違いによる偏見や差別を含まない中立的な表現や用語を使用すること」という意味のポリティカル・コレクトネスには賛成派である。

とは言うものの、ポリコレ活動家の中には、「男性はポリコレ下位の存在なのだから、立場を弁えろ」 なんて、マジで言ってるの? ネタだよな? というような言論をする連中もいるので、思うところが結構あるのである。

なので、公開前から、この映画は注目していたし、そんな自分がアカデミー賞取ったからって、イソイソと見に行くのはなんだか恥ずかしいなぁ、と思っていたところだった。

 

結果として、今のタイミングで鑑賞することができて、良かったと思う。

この映画が事象として、たくさんの賞を受賞して、誰も彼もがミーハーに、こぞって見に行くという状況があって、この映画は真に完成したのだと思った。

そういう切り口ではなら、自分の感想としての一応の体裁はとれそうだ。

 

僕にも言えるのだが、なんでこの映画はすくなくとも日本において、アカデミー賞受賞前にはあまり話題にならなかったんだろう。それこそ、ポリコレ活動家の人々は、「この映画こそ、我々が求めていた映画! 素晴らしい!」 と見に行ったんだろうか?  僕が観測していた範囲では、自分たちの正しさを証明するため、そんな風にロビー活動していたようには見えず、いつものように何かに対して文句を言っていただけのように思う。

本作品が、栄誉ある映画賞の数々を席巻して、なんか流行ってるみたいだから見に行かなきゃ! となり、鑑賞後に「なんだったんだ、ありゃ?」 となってるのが、喜劇的に感じる。悲劇的か?  そこまでセットにして、興味深いと言える。

(この感覚が自分だけだった場合、多くの人がそう思ってる、みたいな書き方をしているのは間違ってるかもしれません)

 

ゲームや映画において、いつもヒーローは男性で、女性は無力に囚われるヒロインという状況に異議を唱える人がいる。そんな不満を抱えている人は、大絶賛の映画だ。

短絡的で、わかりやすい正しさがここにはある。露骨すぎて、馬鹿にしているようにも感じる。逆に怒らない人がいない不思議だ、なんて僕は感じた。

アバターのウェイ・オブ・ウォーターで、青い肌の少女が半裸みたいな格好で海中遊泳していても、誰も「環境型セクハラ」と言って無かったのと似た状況に感じた。

 

劇中で、エブリン・ワンは正しく・強い人であった。

映画のメッセージも、同じく清く正しいものなのだと思うけれど、僕には裏にドギツイ毒を感じた。

 

エブリン・ワンは、日々の生活に心底疲れていた。そんな人生に自分を巻き込んだ夫は、影で離婚しようとしている(しかも、その原因は、きちんと会話しようとしないエブリンにあるらしい!)。コインランドリーの運営や痴呆症ぎみの父の世話、同性愛に目覚めた娘の関係と問題が山積みだ。

そんな状況なのに、平行世界で生まれた悪と戦う羽目になってしまう。世界の危機を救うヒーローなどは、男達の妄想の世界だ。男性が想像の中で良い気なっている中で、女性にはもっと現実的な問題と日々戦っているのだ。彼女たちが抱えている苦しさ・辛さが伝わってくる。

しかし、実際女性がヒーローになることで、結構ヒーローも辛い選択をしていることに気づくかもしれない。普通の生活を犠牲にし、世界の平和か家族の命かを天秤にかける。ときに恥ずかしい想いをして、自分を犠牲にして戦うのだ。

こんなことなら、囚われのお姫様でいるほうが楽だったかも?

今の自分が不幸なのは、あいつと一緒になったせい。別の道を歩めば、幸せだったかもしれない。並行宇宙は、そんな自分以外の誰かに責任を押し付けられる逃げ場を想像させた。

彼女が諦めかけたとき、夫は「みんな優しくあって欲しい」と願った。それが劇中でもっとも強烈なメッセージに感じられた。世の中には、正しさゆえに苛烈で、攻撃的すぎる主張が多すぎる。

 

この作品が公開され、賛が贈られた時代背景含めて面白いと感じた。

個人的に、僕は独立した作品として、この映画を評価できない。奇抜なシナリオ展開、狙いすぎて滑ってる演出、物理法則を無視した漫画的なダメージ表現(あのデカい物体がケツに刺さって、コンクリを頭でぶち破って、……無事なのはちょっと受け付けられない)、趣味じゃない衣装、ショボい小道具、どの要素も自分とは水が合わず、イマイチ乗れなかった(岩のシーンは唯一痺れたな。あと良い子ちゃんなだけのディズニーのLGBT要素よりも、映画にちゃんと組み込まれていたので、そこは良かった)。

 

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