こんなことを話題にするよりも、もっと重要な事態が世界で起こっている、と言うマイケル・ベイ監督の意見に賛同しますが……。
アカデミー賞で司会を務めたコメディアンのクリス・ロックさんが、ジョークの中で俳優のウィル・スミスさんの奥さんを侮辱し、激高したウィル・スミスさんは、クリス・ロックをビンタした事件。やらせだ、とする意見や、クリス・ロックさんを批判する意見もありましたが、多勢なのは、暴力に訴えたウィル・スミスさんへの批判でした。個人的心情としては、暴力はよくありませんが、言葉の暴力も看過できず、ちょっと共感できませんでした。
アカデミー協会側も、事件の発端となった他者への侮辱行為を働いたクリス・ロックへはお咎めなしで、ウィル・スミスさんへのアカデミー賞会場からの即時退出を勧告したようです。
ウィル・スミスさんは、これを無視しますが、後に謝罪し、アカデミー会員を退会します。
余波はそれにとどまらず、出演が決まっていたプロジェクトが一時停止してしまう事態になります。
受賞した主演男優賞の取り消しの声もあり、後に公式の場に出たクリス・ロックさんへは、スタンディングオベーションの歓迎っぷり。この対応には文化の違いもあるのかもしれませんけど、公平性に欠けていて、ちょっと頭を傾げてしまいますね。
喧嘩両成敗的大岡越前裁きができないのか……。
自分がこのエピソードで、連想したのは、仏教における阿修羅の逸話です。
もともと、地方の有力な一族だった阿修羅ですが、仏教世界でトップに立つ帝釈天に妻(または妹、娘とも)を無理やり攫われ、薄い本的展開になってしまいます。当然、憎しみに駆られた阿修羅は帝釈天へと反旗を翻します。こうして阿修羅は仏教世界おける大敵とされ、責め苦を負うことになるのです。もちろん、この世界では帝釈天がルールなので、トップにはお咎めなし。怒りという感情に駆られた阿修羅が悪いのです。
このルールを仏ゾーンだかなんだかで読んだ僕は、まったく理解できませんでしたが、ウィル・スミスビンタ騒動の世間の反応はまさしくそれで、クリス・ロックさんがコメディアンという立場上、時に危ういネタを使うことも致し方ないかもしれませんが、アカデミー賞という権威ある場(?)で、個人を侮辱するような発言が、西洋人が大好きなポリコレ的に許されているのが、どうなんでしょうね。
ビンタした人が、白人だったら、女性だったら、ハンディキャッパーだったら、どうなってたんでしょう。
正直、アカデミー賞の品格ってあんのかなぁって感じですけど。映画を売りたいだけの権威付けイベントですし……。元に、世間体が悪けりゃ賞の取り消しがあるのです。芸術性で評価してないってことですよね。
さて、本題に入ると、ウィル・スミスさんはビンタではなく、どうすればよかったのでしょうか。本件に関して、学びがあるとすれば、この部分です。
まず、煽られた人間は、クールでなくてはならないということです。
デンゼル・ワシントンさんが、騒動の前に助言していたそうです。やはりデンゼルは神。
どんなに陰湿な行為であっても、暴力に訴えることは、米国社会では禁忌のようです。
対策としては、一つは会場を無言で去るということです。
主演男優賞不在になるので、侮辱行為を看過したアカデミー協会のお粗末さが浮き彫りになるでしょう。
しかし、オスカーというのは、俳優にとって大変栄誉なことなのでしょう。映画は一人で作るものではないですし、無責任に去るというのは、立場上難しいのかも。
何も行動を起こさず、現時点で受賞されるかわからない、受賞スピーチまで待つことが難しいということもあります。
ビンタ以上に絵になる行為をするなら、クリス・ロックさんにハグしてキスして、中指立てるくらいしか思いつかないな……。
個人的にはウィル・スミス派なので、映画を見たりして応援したいところです。