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アバター・ウェイ・オア・ウォーター3D/吹替版の感想-かくしてキャメロンはパンドラを開闢せしめり

記事後半にネタバレ(警告文入れます)。

前作公開から13年、五部作? 6部作? とも噂されているアバター第二部ウェイ・オブ・ウォーターを見てきました。

前作アバターでも、驚異のVFXに度肝を抜かれましたが、今作はそれ以上でした。

宇宙の深淵にその星が存在しているかのような感覚を覚えました。13年という長い休止期間が必要不可欠だった、と納得のできる作り込み。パンドラの生態系のありとあらゆる要素が、精細に、注意深く描かれていました。

今回、前作同様、3Dで見ましたが、アバターの3Dは演出がとても自然で、本当に見やすい。場の空気感も感じられるような映像美で、現実を超えているかのようでした。

前作、ドリームウォーカーとして原住民ナヴィのクローン体(アバター)へと精神を宿し、人間の欲望の果てとなる所業から、ナビィ族側へと寝返り、惑星を守った主人公のその後のお話となります。

かなり忘れていたことが多く、女の博士って死んでたっけ? 大佐に息子がいたっけ? と、前作をもう一回見ておくべきだったかな、と後悔も一瞬でしたが、物語自体は結構単純で、3時間という長丁場でしたが、物語展開は先の見えないもので意外性あるものなので、たるみなく夢中になれました。

主要人物のキャラクター像の作り込みが圧巻でした。そのぶん、ナヴィ族の外見の差異がわかりにくいということがあり、主人公の長男・次男の関係性(途中まで、海の族長の娘と恋仲っぽいのは長男だと思ってた)を読み違えていたり、次回作で絶対的正ヒロインになりそうな電波系の姉が主人公家族に含まれていることが途中まで飲み込めてなかったり、そのあたりの人物相関図のややこしさはありました。

メカなどの小道具もかっこよく、異星の独特の風習の作り込みも加えて、スター・ウォーズのエピソード4・5・6が公開された時の当時の衝撃ってこんな感じだったのではないでしょうか。新しいスター・ウォーズに、こういうのを求めてたんだよ。

とてもとてもとても素晴らしかったです。

 

以下、ネタバレ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ただし、ジェームズ・キャメロンが言うように「トイレにどのタイミングで立ってもいい。もう一度見たくなるから」 とはなりませんでした。

この映画、非常に居心地が悪いんです。なぜなら、この映画のテーマは、「人の悪業」そのものだからです。

豊かな森林を伐採して環境破壊して資源を採掘するとか、未開の部族を虐殺して領土を拡大するとか、話し合えばいいのにタイミングの悪さが重なりあい修復不可能になって2つの陣営に分かれて争いあうとか。

ディスカバリーチャンネルよろしく美しい大自然のドキュメンタリーシーンに心癒され、次の場面展開に「このまま物語が進まないでくれ」 と願わずにはいられませんでした。

 

海が舞台ということで、捕鯨行為を連想するような展開で、銛の表面に日本語がデカールされていた、と一緒に見ていた友人が鑑賞後、僕に教えてくれました。

それを知るまで、捕鯨に反対している金持ちセレブリティが、アムリタという不老の薬が発見すれば、利を優先して再び同じような愚行を行うようになるということを皮肉しているんだと思いました。

日本の捕鯨活動は、大航海時代の西洋の捕鯨とはことなり、漁獲量もコントロールしているし、逆に増えすぎて生態系を歪にさせているのにバランスをもたらすためのものであると自分は考えています。「クジラは賢いから」 とする反捕鯨団体の幼稚な主張とはことなるもので、あの描写はちょっとミスリードしそうだし、ジェームズ・キャメロンの理解の低さが伺えました。

捕鯨は、ナヴィ族のモチーフとなるようなネイティブ・アメリカンやイヌイット・ボリネシアの人々も行っていましたし、捉えた獲物を神の供物として、その身すべてを活用しました。西洋の人がやったように、ランプ用の油だけとって捨てるような粗末にはしませんでしたし、乱獲するような真似をしませんでした。

 

ジェームズ・キャメロンが「この映画を何度でも楽しく見れる」 というのは、自分は正義の人で、なんの業も背負ってない、と思っているからです。人類の歴史がここまで続いてきた以上、その罪は人類全員がずっと背負っていかなければならないものであり、全員がその所業に罪悪感を抱いて、二度と繰り返してはいけない愚行です。

アメリカ人は、かつて行ったネイティブ・アメリカンへの侵略行為を、「相手が負けたのは、文化的に劣っていたから」として恥ずべき所業とは思っていない人が過半数を占めるそうです。おそらく、そういう人間は、この映画のメッセージを理解できないだろうし、ジェームズ・キャメロンもまた、それらと鏡あわせの親しい人間であるとは思ってないでしょう。かくも神は残酷なり、なんてな。

 

次回作の伏線としては、キリの父親の正体、父が不倶戴天の敵同士であるスパイダーとの愛憎をからめた展開がありそう。

捕鯨船の船長は、白鯨と絡めて、切断されるのが、足だったら象徴的だったようにおもいましたが、次回作に出てくるときに動かしやすそうだから腕を切断させたのかな。

海の民が森の民の外見で差別したり、ナヴィ族も根本的な部分は人間と一緒だよな、と思ったり。

やはり母親、メチャクチャ怖い。主人公は絶対ドM。

 

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