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スターウォーズEP9スカイウォーカーの夜明けの感想‐抜群のバランス感覚

スカイウォーカー・サーガ完結編となるエピソード9を見てきました。ネタバレあり。

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前作、最後のジェダイは、前評判から自分は少数派と思っていたんですけど、世間的にも賛否両論だったみたいですね。

評価されている人には申し訳ないけれど、いまでも自分が見てきたスターウォーズの中で一番の駄作だと思っています。自分が嫌いなスターウォーズの部分が集約されている作品だと思っています。それほどスターウォーズ好きって訳じゃないんですけど。

今回は、エピソード7を監督したエイブラムスさんがカムバックしてきたので、すこし期待していました。

感想としては、レイを主人公とした続三部作(シークエル・トリロジー)の中では一番好きですね! EP8もエイブラムス監督がメガホンをとっていたらと思わずにはいられません。しかし、EP8とEP9の際立ったスタイルの違いから、映画監督の裁量でここまで違いがでてくるのが面白いと感じました。

EP8の監督・脚本を手掛けたライアン・ジョンソンさんは、そもそも「映画とは観客を裏切るものだ」と考えているそうで、その考えについては否定はしませんが、エンターテインメントである以上、観客を喜ばせられない人間が言えば、実力不足と取られてしまっても致し方ないと思います。

ライアン・ジョンソン監督は、スターウォーズというタイトルのスタイルを模倣して、シナリオに新しさを加えようとしたと思います。結果的に古臭くて遅いテンポ、とんまなやり取り、いつもの展開が繰り返して、僕には面白くない映画に思いました。スターウォーズというタイトルで、個人的な自慰行為はしてほしくなかった。映画監督という職の進退を天秤にかけることになったのでは。すくなくとも、自分は、この監督の映画を二度と見たいと思わないです。

 

対して、エイブラムス監督は、ずっと観客に寄り添っていてくれていると感じました。現代的なテンポの良い編集スタイルは見やすいですし、前作で不評だった要素は露骨なほど排除してくれています。そのお陰で、意表を突く展開も「そう来たか!」と納得いきました。ところどころ、かっこ悪いところや野暮ったいところ(ライトセイバー☓字斬り、キスシーン)もありましたが、そこはスターウォーズだし、というところで納得が行きました。

 

EP8のテーマは、「血統の否定」にあるんだと思います。EP8でレイを一般人の子供としたことや、普通の少年がフォースを使ったことなども、特別な人間だけが英雄として活躍するわけではない、ということを打ち出そうとしたのだと思います。このテーマ自体はとても意味あることですが、やはり人間というものは英雄願望があるので、エンターテインメントとしては今ひとつに感じました。

 

エイブラムス監督のすごいところは、今作でEP8における「血統の否定」しつつ、スターウォーズらしい「ジェダイ、シスの血統」も矛盾させず包括していることです。

今回、レイがパルパティーンの孫であることが明かされましたが、これによって、レイがEP8で修行なしで異常に成長したこと、EP9で激しい修行をしたのに最後のところで成功しないことも納得いきます。デス・スターの残骸の戦闘で、レイがカイロ・レンの型を模倣して戦っているように見えました。シスとしての血統が、高い戦闘力の理由であり、ジェダイの修行の最後の部分をクリアできないのも、それが理由なのではないでしょうか。本来、シスの血統を継ぐ者であったレイがジェダイとなるのは、まさしく「血統の否定」と言えると思います。

 

EP7の感想で、僕は「スターウォーズとはコインの表と裏がひっくり返る話」というふうに書きましたが、レイやカイロ・レンはその象徴と言えます。ジョージ・ルーカス監督の6作が、ジェダイから暗黒面への変化を描いた物語といえるなら、続三部作は、暗黒面からジェダイへの変化を描いた物語と言えそうです。

 

この映画では、みんなが喜ぶ英雄を描く一方で、最終戦闘に集まった人間は、一般の民間人です。観客が喜ぶ要素をきちんと押さえつつ、現代の映画としてのテーマを盛り込む。

 

伏線回収も見事です。出自の不明かつ、唐突な退場のスノーク。EP8で殺しまくった人気キャラクターたちの扱い。唐突にフォースを扱ったレイア姫は、ジェダイとして修行をきちんと積んでいたことを描いたこと。

エイブラムス監督のほうが一枚も2枚もうわてだった、と思うのは致し方ないと思いました。

 

EP8でレイの出自を明かしておけば、シスのレイの幻影の活躍ももっと盛り込めたと思うんですよね。るろうに剣心にでてくる志々雄一派の十本刀の一人沢下条張の持つ新井赤空作・初期型殺人奇剣連刃刀みたいなライトセイバー、かっこよかったですよね! 出番が数十秒しかなかったのが惜しい。

カルロ・レンもEP8時点で、ジェダイ側になっていても良かったと思うんですよね。そのほうがスッキリしているし、あのかっこ悪い模様の入った仮面をかぶる必要性もなかった。あれでしょ? 玩具会社が模様ありなしで売る策略でしょう(笑)。EP8と9との内容の濃さに差がありすぎる。

キャリー・フィッシャーさんの死によって、プロット変更が余儀なくされた結果、レイヤ姫の死があのような形になったのだと思いますが、自分はある意味とても納得していて、人の死というものは劇的シーンでおこるものではなく、あのように不意に訪れるものだと思うんです。そういう意味で、意義ある描き方だったと感じています。

 

個人的に、続三部作ではもう一歩進んだ展開になるのでは、と思っていました。旧三部作が闇落ち、新三部作が光の再興です。続三部作は光でも闇でもない東洋思想的な中庸へ至るのでは、と思っていました。結果的にコテコテの勧善懲悪のお話だったのが残念です。

 

今回で三部作方式は終わりというお話ですが、中だるみして中身のないEP8と、完成度の高いEP9の内容を考えると、たしかに3部に分ける必要性は感じませんでした。個人的にスターウォーズの映画で一番好きなのはローグ・ワンなので、世界設定を共通させた連作の方が良いと思っています。ダースベイダーが主人公の映画がみたいです。アミダラが言う、アナキンに残った正義がかすかに感じられるようなストーリーで。正直、ダースベイダーを超すキャラクターが今後生み出せると思いません……。

 

 

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