トム・ホランドが主演で、配給会社を跨いでMCU入りを果たしたスパイダーマンの3作目を見てきました。前作ファー・フロム・ホームは、マーベル映画の中でも一番好きと言っても良かった(もちろん、他のMCU作品の積み重ねがあってこその作品だったと思いますが)ですし、ラストの展開が後を引く感じでしたので、公開をすごく楽しみにしていました。
以下、ネタバレありますので、ご注意ください。
過去作の感想はこちら:
今作は、MCU版トリロジー(で一旦締めと言ってよいのかな?) ラストを飾る作品であり、過去のサム・ライミ監督版、マーク・ウェブ監督版をマルチユニバース化して、他作品のヴィランが一同に会するというスパイダーマン映画としても集大成と言える作品です。
まず、サブタイトルのノー・ウェイ・ホーム(帰るに帰れない)が秀逸です。
前作でミステリオの策略により、ヒーローにとって御法度「身バレ」してしまうスパイダーマンが、マスコミの攻勢により自宅を追われてしまい帰れなくなります。この辺りの展開は、お祭り感はあるものの、シビル・ウォーで一度やったことがある既視感を感じ、ちょっと不安になりました。ヒーローに全責任を追わせ、無力な市民として自らは血を流さず、外野から情報操作によって簡単に立場を変えてしまう一般人の危うさ・醜悪さです。
中盤に差し掛かり、並行宇宙から別作品のヴィランがやってきます。彼らをもとの宇宙へ送り返すことは一番簡単ですが、そうするとヴィランたちは遠くない死がまっています。つまり、帰るに帰れないんです。ピーターは、ここでヴィランの問題を解決しようとします。
今作のスパイダーマンはヒーローとしてとても未熟で、ヘマもたくさんしますが、故に純粋です。ヒーローとして最も困難な道を突き進みます。その姿が感動的です。
最近のヒーロー映画では、悪役がただ悪いやつっていうだけではなく、止む得ぬ事情があったり、ボタンの掛け違いで実はいいヤツだったりします。しかし、オチをつけるには悪として倒されなければならない事情があり、未消化な部分があります。そんなツケが、今作ではきちんと解消され……いや、しようという試みが行われます(言い切れないのはグリーンゴブリンが最後やるせない感じだったので)。そういう意味でも、サム・ライミ監督版から続くスパイダーマン映画を総括する作品だったと思います。
ただ単純に過去作のキャラがたくさん出てきてお祭り騒ぎだワッショイ、みたいな空っぽのエンターテイメントになってないところが良かったですね。
それでいて、ファンサービスもバッチリで、見てないアメイジング・スパイダーマンのネタはわかりませんでしたが、サム・ライミ版は見てたので、ニヤリとするシーンがたくさんありました。
結末にかんしても、ヒーロー……力を持つべきものとしての責任を一身に背負った悲しみがあとを引くもので、帰る場所としての家族、親友や恋人との関係性を失うという非常に心に残るものでした。MCUとしては続いていくと思うので、どうかピーターにハッピーエンドが待っていると嬉しいな。
不満点というか、課題としては、先に言ったとおりグリーン・ゴブリンの最後です。彼にもやり直しの機会を全うさせてあげるべきですし、投げっぱなしすぎる気がしました。彼がこのまま元の宇宙に戻っても幸福な未来が待ってるとは思えませんでした。
また、今作においても顔の見えない市民達の描き方には、シコリが残りました。ヒーローにフォーカスしすぎていて、守るべき市民は本当に守るべき尊き人なのか? 残念ながら、自分で考えず、噂の流布に右往左往する絵に書いたような愚民像で、何一つ見習うべき行動をしていません。ここらへんは、のちの作品に期待かな。
今回は吹替版でみましたが、日本語吹替版の配役のクレジットにミスがあり、すごく萎えました。ピーター2、3って……映画を見てたら間違えるはずがないミスです。愛がないなぁ!!!!
追記:吹替版を一度みて、ピーター1はサンライミ版、ピーター2がガーフィールド版、でMCU版がピーター3ってやり取りがあったと記憶してきたが、僕の勘違い? だったら愛がなかったのは僕なのか?
こちらの記事でもエンドクレジットに準拠している……
https://jp.ign.com/spider-man-no-way-home/57441/feature/