MUC入りスパイダーマンの第二作は、あのアベンジャーズ・エンドゲームの後から始まります。
ハードルは高かっただろうし、さすがにインフィニティウォーとエンドゲームを超えるものとなるのは難しいと思って、ネタバレ食らってもいいやと、公開から2週間経ってから観に行きました。
正直……MCUの中で……シナリオは一番のお気に入り!!!
エンドゲームの後だからこそできた、素晴らしいストーリーテリングでした! 今回でマーベル・シネマティック・ユニバースのフェイズ3が区切りという節目にふさわしく、新世代のアベンジャーズの活躍を予感させました。
以下、ネタバレ感想です。他のMCU作品のネタバレになっている可能性もあります。
映画の出来不出来を評価するにあたって、ひとつの評価軸として、「リアリティがあるかどうか」というものがあると思います。説得力のある画作りに加えて、いくらアメコミが原作だからって、突拍子もない展開、無理のあるシナリオは悪い評価に繋がります。ヒーローたちは完璧超人ではないし、ヴィランにはヴィランなりの悪を成す理由がある。これまで、MCU作品はこの部分で、一定以上の評価を受けて来ました。
映画冒頭、エンドゲームで死亡した、あるいは退場したヒーロー達に哀悼の意が捧げられます。現実の僕は「俳優のみんなは生きてるよ、おおげさだなぁ」と、ちょっと笑ってしまいました。しかし、そのシーンはシームレスに映画の中の世界と繋がって行きます。そこはエンドゲームの後の、五年前に消えた人が、五年後急に蘇り、混乱した世界です。そして、偉大な……あまりに偉大すぎたヒーローを失ってしまった世界なのです。
そんな世界を託されてしまったピーター・パーカーは、なんだかぼんやりしています。当初、僕はそんな彼に苛立ちを抱かずにはいられませんでした。彼らが命を賭して守り、ピーター自身その場にいたくせに、学校だの恋だの? 何を言ってんだ、こいつは??!
ミステリオが登場し、僕は原作アメコミを知らないので、アイアンマンとドクターストレンジとソーを足して割ったような彼を信じてしまいます。後から関心するのは、このちょっと前にスパイダーバースが公開されて、並行宇宙という設定が刷り込まれていたこと。ここで完全に騙されました。
ミステリオが悪いやつと気がついたのは、恥ずかしい話、炎のエレメンタルズに、あまりにもトニー・スタークのように自己犠牲で突撃した瞬間でした。この瞬間、僕はこいつがピーターを騙そうとしていると気づきました。それと同時に、ピーターがまだ16歳の少年であり、自分の命を賭して、世界の命運を背負い込ませるにはあまりにも不憫である、と思いました。MCUの中で、スパイダーマンだけはソニー配給であり、他のディズニー配給のMCU作品とは違い、はっきりと血を流す表現がありました。ディズニーにはディズニーの企業倫理があるとは思いますが、やっぱり血が流れると、ぐっとくるものがあります。
ミステリオが今回のヴィランであるとわかっても、僕はそれを信じたくない、という気持ちすらありました。酒場のシーン、ここも巧妙な伏線でした。最初、ヒーローコスチュームを着た二人に、周囲はなんの反応をみせません。これって無茶苦茶変だと思いませんか。映画的なお約束だと思っていたんですが、理由はまわりの人間が全員騙してる側だったから!
ミステリオの能力は、ドローンを使ったイリュージョン。あのサノスの後ですから、今回のヴィランは地味になると思ってました。が、考えようによっては、これまでで一番ヤバイ能力だと思いました。映画というのは虚構の世界です。俳優は演じて映画のキャラクターになりきります。その世界にさらに虚構を塗り重ねる。たとえ虚構だとしても、人が見て、信じたものが現実になってしまう。女エージェントと一緒にスボンを脱いだピーターは、勘違いされましたね。ラストシーンは風刺が効いています。スパイダーマンも嘘でも悪いやつと民衆に信じ込ませれば、そうなってしまう。かつて、アメリカは戦争理由を広告の力で捏造したことがあります。インドでは無実の人間がフェイクニュースによって強姦魔に仕立て上げられ、集団リンチで殺害されました。SNS、ドローン、人工知能、プロジェクションマッピングなど、今ある技術、近い将来の技術が、現実味を高めます。このテーマは、身近な恐怖としてとても意義があると思いました。
映画の中に、退場してしまったヒーローたちのオマージュがたくさんありました。ハッピーが盾を投げて「キャプテンのようにはいかない」と言ったり、スパイダーマンがウェーブシューターを失い、ムジョルニアと盾に模した装備をしたり。イーディスとドローンは、まるっきりウルトロンで、相変わらず失敗を認めないトニー・スタークらしさに笑ってしまいました。
スパイダーマンは偉大なるヒーローから意思を受け継ぎながら、彼らとは別のアイデンティティを獲得したように思います。象徴するのはスーツ素材の変化です。アイアンマンのようなメタル素材から、布地ベースのスーツに。スパイダーセンス……いや、ピータームズムズによってミステリオのイリュージョン攻撃を物ともしない姿は、自分を押し通すという強い意思を感じました。
ニック・フューリーやタロンの人たち(最後までイリュージョンされたぜ……!)から、スパイダーマンとキャプテン・マーベルは深い関係にありそうです。また次のアベンジャーズはこの二人が旗印となりそう。ヴェニスのホテルの猫はあいつじゃなかったのかぁ……。
この映画の唯一の不満はMJとの関係性ですね。前作で違う女の子にお熱だったのに、急に鞍替えしている印象でした。前作と今作の間を知りたいです。前作を見ているなら、MJが最初からピーターを気にしているのはわかっていたはずで、ピーターもMJのことが好きと納得いっていれば、お前らさっさと付き合っちゃえよ、って始終ニヤニヤしていられたのになぁ、って思いました。
プログ1200記事目でした!
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— スモッグ (@smoglog) 2019年7月14日