六代目ジェームズ・ボンドであるダニエル・クレイグの5作目にして引退作品となる007ノー・タイム・トゥ・ダイを友人と見てきました。
金髪碧眼のジェームズ・ボンドとして、これまでのイメージを覆して、当初は賛否あったものの、興行成績的には成功してますし、時代が時代なんで新しいジェームズ・ボンド像を作っていく方向は、個人的に大賛成なんですが。
一作目のカジノロワイヤルをおそらく見たと思うんですが、間三作を見てません。……というのも、知らなかったんですが、ダニエル・クレイグが主演の007って、1作品完結型じゃなくて、全部続きものらしく、結構初見じゃ伏線とか背景とかわからない可能性があるみたい。
まあ、イケるっしょ! と見てきましたが……結論から言うとイケました。
めちゃくちゃおもしろかったです。たしかに、よくわからないところありましたけど、だいたいはスパイとテロリストの戦いとラブロマンスの話なので、王道的というか、結構想像で補えてしまえるというか……。きっと前作をちゃんと予習しておいた方が面白いとは思いますが、ストーリーが理解おいつかないってことはなく、十分楽しめました。007がまったく見たことない、って人はキツイかもしれませんが。
迷ってる人は、ご参考までに。
以下ネタバレを含みます。
久々に劇場で洋画を見たんですけど、映像クオリティの高さに圧倒されました。ドキッ! とさせるシーンが連続して、ものの数分で映画の世界に引き込まれてしまいます。
ボンドとマドレーヌのイチャコラが始まるんですけど、この女優さんなんか見覚えが……デスストランディングのフラジャイルじゃん!
ダニエル・クレイグが結構老けてみえるけど、逆にレア・セドゥはすげー若くみえる(実際は36歳だけど)、父と娘くらいの感じに見えて、ちょっとなー、しかもジジイが若い娘に裏切られた、ってオラつくし、なんだこりゃかっこ悪いなー。しかも駅での別れの時、マドレーヌはお腹をおさえて何かを言いたげな表情……あ、これって……。うわー、身勝手な男。こういうのがジェームズ・ボンドらしくてかっこいいとか思ってんの? なんてモヤモヤしちゃって、この先が不安になってしまったんですが、振り返ってみると、もうこの時点で、その先が気になって仕方がなくなってしまっているんですね。
そこから5年経って、どうやらジェームズ・ボンドは傷心してスパイを引退したみたいです。物価が安そうな東南アジアな感じの街で、いい暮らししてます。家とか車とか服とかヨットとかイチイチかっこいいんですよ。あー、俺も引退したらこんな暮らししてぇ!
MI6が秘密裏に研究していた兵器であるヘラクレス(もうちょっと良いネーミングなかったんかな、Mよ)が、スペクターというテロ集団? に盗まれ。どうやらそのボスとボンドは因縁があるみたい。前作でボンドが逮捕した? MI6には新しい007が、驚きのビジュアルで登場。ボンドはある意味ライバル関係でもあるアメリカの諜報機関であるCIA側について、盗まれた兵器を取り戻すミッションに挑むという展開。
もー、めちゃくちゃおもしろい展開でしょ!! 007って映画なのに、ボンドは劇中では007ではないし、新しい007も黒人女性っていうのがすごいんだ! 攻めてるよな~。
その後、スペクターのアジト? パーティー会場? のあるキューバへ向かうんですが、途中現地のエージェントと落ち合う。パロマという女性エージェントで、彼女のキャラクターがまた良い感じ。ビジュアルもそれはもうスーパーセクシーダイナマイツ(死語)ですよ。超大胆なナイトドレスで、美脚キック含むアクションシーンは見どころ。結構、エピソードとしてはまとまりにかける感じ(唐突に離脱しちゃうし、FF15のDLCかよ)ですが、彼女は人気ありそうです。
敵に盗まれたヘラクレスというナノロボットの詳細ネタバレがあり、DNA情報によって殺傷対象を自由に選ぶことができるというもの。スペクターは、研究施設に組織の人間を潜入させて、独自に改造もしていた。それは特定人物ではなく、血縁関係のある人間にも作用するということ。これによって民族単位でのジェノサイドも可能になった。独裁者にとっては、都合の良い世界が作れることだろう……恐るべき兵器です。そんな兵器を構想し、秘密裏に研究したのは、かつてボンドが所属していたMI6というのは、現代の映画として含みのある設定ですね。
ここでマドレーヌと再開。駅での伏線、血縁関係のある人間を殺すナノロボット……あああああああああ、まさか、まさか。
ってなわけで、ボンドの娘登場。うーん、これは賛否がわかれる展開だぞ、って思いました。ボンドとルパン三世は独身貴族で特定の相手を持たず浮世名を流すってイメージ(ルパン小僧は知らん!)。これが、新しいジェームズ・ボンドなのか。終わらせるってこういうことなのか。
今回の敵は、サフィンという男で、この顔も見覚えある。ボヘミアンラプソディで、フレディ・マーキュリー役だった俳優です。今回字幕版で鑑賞しましたが、彼の声がすごく印象的でした。親を殺された復讐のため、マドレーヌの母親を殺すも、子供であった当時のマドレーヌに、自身の境遇を重ねたのか、助けてしまう。また、マドレーヌの子供も逃してあげて、その姿を物寂しそうに眺めている姿も印象的でした。ただの悪役とは言い切れない、すごく複雑な背景を感じるキャラクターでした。殺しのライセンスをもって、要人殺害によって世界を平和たらんとするボンドと、大量殺戮による抑止力でもって世界を平和にする自分に、その両者に違いはない、と暴論ですが、どこか真理も含んでいるような。黒髪と黒い目をもつサフィンは、歴代のジェームズ・ボンドのイメージも含んでいるのかもしれません。
なぜか彼の身の回りは東洋的なものに囲まれていたけど、なんだったんでしょうか。
ヘラクレスという兵器の特性上、ボンドが感染してしまうことは想像できましたが、やはりジェームズ・ボンドなので帰還してきて、家族とガラス越しにしか会話できず、やはり家庭ではなく世界平和のミッションのほうを取るというラストなのかな、って思ってました。実際は、もう誰とも触れることができない、という非常に残酷な毒でしたが。
ラストシーンを見て、ノー・タイム・トゥ・ダイなんてタイトル、盛大な詐欺じゃねーか!
と思ったんですが、人が死を迎えるとき、今死ぬべき時なんだ、って思って死ねるなんてことはないと思いました。映画ではキャラクターたちは、なにかを悟ったかのように、満足気な表情で最後を迎えますが、本当は残してしまう人のことを思い、悔いと怒りと悲しみに包まれるに違いないはずです。最後の瞬間まで、今は死ぬべきときではない、と思っているに違いないです。
さて、7代目のジェームズ・ボンドは誰になるのか。僕は彼女に続投してもらっても良いですよ。過去はラストシーンで燃やされてしまったんですから、もう忘れて良いのです。