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ALTDEUS:Beyond Chronos(アルトデウス:ビヨンドクロノス)-今作は前作以上にスロースターター

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※現在アチーブメント91%。たぶん、真エンディングとアイツのエンディングには行けてない……ダリアの花の色が……そうであって欲しい……

赤っ恥をかくところでした。

12月4日に発売したVRインタラクティブストーリーアクション「アルトデウス:BC」をプレイしています。マルチエンディングのアドベンチャーゲームで、真エンドの確信を持てないタイミングですが、ちゃんと感想が固まったので、レビューとして一旦まとめます。

……というもの、下書きまで済ませたファーストインプレッションの記事があり、その内容はなかなかの酷評でした。

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前作、東京クロノスは、ハードウェアや開発コストの制約を逆手に取った、ディレクションの上手いタイトルと感じました。東京クロノスが大成功し、次回作はとてつもない飛躍、まさしくビヨンドな傑作を期待しました。

smoglog.hatenablog.com 

自己弁護のように聞こえるかもしれませんが、このタイトルは前作以上にスロースターターです。動画配信が許可されている最初のスタッフロールの時点では、特にVRゲームについて訓練を受けたユーザーに突き刺さるのか、疑問に思いました。

 

このタイトルにもともと関心があり、未プレイの人は、一旦ここで読むのを辞めて、最初のスタッフロールで、微妙だなって思っても、続けると涙腺崩壊必至の物語に抜け出せなくなると思いますよ。

 

この感想を読んで、購入してみよう! って人がいるのかわかりませんけど、序盤と後半でここまで印象の違うタイトルは初めてでした。アルトデウス:ビヨンドクロノス、おすすめです。

主義とは反しますが、ストアで太鼓判をおしてオススメできるという意味で、レビュー星5評価しましたし、気が早いかもしれませんけど、次回作が出るのが楽しみです。次の機会あればクラファン支援すると思う。

プレイして面白いと感じた人も、ぜひ評価して支援しましょう!

参照:レビューとは何だ|岸上健人@アルトデウスBC&東京クロノス|note

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当初の不満点は、どうしてわざわざ既存のビデオゲームでやれることをVRでやるんだろう、ということでした。リブラと呼ばれるシステムによって、既存のテキストアドベンチャーゲームのユーザーインタフェースをVR内で違和感をなくすことに成功していますが、このまま、この旧来然としたUIでシナリオが進むと思ってしまって、落胆してしまったんです。

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また、巨大ロボット「マキア」に登場しての戦闘は、おそらくユーザービリティを優先してVR酔いを恐れてなのか、ショックアブソーバは完璧、両腕のコントローラーは盛大に振動するのに、画面は微動だに揺れません。開発者は試した上で、これが完璧と思ったのかもしれませんが、ユーザーにはこれが最善とはわからないんですよね。もっと盛大に揺れたほうが、リアリティがあったかもしれません。揺れのスピードやエフェクトなどで工夫があれば? などと思うところがあります。

 

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正体不明の巨大な敵、地下に隔離された人類、支援AI、コクピットの中で歌唱する歌姫、不可視のシールド展開、味方に守られての長距離射撃……既視感を覚える設定と状況……それ自体は良いんです。VRとして憧れの状況をVRで体験できるのですから……でも、どこか臨場感が足らない……と当初は思ってしまいました。

 

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ロボットの操作は、単純で面白みのないタッチ操作だったので、こんな操作くらい優秀な支援AIノアちゃんがオートでやっておいてくれよ……、と思ったんですけど、最初のスタッフロールの後から、ここの印象は一変します。このシーンは、より自然でインタラクティブな選択肢の提示なんです。実際の自分の行動が、物語のその後に大きく影響を与える。まさしくVRらしいシステムだと思いました。

 

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次にシナリオ面について。

公式サイトも見ず、知っている設定は購入ページのテキストのみで、主人公が女性ってことすら知らない状態ではじめました。自分におおきなおっぱいがついていて、びっくりした。

主人公であるロボットパイロットの「クロエ」が、親友の「コーコ」の仇である正体不明の敵「メテオラ」を敵討ちと、コーコの死の謎と追う、という筋書きなんですけど、コーコに強い親愛と執着を抱くクロエに対して、プレイヤーである僕は冷めてるんですよ。過去エピソードも流れるんだけど、言動が超越的で「わたし、悟っちゃってます」みたいな感じがすげー苦手。

 

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コーコの死後に、その姿と人格を元にしたAIのノアが生まれ、主人公であるクロエは、ノアに「存在が胡散臭い」って感じるんですけど、プレイヤーである僕は、むしろコーコに当てはまってしまって、感情移入できないのです。コーコの身体的特徴そのものに舞台設定と矛盾を抱えていて、それはちゃんと伏線回収されるんですけど、最初は「設定がちゃんと詰められていないんだな」って勝手に落胆してしまいました。

全体を通してプレイすると、コーコの謎は後半での盛り上がりを起爆させる演出なんですけど、前作が良かったというものあって、最初はシナリオ面でも不満がありました。

 

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物語の始まりが低調なぶん、後半のカタルシスが凄まじい作品となっているんですけど、もう少し最初の掴みに注力しても良かったのではないでしょうか。ノアのライブシーンも最初に入れるべきだったと思うな。

この作品の素晴らしさを伝える役目は、プレイして感動したプレイヤー本人に委ねるってことかもしれないけれど、もう少し商売っ気出しても良いのではないでしょうか。あとはDLCで、ノアのライブ演出豪華版とか。

 

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今作は、前作よりもスケールを大きく作ろうとして、たぶん開発規模に合わせて練られた設定ではないような気がします。

そんなことは、開発した当人がわかっとるわい! と言われるかもしれませんけど、現状の制作体制でベストを尽くしている、というのは製品そのものから伝わります。これは不満というより、開発者への信頼の気持ちから来るんですけど、もっと開発費が潤沢にあれば、と思いました。

 

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前作とのつながりは、全く別タイトルとして考えてもいいくらいだと思います。前作キャラと血の繋がりのあるキャラクターがいるので、前作をプレイしておくと、より深くキャラの心情が知ることができます。良くも悪くも、ビジュアル面で前作がプレイできなくなるほどの進化はないし、どちらから始めてもよいですね。

 

 

 

ボツ記事供養所:ファーストインプレッションによる誤解

せっかく書いたファーストインプレッション記事、捨てるのはもったいないので、ここに置いておきます。盛大なブーメランになってしまっているので、逆にいえば、導入はミスリードさせてしまう可能性があり、もうすこしキャッチーにしてほしかったという指摘になると思います。

 

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東京クロノスは、ハードウェアや開発コストの制約を逆手に取った、ディレクションの上手いタイトルと感じました。東京クロノスが大成功し、次回作はとてつもない飛躍、まさしくビヨンドな傑作を期待しましたが……。

 

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確かに、前作よりもグラフィックが綺麗に、ゲームメカニクスも遥かにリッチになっています。しかし、その豪華さは、「VRでしかできない体験」に投資されていないように感じました。物語の「リアル」のリアリティをVRならもっと臨場感たっぷりに描けたと思うのです。

 

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巨大ロボットに乗り込み、謎の敵と戦うシチュエーションが仮想現実で体験できるなんて、最初はすごくワクワクしました。たとえ、最初の戦いは、エヴァのヤシマ作戦、次の戦いは使徒捕獲作戦(マグマダイバー)の焼き増しであっても。「SOUND ONLY」が出てきて、笑ってしまったわ。

 

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おそらくVR酔いを懸念したのか、巨大ロボットのマキアは歩いても攻撃を食らっても、ショックアブソーバーが完璧。コントローラが振動するだけ、画面はまったく揺れず、巨大なロボットを操作している高揚感はありません。単純なタッチ操作(それくらい優秀な支援AIでやっておいてくれ!)のバトルをアドベンチャーパートと双璧をなすバトルパートとことさら強調するほどの面白さを現状は感じられません。

 

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書割ペラペラの群衆を描くなら、最初からレイヤーレベルを下げた、アイコンの人を表示して、その理由は設定としてテキストで説明すればいい。未来は差別を無くすため、一定親密度以下の人間は外見をフィルタリングされるとか。前作で感じた賢い「割り切り」を今作では感じませんでした。VRである利点は、過疎なまわりの風景を見渡せるだけなんでしょうか?

 

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前作がヘッドトラッキングのみで、今作はポジショントラッキングに対応したものの、今のところ、利点は女性キャラのローアングル狙えることくらいです。

 

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操作は、オブジェクトを実際触るというより、マウス操作のポイントクリックに似た感触で、ウェイトと暗転が入る分、寧ろテンポが悪くなってしまったように思います。

 

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フルアニメーションするライブパートと、前作よりも動くけど、部分モーションを繋ぐ方式のアドベンチャーパートのリアリティに落差を感じます。Quest2になっても難しいのか、開発コストが見合わないのか。前作が霞むほどの進化ではないので、今作から初めて面白かったので、前作をやろうというパターンでもがっかりしない、と言う点はメリットかもしれません。あ、前作と直接的なつながりはなく、今のところ、ファンサービスレベルで前作の血縁者っぽい人がいるだけです。

 

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リブラのシステムは、既存のテキストアドベンチャーゲームのUIをVRゲームに持ち込むアイディアとしては正しいですが、もっとVRにしかできないUIがもっとあるはず。タッチパネル操作のアドベンチャーゲームと大きな違いがないです。多数決で挙手する、相槌を打つ、ものを投げる、相手を殴る、キスするとか、自分のモーションで選択肢を選び、仮想現実が進行することで、リアリティはもっと確かなものとなるはずです。

 

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VRでゲームをなぜ作っているのか? VRでしか作れないゲームだから、というより、今ライバルもいないから目立って市場を寡占できるから、っていうビジネス的判断のような気がします。VRヘッドセットを被ればもれなくVRゲームなんて安直な考えはやめて欲しいです。今作を前作よりも「既存のビデオゲームぽいもの」に作ろうとしたことは、残念ながら僕には期待はずれでした。

 

シナリオ面では、最初のエンドロールの時点では、評価が難しいです。現時点で評価するのは卑怯でしょう。前作も、中盤からの巻き返しがすごかったので、それに期待したいです。

 

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誤解してもらいたくないのは、「ビデオゲーム」としては、前作を超える素晴らしいクオリティです。僕が「VRアドベンチャーゲーム」として、今作の以前/以後とで語られるような記念碑的タイトルになるのでは、と勝手に期待しすぎただけです。

 

 

 

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