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最初から完全版はやはり幻想 現実は良作だが不完全‐メタファー:リファンタジオのクリア感想

アトラスのペルソナ開発スタッフによる、新規タイトル「メタファー:リファンタジオ」を86時間でクリアしました。竜も倒しました(ビギナー難易度に落として……)。

色々言いたいことはあるけど、面白かったです!! 

ネタバレなしの感想は、体験版と序盤感想でアップしています。

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面白かった……んですが、10個良い点あげると、同じくらい文句をあげたくなるような、そんなゲームでした。

長期間開発かかっていたわりには、完成度が今ひとつといいますか……明らかに錬られきっていない部分、作りかけの部分が散見されます。

アトラスのゲームは完全版商法だ、とよく批判されますが、今回もまたそのフラグをビンビンと感じます。ペルソナ5よりも、新規IPな分、もっと未完成版って感じがするんです。面白さは十分だったんですけど、個人的にその点が釈然としないです。

 

未完成と感じる部分

名所巡りの部分、アニメ背景を使うのは上手いやり方ですね

約5ヶ月という中途半端さ

王を選ぶ日程は、中途半端な10月に設定されています。

どうせなら新年の日に選ぶのが切りよくない?

最後の仲間が正式加入して、一ヶ月くらいしか一緒にいられないのも、育てがいがありません。

 

今回の舞台は、架空の世界ということで、ペルソナシリーズのように四季や学校スケジュールに固定されることなく、開発は自由にシナリオを組み立てることができます。

ですから、完全版で間に2ヶ月追加することも可能。そういう算段なのでは、と疑ってます。

 

鎧戦車に乗って、時間配分を考えながら、各地へ旅する感じは、ペルソナにはない独特の旅情があって、スケジュール管理も面白く、もっと複雑で大きな拠点で遊びたかったです。

完全版は、エルダの隠れ里が新しい拠点となって、パーティに途中退場したグライアスの代わりのローグ族の女の子が加入するんでしょ?

 

 

ダンジョンが使いまわし

 

ソウルハッカーズ2ほどではありませんが、森、荒地、塔などパターンはあれど、スキン違いのモジュールをつなぎ合わせたダンジョンで、ユニークなギミックもありません。

ペルソナ5の時のようにパレス毎独特のダンジョン構造とユニークなギミックがあった時よりも退化しています。

 

ガリカの装備

妖精のガリカもパーティメンバー装備変更欄があるんですけど、一切変更できません。

アイテムも使用できないのに、一覧に表示されるし……。

これ、なんであるんでしょうか? 

完全版出たら、ガリカの項目は消えていて、八人目のパーティメンバーが表示されるのでは?

 

太刀乗り

魅せ場はここだけ……?

フィールド移動で四段階も速度調整する必要あったのかな……。

 

最強のジンテーゼの演出がしょぼい

お巡りさん、変質者です!!

キュルルゥ……ピカッ!

え……これだけなの?

 

UIは見た目は良いが、使い心地は最悪だった

アトラスのUIは見た目の良さと使い心地を両立している印象でしたが、今回はとても使いにくかったです。

まず、アイテムの項目がメニュー画面とバトル画面で設計が異なるため、アイテムを見つけるのに毎回迷いました。

アイテム数が多いため、メニュー画面で状態異常回復アイテムを探すときなど大変です。

 

アーキタイプを変更すると、装備が切り替わってしまうため、装備変更したいのですが、ページ構造がぐちゃぐちゃであっちこっちへ行ったり来たり。キャラビルドの項目(アーキタイプ、継承スキル、装備の場所)がバラバラでフローが悪いです。

メニュー画面にとって付けたようなYボタンのアーキタイプ習得項目など、途中で増築した部分があり、開発段階での設計の甘さが見え隠れします。

ダッシュのエフェクトなしが選べるようにアップデートされたのは良かったです。

 

フォント選びなど、舞台設定に合わせて欲しかった。なんであんなにポップにするんだ……。

 

育成の自由度が低い!!

ペルソナシリーズと違って、パーティメンバー全員自由にアーキタイプを付け替えできる本作ですが、上級職、最上級職につける前提条件が、下位アーキタイプのマスターのため、それほど自由度が高くありません。

結局、ユーザーが同じアーキタイプを履修して、ロイヤルアーキタイプになることになります。

上位アーキタイプ履修条件が、任意の下位アーキタイプ2種マスターとか、アーキタイプ履修50%以上とかだったら、プレイヤー毎に多様なアーキタイプのビルドが生まれたはず。

控えメンバーと入れ替えする必要性があまり感じられず、ラストバトルでは最後だし可哀想だから、無理して入れ替えしてました。たしか、ペルソナ5では、「ワンモア」で勝手にチェンジしてなかったっけ? あのシステムのほうが良かったな……。

 

単純なグラフィックのパフォーマンス

影の付け忘れ、みーっけ!

正直、期待外れでした。ペルソナ4から5への変化に比べると、あまり大きく変わった印象がありませんでした。また、モデリングやモーションの作り込み、イベントシーンのカット割りなどは、劣化した印象すら覚えました。

 

鎧戦車から見える風景がショボすぎて……。

 

皮肉なことに今回、アニメパートのクオリティが上がったこともあり、ゲーム画面とアニメパートのどちらかが大きく見劣りするようなことがなかったです。

邪推ですが、自社製のゲームエンジンの開発が足を引っ張ったのではないでしょうか。

キャラクターのフェイスモーションはテイルズオブアライズのクオリティを期待していました。

セリフ横のキャライラストそのまんまが、ゲームキャラとして動いていたら最高なんだけどなぁ。

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物語は凡庸だが、メッセージ性に心奪われた

この作品の良いところは、現実世界を幻想小説の理想郷と描いたところ。この部分がとても皮肉が効いていて痺れます。この一点が、この作品を僕が凡作と断言しない点です。ゲームの世界に比べて、こんなに我々の現実は恵まれているのに、ゲームの世界よりもむしろ悪い。暗殺や戦争が無くなっていない。

 

ですが、物語そのものは、個人的には凡庸に感じました。

もともとプロジェクト・リファンタジーという名前だったので、重厚なハイファンタジーをワールドクリエイトするつもりなのかな? と期待してましたが、中身は割とよく見る和製ファンタジー世界で、色々な要素が既存の漫画やアニメの設定を連想しました。

過去の歴史はナウシカですし、ニンゲンの設定はエヴァンゲリオン(元老院の閣議シーンがそのまんまの演出で笑ってしまった)、進撃の巨人を連想しました。既視感があって、新鮮さは感じなかったかな……。長期間開発してたので、かなり迷走してたんじゃないかな、と思いました。

 

 

王道のストーリーと言えば聞こえは良いですが、驚きのある展開はなかったですね。

主人公の正体も、角のない王子や序盤のモヤモヤとした始まり方から、予想できました。

モアや声の正体も予想の範疇でした。モアの声優が降板前だったら、アムロから闇落ちしてギレンになるんで、その仕掛けは実現してたら面白かったかも。

 

 

後半の展開は、どんどん剥がれていくルイのカリスマ性が悲しかったな……。なんで脱ぐんだよ。

せっかく選挙というモチーフを選んだので、ちゃんと国民達に選ばれた上で、王を決めて欲しかったです。力こそ全てというルイに対して、それを否定しながら、バトルで勝敗を決めるという展開は、すごく矛盾を感じました。

投票で決めたあとで、不服だ! と力でねじ伏せようとするルイと戦うという展開だったら、納得できたんですけど。

途中の王の魔法で、候補者同士は戦えないというルールは、すごく面白い! と思ったので、選挙という設定がフレーバー止まりだったのは、すごく残念。

 

 

どちらの意見も正しい、そのどちらを選ぶか。多数派が勝利してしまって、残りの意見が無碍にされてしまうのが、民主主義の欠点部分。その後も最善を尽くして、お互いが手を取り合って、国をより良くしていかなければならない、ということを描いて欲しかったですね。

単純な善悪の構図になっていて、幼稚に感じました。現実のアメリカ大統領選の選挙後の派閥間の分断とか見ると、どちらが良い悪いっていう風になると、国が真っ二つになってしまうんだよな、って思うんですよね……。

 

 

あと何回も「最後の戦い」 って言わないで欲しい……「これが本当の最後の戦い」 って本当か??? って身構えてしまった。

 

キャラクターたち

 

ビジュアルについては人それぞれの嗜好なんですけど、ペルソナ5でキャラの描き分け・キャラパターンの限界を感じていたので、今回のキャラクターは見分けがついていて、良かったです。

おそらくポリコレ批判に対応するためと思いますけど、褐色肌キャラが好きなので、肌の焼けたキャラが増えて嬉しい。差別的な意図はなく、褐色肌のキャラが好きな開発者ではないとは思うので、なんか良いかっこしいな意図が鼻をつく感じもあるかもしれません。

 

今回のキャラクターはファンタジー世界のため、貴族だったり、騎士だったりで、悩みや問題が、我々とは乖離していて、ペルソナのように学生ではないので、共感しにくい点があったかも。

描き方もあっさりしていて、どうなんだろな……支援者イベントでの深堀りも不十分に感じて、ペルソナのキャラほど愛着はわかなかったかもしれません。思い出として残る学校行事のない5ヶ月って単純にやっぱり短いよな……。

 

海外の強い女性像が、粗野で野蛮な男性の悪い面を全面に押し出した感じに対して、かっこよくて美しい・かわいいという表現なのは良かったです。

 

なんのメタファー?

ウィキペディアでメタファーとは、

隠喩(いんゆ)、暗喩(あんゆ)とも呼ばれ、伝統的には修辞技法のひとつとされ、比喩の一種でありながら、比喩であることを明示する形式ではないものを指す。

とあります。私の好きなメタファーは、結婚は人生の墓場だ、かな。

 

ゲームという幻想が、現実のメタファーになっている、という一番大きな大前提がありますが、それ以外にもゲームに登場するアイテムや種族が様々なメタファーになっていると思います。

自分が勝手に解釈したのを羅列します。

 

ムスタリ族

 

第三の目を持ち、マグラの流れを見ることができる(人の負の感情を読む=危険察知能力に長けていそう)のに、金属製の仮面を被る人たちは、小さな島の中、他者との交流を拒み、生贄と勝手に解釈した伝統を守り続けています。それは例えば投票などにも、自分の意見を示さず、政治家なんて誰がやっても同じ、お上の考えるままと流れに任せるままの無気力な人を暗喩しているのでは、と思いました。

 

王笏

 

かの有名な言葉「正義の名を借りた悪」 そのものです。

時代背景を味方にした、他者に強いる正しさ、と言いますか。

活動家が言う自由や平等だったり、自然保護だったり。

王笏を握ったルイに啖呵切るガリカのセリフにゾクゾクしました。

 

 

狂化

 

「目覚める」 と言うことではないでしょうか。

自分たちのかかげる正義に酔って、間違った方向へ進んでも、組織が腐っても、自省しない、そんな人達。サブイベントでニンゲンを神として崇めようとしていました。

日本のコンテンツは、宗教批判に陥りがち、と海外で言われているそうですが、宗教そのものを批判したいのではなくて、宗教という権威におぼれて、堕落していってしまう人を批判したいんだと思うんですよね。惺教そのものが救いになっている人、本来の教えに立ち返ろうとしている人を描いたのは良かったです。

 

 

ニンゲン

様々な異形の姿でしたが、卵のモチーフが多かったのが印象的でした。

メタファーの代表に、卵型のハンプティ・ダンプティがウィキに参照されていました。

ハンプティ・ダンプティは、「非常に危なっかしい状態」あるいは「一度壊れると容易には元に戻らないもの」を指し示すための比喩としてもしばしば用いられているそうです。

これは開発者が意図したものじゃないかもしれませんが、卵を割るというのは、人類全員が本来LGBTQであると考えている活動家にとって、本来の自分をカミングアウトする(つまりLGBTQと自覚すること)を意味しているそうです。

わかっていてやってるとしたら、ペルソナ4で完二、直斗のジェンダー批判が、そうとう頭に来ていたんでは、と思ったり。

 

破滅王カラドリウス

ルイの鎧戦車の名前でもあるカラドリウスというのは神の鳥で、キリストの化身ともされていて、危篤の王の枕元に現れ、回復の見込みがある(あるいは徳の良い)なら目をじっと見つめ、病を吸い取ってくれ、そうでなければ飛び去ってゆくといいます。

ルイはもしかしたら良い王様になれる素質があったのかもしれませんね。能力はめちゃくちゃ高いのは確かだったわけですし。

 

ニンゲン化第一段階のビジュアルは、ダンテの神曲の一場面のコキュートスの最深部に現れる3つの顔をもつ悪魔大王です。

 

 

口の中に咥えている人間は、ユダ、ブルータス、カシウスの3人で西洋の人間の大逆者として数えれられているそうな。

腹にいるのが、ダンテと案内役のウェルギリウス(実在の古代ローマの有名な詩人)。

ダンテ自身は政争に敗れ、故郷フィレンツェを追放されて、各地を放浪して神曲を執筆するんですね。モアが理想の道が絶たれ、幻想小説を執筆することと見事に重複していますね。

 

総評

個人的には大満足。だが良い点と同じくらい不満も言える

ゲーム性は面白いが、味変されたペルソナの範疇

未完成の部分が多い(完全版フラグ)

シナリオは凡庸(王道とも言える)

メッセージ性は超刺さる