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ソフビ雑記48: ソフビ磁石特許騒動の件まとめ、個人的に思ったこと(追記あり)

ソフビそのものについて、僕の浅い知識と独断と偏見でアレコレ勝手に語る、ソフビ雑記のコーナーです。

※特許権放棄についての追記あり(追記箇所にジャンプします)

あと今となっては攻撃的すぎる文章箇所は削除しました。

ブックマークのコメントが結構荒れてるので、追記してます。コメントしていただけるのは大歓迎です(間違いや反省しなければいけない点も気付かされました)。人格否定・誹謗中傷とかはやめてください。また、コメントされている考えを否定しているつもりではありませんが、自分が伝えたかったことが伝わってないかもしれませんので、誤解なきよう努める意味で追記させていただきます。自分のメンタル守るためにも。読まずにコメントしてる人は知らない!

長い記事なので、以下5つのポイントをおさえてください!

1、個人生産によるごくごく小規模な業界で、ほとんど初めて起きた騒動であること(準備不足で対応として手探り状態で良くない部分があった。多くの人が今回の結末が良かったとは思ってません)。

2、今回の特許は、特許権者が知らなかっただけで、業界では今までにも製品化されていたギミックだったこと。

3、通常通りの使用範囲で、いままで通り第三者も使えるのであれば、変な人に取られるよりも特許を取得したまま、守って欲しいという意見もあった。しかし、特許権者が使用許諾制にして、権威を主張してしまったことで大きな反発が生まれたこと。

4、無効化審判の結果を待った場合、小さな業界内ですから、同業者、カスタマーのヘイトが集まって実質作家生命が絶たれる可能性があった。選択肢としては、①使用許諾制の部分を撤回。②特許を破棄 の2つがあり、②を強要した人がいなかったといいませんが、今後の活動を鑑みて、特許権者自身が後者を選択されたと思っております。

5、今回の件で、特許権者が報われない、納得いかない、という方は、お前何様よと思うかもしれませんが、作品を見てください。素敵だと思ったら、購入して活動を応援してあげてください。

 

つい先日からX(旧ツイッター)上で騒がれてるソフビ関連のトピックがあります。

Finger Suck FactoryのYUBISUI氏の、ソフビのパーツ同士を中に入れた磁石等でくっつけるギミックにおいて、磁性体そのものをソフビに接着などして固定せずに放り込むことで、自由な位置でパーツ同士をくっつけることができるというアイディアの特許申請をしてその権利を獲た、というポストでした(当該ポストは、対応を決定するまで混乱を避けたいという意図で削除済み)。

炎上を拡大化させる意図は僕にはないため、事態が納まってから記事にしようと考えたのですが、自分自身適当に考えたことをさらりとX(旧ツイッター)にポストしてしまって、不十分だったかなと思うところあり、考えをまとめておきます。特許に関して詳しいわけではないので、間違っていたらご指摘ください。

追記:特許について無理解すぎる記事とありました。その点は重々承知しております。ですので、コメントくださった詳しい方、ご指摘をお願いいたします。

私が集めているインディーズソフビという業界は、個人生産で大量の製品を作ることができず、一人一人の商業規模としては小さな業態です。なので、自分のアイディアで特許を取ろうという考え方をする人はこれまではほとんどいなかったようです。アイディアを思いついても、業界発展のためにお互いケンカにならない範囲で使い合おうというのが慣習でした。特許料目的で独占するほど商業規模ではないし、むしろ独立した作家性がウリなので、それを制限するようなら、業界はどんどん衰退していくことになるという考えが強いように思います。特殊な業界で起きた出来事なんです。その点を留意ください。

そして、こういう事態が初めてで、後から考えると良くない・準備不足だったことが多かったと思います。今回の記事は、再度同じことが起きたとき、どうすればよかったのか考察する意味で必要性があると信じています。決して犯人探しや、特許法、業界全体を貶める意図があるものではありません。

 

特許内容については、別の方のポストで、こちらできちんと確認できます。

参照‐j-platpat

この特許では、磁性体を中空構造の樹脂製玩具の中に、動くように固定せずに放り込むことで、パーツ同士を自由な位置で固定することができるというものです。ソフビのみならず、フィギュアやドールなどまで範囲が広いことからも各方面から不安の声があがりました。

 

作家さんやコレクターを困惑させた原因は3つあると考えます。

1、そのアイディアは特許権者が特許取得するまえに既に存在して製品として売られている。

2、以後、その特許を利用した製品を販売することができなくなるのではないか? 既に販売された製品を回収・あるいは特許料の支払いに応じなければならないのではないか?

3、ソフビの中に磁石を入れるだけ、という言ってしまえば単純なアイディアに特許が認められたこと。今後いろんなギミックに特許が認められ、ギミック有りのソフビが作れなくなる(確認作業が煩雑化され発展が阻害される)のではないか。

 

1については、特許申請されていないことをいいことに、利権で儲けようとしているのではないか? という懸念があって、結構な批判があったように思います。

記憶として想起されるのは、東方Projectのキャラクターを匿名掲示板のアスキーアート化した「ゆっくり」を合成音声ソフトで会話劇にした「ゆっくり茶番劇」 をなんの関係も縁もない第三者が商標登録し、使用権を徴収しようと企てた「柚葉事件」です。

参照‐ゆっくり茶番劇商標登録問題 - Wikipedia

 

個人的に、YUBISUI氏がこの特許でアイディアを独占して、お金儲けをしようとしていたという印象は最初から懐いていませんでした。

今回特許認定されたアイディアを以前より作品で採用されていた作家さんがYUBISUI氏と接触してみたところ、このアイディアが以前よりあったことを本当に知らなかったようです。

 

そもそもこのようなアイディアが、どうして特許など取られずに放置されていたのでしょうか?

特許がとれるようなアイディアとは思われていたなかった。

個人制作のスモールビジネスの形態なので、特許申請の煩雑さ・費用の観点から。

作家同士のつながりや業界発展のために。

そもそもパチ玩具なんてものが普通にある業界ですから、そういうのは無頓着なところがあるのも致し方ないのかもしれません。

 

個人的に、これまでは義理と人情の世界で、無断使用されたとしても「そのアイディアとっくに俺が考えて製品化してるもんねー!」 の矜持と「勝手に使いやがって、あいつとはもう絶交だ!」 という感じで終わっていたんですよ。

でも今回の出来事で、もうそういう規模感でできる商業規模ではなくなったんじゃないか、って思いました。法治国家で認められている以上、特許申請に関しては止めることはできません。しかし、今回の出来事がソフビの発展に悪影響を及ぼす悪しき前例になっては悲しいと思いました。今回の事件で、一つの手法が使えなくなってしまう。新しいギミックを考えても既に特許が取られているかも? と及び腰になってしまう。

 

何億円規模なのかわかりませんけど、世間一般にソフビは認知され、ブーム化しています。企業が自分たちのアイディアを守るため、特許をどんどん取得するようになるでしょう。讃岐うどんのように、海外が取ってしまうこともあるかもしれません。

遅かれ早かれ、このような事態にはなったことでしょう。

期せずその最初の一歩を刻んでしまったYUBISUI氏がどういう決定をするのか、良い落し所を見つけてくれることを信じておりました。

 

そして先日ポストされた内容がこちらです。

 

僕は一貫して、特許申請自体には批判するつもりはないです。しかし、このポストは……。

まず、「第三者から見たら特許権が持つ効力によって、個人創作されている皆様の創作活動を制限してしまうように見られることに考えが及ばず」とありますが、「弁理士様からはこの様なアイデアは独占ではなく広く発展させていった方がよいとの アドバイス」があったことと矛盾しております。特許=独占のイメージなかったんでしょうか。

後からなら何でも言えますが、このことからもYUBISUI氏は特許権取得によって、自分の思いついた(と勘違いした)アイディアを独占したかったのではなく、特許によってこのアイディアを自分が思いついたことを明確化して、周囲から称賛されたかったんだと思いました。

自己顕示欲を満たしたかった、と言えば自分も理解できるし、ここまでならリカバリー可能と思うのですが、そのアイディアが既出だった時点で、もう思惑は外れてしまっていたんですよ。未だにその事実を、(この時点では)どこかで認めていない印象を受けるのです。

 

キツイ言い方かもしれませんが、もうちょっと考えて結論だしてほしかったです。一番厳しい反応をされた人に確認してもらうとか。

追記:ブックマークに批判がありましたので、追記させていただきます。たしかに事がおこった後にそんなふうに言っても意味がないのかもしれません。いろんな人がこの件において、一番良い着地地点を考えていました。それを一方的な(自分にとって都合のよい)結末という見方をする人もいます。が、今回、特許アイディアを昔から使っていた人も、彼が特許を管理しても良いと言っていました。個人情報を取得して、特許使用登録制という決まりを言わなければ。ここが今回の騒動の一番の転換期になっています。

 

機構を利用するのに個人情報が必要とする条件が意味不明です。

「然るべき理由、不適切な利用法、この特許の発展を妨げる可能性があると判断させていただいた場合は、勝手ながら許諾を取り下げさせていただきます」とありますが、この判断がグレーです。この作品が嫌いだから、作家の人間性が最悪だから、自分の作品よりも売れてる(ライバル関係)という身勝手な理由も通りうる。使用許諾がおりて、売っている途中でなにかしら事件が起きて、「もう売るの駄目です」 となるリスクがあります。そもそも特許の発展を妨げる可能性が、この特許のせいでという矛盾。

 

特許とられているって知らず、使用許諾を得ないまま、このアイディアを使ってしまった場合のペナルティはなんですか? そもそもYUBISUI氏がそうやって(既出のアイディアと知らず)特許取得されていますよね。知りませんでしたで許されるなら、個人情報を渡すリスクとる必要ないし、許されないならYUBISUI氏も許されませんよね。

 

どうしてこんな条件をつけたかというと、せっかくコスト支払って特許取ったんだし、せめてアイディアの使用許可を管理する立場にいるということを誇示したかったんじゃないかと思いました。別の理由があるかもしれませんが、個人的にカッコ悪いことするなぁと感じました。

もし、このアイディアを広く一般的に使えるように、自分が特許権を保持し、みなさんは自由に使ってくださいと言えたら、最高の結末だったと思いました。理想は任天堂のスタンスです。ゲームの発展のため、特許ビジネスでライセンス料で儲けるような輩を牽制するため、積極的に特許は取得するが、制限は設けないというものです。YUBISUI氏の想いとしてはきっと同じなんでしょうが、細かいところで個人の欲が出てしまった印象です。

 

ゆっくり茶番劇に似た事件かな、と思ったら、僕としてはスシローぺろぺろ事件に近いかな、と感じています。店側に迷惑がかかると思っていなかった、みんなを楽しませてチヤホヤされたかった。皆が不安になると思ってなかった、皆に称賛されたかった……ということではないでしょうか。

 

矢面に立っていない僕が随分な言いようだし、御本人やお知り合い、ファンの方がいい気分になるような内容ではありませんが、自分としてはこのままYUBISUI氏が特許を保持していいのか、不安が残るような結末でした。

柚葉事件とは異なり、特許無効化の抗弁は可能期限内に発表されました(この点からもYUBISUI氏が決して悪意の独占ビジネスを仕掛けようとはしていないということは明確です)。

 

YUBISUI氏には申し訳ないですが、今回の一件が、ソフビ業界における特許権行使のありかたの悪い一例となってしまったことは、周囲の反応からも明白でしょう。

個人的に、今回の特許がより専門性の高いものだったら、周囲の反応も違ったように思いました。より安価な原料とか、特殊な成形方法とか。研究費、設備投資などのリスクを全然負ってないのに、リターンが大きすぎて、第三者からは納得しがたい。

作家同士の横のつながり、リサーチ不足により、特許を取ったもん勝ちみたいになってしまったのが良くなかったように思いました。

追記:YUBISUI氏は同業者方に相談しており、同じようなアイディアが製品化されていないかリサーチしていたようです。不幸なことに、同アイディアは発見されなかったようで、特許の査定も通ってしまいました。このことからも、インディーズソフビの作家・作品数が膨大であること。グループ・派閥が形成されていて、お互いの関係性・関心が希薄であること、製品アピールが不足していることなどが課題なのかもしれません。今回の出来事は、おおきな問題提起となりました。

 

何者でもない自分が偉そうなことを書いてすみません。

 

追記:特許を放棄されました

現状ベストな判断をされたと思います。

追記:ブックマークでこんなの全然ベストじゃない、というコメントがありましたので、追記させていただきます。これのどこがベストなのか、と疑問を呈しているかたもおられました。このまま、無効化審判を行い、時間とお金をかけて、特許が守れた場合、また特許無効となった場合。どちらの場合もおそらくYUBISUI氏の作家生命は完全に絶たれます。ソフビ業界、とくに個人生産の規模感をご存知でないのだと思います。一回の生産が30~50個程度、粗利は数十~万円の世界で、年数回という規模です。この中で、今まで普通に使えていたアイディアを(その意図なくとも)特許取得してしまい(許可制というルールを設けた)場合、同じ作家さんとの繋がりはなくなり(それを村八分と言い表すならそのとおりでしょうが、みんなで和気あいあいと一緒に業界をもり立てていこうとしているところ、悪気なくとも足並み揃えずスタンドプレーに走ったのですから、しょうがない部分があることを理解ください)、顧客も離れていってしまいます。ですから、今回の判断は、現時点でベストな判断と思いました。別に、ソフビ界隈の人間が、彼に直接特許を破棄せよ、とストレートに迫った訳ではないのです(そういう人が全くいなかったとは言えませんが、一部の過激な人だけでしょう)。自分としては、せっかく特許をとったのだし、特許使用の認可制の部分だけ撤回すれば良かったと思いますが、イメージ回復のため、特許維持費用の問題などあり、この結論に達したのだと愚考します。特許全体の問題提起としてではなく、あくまで今回の小さな業界において、そもそも論を言いださず、現状を鑑みてベストではないか、という意味で使いました。

 

以後、YUBISUI氏を批判されるような人がいないことを願います。

……もう数時間あとに記事を書いておけば……。

このアイディアを既に使用されていた作家さんたちの多くからも、当初はYUBISUI氏の作品の出来と人柄の良さで今回の件を養護されていたので、今回は本人(と周囲)の判断ミスだったんだと思います。

 

多くの人がこの件を冷静に合理的に受け止めている一方、経緯や内容を深く知らずに、特許法そのものの必要性を疑問視する声や、この趣味界隈の人間性を貶める発言、(なんと弁理士さんの中からも)炎上騒動によって放棄に追い込んだ法の敗北だと批判する意見がありました。この件の結末がハッピーエンドと思っている人は、作家さんやファンを含めて少ないと思ってます。やりようによっては、YUBISUI氏が特許を管理しつづけている未来も有り得たと考えています。

僕の記事もPV稼ぎのために他者を貶めている、という意見が出ることを覚悟しております。上記のような考え方の人にどれだけ伝わるかわかりませんが、それでも資料としてことのあらましを残しておく意義はあるかと思いました。不備あればご指摘お願います。

今回の件でホビーと特許の在り方の考えが深まるようになればと思います。

業界のより良い発展を願います。

 

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