前作ブレスオブザワイルド(以後BOTWと略称)の直接的続編となるティアーズオブザキングダム(以後TOTKと略称)をゆっくり40時間ほどプレイしました。
ネタバレは最小限にとどめてあります(が、個人的見解なので各々の自己責任でお願いします)。
前作においては、BOTWはオープンワールドゲームの記念碑的作品となり、このジャンルは本作以前と以後で語られるようになるだろう、とまとめました。
そんなまとめ方をしたもんですから、さぞかし僕はゼルダファンで、ゼルダ信者でゼルダ贔屓なヤツなんだろう、と思っている方もいるかもしれません。もし誤解があるなら、まずはそこを解消してからレビューに移りたいと思います。
僕は、別にゼルダが自分の人生において、一番好きなIPではないです。むしろあまり好きではないかもしれません。なんといっても、アラフォーの僕には、少々幼稚すぎると感じています。また、前作において「ゼルダの当たり前を見直す」 というコンセプトで開発されたそうですが、そこまでガチガチで停滞してるなら、ゼルダじゃなくて新規IPとして挑戦しろよ、って思ってます。まあ、自分が任天堂の中の人間だったとしても、ビジネス的にゼルダの看板を捨てれないとは思いますが……。
そんな訳で、別にIPとしてゼルダが好きな訳ではない、ということは信用していただきたいです。むしろ、フォースポークンのほうがスタイル的には好みなんですよね。でも、ゲーマーとしての好みとは別として、レビュワー(気取り)としてゲームのクオリティ評価は別として考えられない人間のレビューなんて信用できないでしょう? 贔屓のタイトルだから好評、嫌いなメーカーだから不評、そんな風に見えるレビューがなんと多いことか。
これほどまで世間で注目され、評価されている作品を、ただ自分の好きなスタイルのゲームではないというだけで、無視してしまうのはもったいないし、他のゲームを相対評価するには避けて通れないと感じました。
そういう訳で、本レビューは、ゼルダ信者による万事神評価でもないし、アンチによるアンチ評価でもない、ということをご理解ください。まあ、ここまで言っても信者やアンチには聞き入れて貰えないでしょうが……。
5年かかったのは理解できるし、心底感服するが……
今作TOTKは、前作BOTWのハイラルの舞台を基本そっくりそのまま利用しています。舞台アセットやプログラムなど流用は多岐に渡っています。なのに、開発期間は、ゼルダ史上もっとも長いスパンを必要としていました。
自分としては、フィールドを再利用しているのは、むしろ面白いと感じています。
前作、壊滅状態だったハイラルが、どのように復興して変化しているか。
久々に訪れたハイラルにどんなふうに懐かしさと新鮮さを感じるか……すごく楽しみでした。
プレイしてみて、感じたのは、「あれ……? 全然記憶にねぇ……」 でした。自分のへっぽこすぎる脳みそのせいもあるのはもちろんですが、アンチ勢が言う、まったく同じマップで新鮮味がないという評価できる完全記憶力すげぇな、と思いました。
自分の落ち度もありますけど、もっと記憶が鮮明だったら、最初からハイラルに対する愛着が深く持てたように感じます。
一年くらい前に前作BOTWをプレイして、今作TOTKをプレイするという流れだったら、ハイラル再訪の旅情をたっぷり味わえたように思いました。
やっぱり5年は長いよなぁ。
一方で、5年という歳月が必要だった理由、その弛まぬ努力を感じるのは確かです。
地上世界の細部は変化していますし、今作では新たに空と地下世界に拡大し、より自由度を増したシナリオとシステムは、これを良くぞ破綻させずに実装することが出来たものだ、と両手を上げて称賛できます。
前作での不満点も、驚くほどクリエイティブな方法で解消されており、思わず「よく出来ている……」 と度々漏らしてしまいます。
グラフィック品質について
個人的にこれぞアンチによるアンチ評価と感じているものの一つがグラフィックに関する低評価です。
確かに、Switchはそもそも他プラットホームに比べて低スペックに加え、そろそろ次世代機の代替わり時期に差し掛かっており、最新ハードや高スペックPCでゲームをプレイしているユーザーからすると、グラフィック品質やフレームレートで満足できないという意見は納得できますし、自分もそう思います。
しかし、グラフィックを評価するのに、PS2レベルというあまりにも不当な評価がされていたのを目にしてしまいました。
それはあまりにも節穴すぎませんか。これだけのグラフィックをPS2上で再現しているゲームタイトル教えてくださいよ。マジで。
そもそも、グラフィックが〇〇レベルって評価するのは、最新ハードなのに、他の同一ハードタイトルよりも劣っている、と批評する時に使うべきじゃないですか?
TOTKのグラフィックレベルは、前作BOTWよりも高いのは、よっぽど鈍感な人間か、ゲームハード戦争のプロパガンダにしようとしている人間でなければ明確です。
BOTWですら、そもそもWiiUタイトルとして開発されていたSwitchローンチタイトルなのに、これよりグラフィックが残念なSwitchタイトルが溢れています。
逆にSwitchで、ここまでのグラフィックが出せることがすごいと評価すべきではないでしょうか?
グラフィックが良くなって、さらにロード速度が改善されたのが嬉しい!!
新しい能力について-プレイヤーへの信頼と期待
前作の能力に変わった新しい能力は、同じハイラルの舞台において、驚くほど新鮮で自由度の高い体験をもたらしてくれます。
ウルトラハンドは、謎解きにおいてユーザー一人ひとりに多様な解決方法と、クリエイティブな遊びを提供してくれます。この新しい能力だけで無限に遊べるプレイヤーもいることでしょう。
トーレルーフとモドレコは、空世界に拡張された本作の上移動をよりやりやすくするための能力と感じました。前作では崖登りのシーンがかなり多く、天候によって難儀する場面が多かったため、とても活躍してくれます。モドレコとウルトラハンドの効果範囲の仕様の細かな違いや、同時発動可能など、めちゃくちゃ考えられています。
スクラビルドは、インスタントアイテムビルド能力で、前作の武器破損システムへの不満への回答といえます。正直、この能力は前作でも欲しかったです。
前作では、折角強敵を倒しても思ったようなリターンが得られず、武器が消耗してしまって、武器の集め直しという展開が多かったです。結果的に敵を避けることが多くなっていまいました。
今作では、なにしろあらゆるアイテム同士、フィールドオブジェクトとの組み合わせがあり、単純な能力数値上昇のとどまらず、特殊な組み合わせによって発動するアクションも多数あります。このひとつひとつの仕様を決めて、ゲームに落とし込んで破綻がでないか検証することの膨大な仕事量を考えると目眩を覚えます。
これらの能力って、前作でプレイヤーが開発者を驚かせた結果だと感じています。
トロッコ空中浮遊など、開発者も想像していなかった使われ方がされて、プレイヤーが開発者の想定を上回ったんです。
今作においては、チュートリアルは本当に必要最低限で、謎解きの解き方も正攻法以外もなんでもありです。遊び場は作ったから、あとは本当に自由にプレイヤーが遊びつくして欲しい、という開発者からのメッセージを感じます。
相変わらずUI品質は任天堂らしくない
エルデンリングと並び称されるほど、高難易度と評価される本作ですが、その難しさの一端は、あまりにも煩雑なユーザーインターフェースに責任があると考えています。
プレイヤー本人のスキルの上手い下手ももちろんありますが、とにかくすべてのボタンを使いますし、統一性が感じられない、このゲーム特有の操作体系なんです。
ジャンプXボタンは、前作同様にどうしても適応できず変更しました。
近接武器と弓を構えていないと変更できない仕様もイライラさせます。壊れたら、適当な武器に勝手に装備してほしい。
戦闘中に能力を活用するのは、めちゃくちゃ難しいです。自分には正直無理です。最高にわちゃわちゃします。これ使いこなせる人、本当にすごい。
道具のショートカット(十字キー上)の並びが横一列なので、スクロールがめちゃくちゃ大変です。
相変わらずムービースキップがXか-ボタンか統一されていない謎仕様です。
これが最新のスタイルなんだ、と言われれば、おじさんゲーマーとして、適応できてないんだなぁ……としか言えないのですが、もうすこしすっきり明快にできないか、と思っています。
大いなるマンネリと言われても、やっぱりマンネリじゃん……
今作において、開発陣はあまりにも前作と似通ってるとして、度々疑問を感じていたそうです。結果的に、それを「大いなるマンネリ」 という言葉に言い換えて納得したそうですが……。
自分が同じフィールド使いまわしよりも疑問に感じているのが、新しい能力を得ても、基本のゲーム内容は同じだ、という点です。
マップを開放するための塔をまわり、祠を回って能力を開放して、コログを集める。
言ってしまえば、前作のマイナーチェンジ版、なんですよね。前作ほどの革新性を感じませんでした。前作よりもより多くの要素がたされていて、素晴らしいとは思うのですが……。
前作のアセットを利用して次回作を作るという手法は、かつては時のオカリナより作られたムジュラの仮面がありました。このタイトルにおいては、時のオカリナのハイラルとはパラレルワールドという設定もありましたが、3日という限られた時間がループする大きく異なるシステムを採用されていました。
このように、本作TOTKにおいても、なにか違う新しい遊びが用意されていると嬉しかったです。もちろん、新しい能力そのものがそれなんだと言えるかもしれません。さらに、祠巡り自体に問題があるとも、心底面白くないとは言いません。でも前作以上に、あの山の上に何があるのか? あの岬の下になにかないか? って興味をそそられて向かうというモチベーションは湧かなかったです。これは前作とフィールドが共通しているからという理由ではなくて、そこにある体験がある程度予想できてしまっているからなんですよ。
例えば、ガノンドロフ復活によってハイラルの住民がなにか違う姿に変化してしまう、それを今作でフィーチャーされているビルド能力で、なにか浄化するオブジェクトをつくって、元の姿に戻す。これによってハイラルの復興が進んでいく。住民からの見返りとしてリンクの能力が元に戻っていく……とか、前作とは異なる仕組みによる強化展開が欲しかったです。
今後も、このオープンエアーなゼルダを作り続けるとしていますが、個人的にはまったく新しいフィールドで祠巡りをさせられるよりも、次回作も同じハイラルベースに拡張して、全く違う遊びを、と期待しています。
シナリオについて
前作のシナリオが良くなかった訳ではありませんが、「ゼルダ」でした。
他の古くからあるファンタジーと比べると、設定は薄っぺらく、作家性を感じることが少なかったように思いました。そこが僕がゼルダを捨てて、まったく新しいIPとして作って欲しいと思う一番の理由です。
今作は、自分のそんな考えが浅はかだったと感じられるほど、物語は意外性があり、キャラクターはメイン・サブ含めて生き生きとしています。
シナリオ単体としては、個人的に一番面白いゼルダじゃなかろうか、と感じております。
まだ途中ですが、世界の散策や謎解きと同等かそれ以上に、この物語の結末を目にするのが楽しみです。
まとめ
まとめとしては、出来としては前作以上だが、前作よりも革新性は感じられない、という感じでしょうか。プレイしていてめちゃくちゃ楽しいんですけど、ゲームの歴史を俯瞰してみたら、転換期的なタイトルとは思えませんでした。
最初からゼルダが嫌い、任天堂嫌いの人間と、ゲーム側からおんぶに抱っこしてもらって頭空っぽにしてでもプレイできるタイプのゲームじゃないとプレイできないって人以外なら、誰もが驚嘆して夢中になれるゲームだと思いました。BOTWが最高だった人にとっては、もちろん最高の続編でしょう。高評価も納得です。
PV的には0か100かの極端な評価が良いんでしょうけど、それでいてわりと全方向に喧嘩売るようなレビューになりましたが、一人の人間の生の声ということで……。
アンチじゃない人で不満点を上げてる人をあまり多く見かけなかったので、そういう点では価値のあるレビューになったかな、とは思っています。
じゃ、ハイラルに戻ります。