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室井慎次 敗れざる者 ‐ 踊る大捜査線ニワカ勢だが、結構楽しめた(後半ネタバレ警告)

室井さぁん……どこ向かわれるんですか?

秋田だッ。

どこかに行こうとする友人に対して、こういうやり取りを大学生時代に遊びでやったことはありますが、TVドラマシリーズを見たことはないニワカ勢です。

かつて、ファイナルと銘打ち、「ハリウッドよ、これも映画だ」 とやや滑ったキャッチコピーの『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』 を観たくらい(レビュー記事あげてなかった)です。

今回も、その時映画をみたシリーズファンの友人と鑑賞してきました。

 


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熱き志を持つ刑事、青島との約束を果たせなかった室井慎次が、警視庁を定年前に退職、故郷の秋田へ帰郷します。携帯電波も届かない辺境の古民家を自力リフォームして、自給自足のスローライフをしつつ、犯罪被害者の孤児達を引き取って生活する様子を描いた作品です。派手なクライムアクションシーンはなく、スピンオフらしいスピンオフ作品という感じですが、背骨にあるのは、まさしく踊る大捜査線スピリッツ(ニワカが語る)、シリーズファンなら大興奮&大満足の出来と予想できます。

個人的は、登場人物ひとりひとりに隠された過去・事件が多層的に掘り出されあらわれるドラマが想像したよりも面白く、無骨で多くを語りたがらない室井慎次という男のセリフの少なさが、とても良かったです。また、平成雰囲気と言える、ドラマフォーマットそのままの、あまり予算規模が感じられない画作りが、いい意味でなんだか新鮮でした。

 

以下ネタバレあり。

 

定年前に警視庁を退職、秋田へ戻った室井慎次。

最初は、変わらず腐敗した組織=警視庁=テレビ業界、そういう皮肉が込められているのでは? なんて読んでましたが、そういうことはなさそう。

事件の始まりは、室井慎次の秋田の家の近くから発見される死体。

その死体は、かつて室井が担当した事件の犯人だった、という。最初は、室井のクールなキャラクターと、周囲のおちゃらけたトーンのやり取りが、ニワカの自分には全然受け入れにくく、真面目に観てええんかな? という感じでした。まあ、秋田犬が可愛いから許す、そんな温度感で鑑賞していました。

 

踊る大捜査線のフォーマットは、劇中同時進行的に事件が勃発して、やがて無関係同士だった事件と登場人物が繋がっていき、収束していくというもの、と思っていましたので、今回の事件のおこり・流れは、これまでとはまったく違うのね、と肩透かしを食らった印象でした。

 

ところが、過去の事件の因縁の相手、退職した警察との再会、保護している犯罪被害者の孤児達、閉鎖的な集落の人間達、そんな様々な問題が噴出していき、スピンオフとは言えども、派手なアクションシーンはないけれども、踊る大捜査線という屋台骨を強く感じました。

 

母親を殺された少年が、その犯人と相対するシーン。相手弁護士の無遠慮な態度、少年の独白シーンは、後半ややくどかった印象も否めなかったですが、とても感動的でした。

杏という少女の登場で、ぎこちなくなってしまう家族関係、なにか大きなエピソードがあって解決するのではなく、室井の普段と変わらない行動によって、大きく関係が好転していくのも良いと思いました。

副題回収のシーンも良かったです。

ところで、杏が秋田犬に対して「女の子なのに酷いよね」 というようなセリフの意図はなんだったんだろう? 男ばかりの環境で、お姫様のようにチヤホヤしてくれって意味?

 

今作では、青島は登場しませんでした(役者同士めちゃくちゃ仲悪いと聞いた)が、過去ドラマのシーンが挿入され、懐かしい面々が登場して、シリーズファンの友人はとてもテンションが上がったようです。

劇中、なんどもレインボーブリッジを封鎖せよ、から何度も引用される「封鎖できなかったがな」 が笑えるポイントなんだと思いますが、未視聴の僕は「出来なかったんだ?」 としか感じられず、未履修なのがもったいなく、悔しかったです。

ラストで小屋が燃えて、室井のコートが燃えるシーンで、あのコートが青島のモッズコートだったら、もっと印象的だったのでは、と思ってしまった僕は刺されるかもしれません。

 

個人的に気になる点は、かなり田舎の解像度が低い、ということです。

あんなふうに、中途半端に半分だけ米を精米するなんてしないし、害獣駆除もあんな風にバラけないでしょう。違和感あるシーンは結構多かったです。

 

一ヶ月後、後編となる生き続ける者が後悔されますが、アニメのスパイダーマンみたいな「うそだろ、ここで切るか?!」 みたいな、中途半端なことにはならず、ある程度ちゃんと終わっていながら、気になる伏線が張られているのが好印象です。

 

 

 

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