タイムループモノに駄作なし、というお約束がありますが、その中でも珠玉の作品でございました。
サマータイムレンダは、田中靖規による和歌山県和歌山市の離島を舞台としたSFサスペンス。作者はジョジョの奇妙な冒険の荒木飛呂彦氏の元アシスタントの経歴があるため、漫画版は演出面での影響を感じることができます。
今回はアニメ版の感想です(漫画版は途中までしか読めてません)。
ネタバレ有りです!!!!
サマータイムレンダの偉業のひとつに、人類が有史以来悩ませていた問題、「いかにして物語を破綻させることなく、スク水金髪少女を劇中出ずっぱりにするか」 を鮮やかに解決しています。いやーすごいですね! 傑作だ!
一方で、シナリオ面では、ラスト数分まで「これでハッピーエンドの感じで行くのかよ」 とヤキモキさせられました。
予想したラストは、喧嘩別れした主人公・慎平とヒロイン・潮が、慎平お手製のカレーを食べる、物語冒頭から張られていた伏線が回収され、めでたしめでたし、これにてFINしかない、と僕は思っていたのです。
いや、これでも慎平・ヒロイン、その他大勢にとっては、ちゃんとしたハッピーエンドです。南方兄弟も復活したし、ハイネのオリジナルも、キッショイ神主が道を外すことなく、二人ちゃんと天寿をまっとうすることができたのでしょう。
しかし、カレーを食べるエンドにおいては、劇中もっとも活躍したであろう影の潮は、「いなかったこと」 になってしまいます。
このことが、僕の中ではとても悲しい。この寂しさを余韻に、っていう演出なのかしら……。
僕の予想は裏切り、島に戻ってきたら一番最初に振る舞うであろう約束のカレーの描写はありませんでした。
そして、ラストシーンで、「たこ焼きをたらふく食わせる」 という約束を果たしてもらうぞ、というセリフがあり、二人はこんなやりとりあったっけ? なんて見合わせるのです。
この二人のやりとりは、オリジナルの潮の死後、コピーされて影となった潮と主人公の間でかわされた約束です。
本物とまったく同一の沼人間は、本物と同じという劇中のセリフの証明となったわけです。
影とオリジナルは同一であり、記憶も共有してる……
うおおおおおおおーーーー!!!! っと、脳が爆発したです。
このお話には、影潮以外にもたくさんの影が出てきますよね。
ラストシーンで、潮妹の澪と医者の息子の窓との告白シーンがありますが、なんだか希望が持てそうだったのは、冷静沈着な影澪が、慎平とは絶対脈はないだろうという冷静な判断、命を賭して窓が守ってくれた記憶が逆流していたからではないでしょうか。
南方兄弟の弟、龍之介もひづるの中にいたのは、転写された影です。彼の奮闘は、分岐されて新しくレンダリングされた未来の彼に引き継がれたのです。
花菱医院の院長である青銅の妻も影でした。ラストにおいては、すでに鬼籍に入っているんでしょうけど、影として生きた時間、二人の子供の成長を見守り、全てをなげうってでも一緒に生きたいと望んだ夫の愛を影から受け継ぎ、幸福のまま逝ったことでしょう。爺3人が笑い合ってるシーンを、思い出すとウルッと来ちゃうよ。
ハイネも、自分が全部の元凶として消えていってしまうのですが、オリジナルへと統合されたとすると、救いがあります。寂しさとは無縁となったと思います。
タイムループモノの中でも、最初から最後まで、完璧なシナリオに思いました。
いやーすごいですね! 傑作だ!