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今、必読の名著‐ファクトフルネスを読もう!

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お題「#おうち時間

例の感染病拡大による混乱、気の滅入るニュース、気分転換も出来ずに憂鬱な日々……、そんな時に一服の清涼剤となる本と出会いました。

ファクトフルネスは、今の世界を正しく読み取るためのきっかけとなる本です。今の世界を読み取るなんて、インターネットがあれば、そんなの簡単。本を読む前は、僕も自信満々でした。

 

最初に簡単な質問が設けられています。質問はこんな感じ。ファクトフルネスを読んでない人は、一緒に考えてみて。

質問 世界の1歳児で、なんらかの予防接種を受けている子供はどのくらいいる?
・A 20%
・B 50%
・C 80%

質問 いくらかでも電気が使える人は、世界にどのくらいいる?
・A 20%
・B 50%
・C 80%

このあとも何個も質問がでるんですけど、僕はこの2問を見て、「ははーん……こいつは全部答えはAだな!」と質問者の意図を読んだ気になり、あとは聞き流しました。この思考の中にも、本著で解説される、沢山の思い込みが紛れています。

ちなみに2つの質問の答えは、全部Cです。

 

この本で語られているデータ分析による本当の世界は、僕が思っているほど悪い世界ではありません。過去や現代の人々の努力により、世界は悪い方向ではなく、良い方向へとゆっくりと着実に進んでいる……という事実を教えてくれます。

 

どうして、僕たちは現実よりこの世界は酷い世界だ、どんどん悪くなっている、滅亡まで紙一重だ、なんて誤解してしまっているんでしょうか。

恐ろしいのは、この質問を答えた人は、僕のような一般人だけではなく、政治家や高学歴者、医者や有名企業重役、経済界の重鎮、活動家、ジャーナリストや学者なども含まれ、そのスコアは一般人と同等か、それ以下となっていることです。

本文中では、10個の質問をチンパンジーに選ばせたほうが、点数が良いと断言しています。つまり、人間は世界について、チンパンジー以下の知識しか持っていないのだと。

 

我々が知識不足だなんて、思ってもみませんでした。同じように、自分は正しい知識を持っていると考えている政治家や活動家、ジャーナリストが、世界について大切なことを決定し、情報発信をしているのです。

 

思い違いをどうしてしているのか、思い違いに気づけるようになろうと教えてくれるのが、ファクトフルネスという本です。この感想記事では、10個の章でかたられる、思い込みを誘発する人間の本能について、ウイルス感染拡大に紐つけて、いくつか述べていきたいと思います。 

 

分断本能

世界は2つのグループによって分断されている考える人間の本能です。

Q.世界には貧困層と呼ばれる人々が何%いますか?

という質問があります。僕の父が答えたのは50%。

世界の半分の人々が、電気や水道がなく、移動手段は自分の足、基礎的な学問を納められず、栄養失調になり、病気になれば病院にいくことができないという経済状況にあると考えているそうです。……僕はもっと悲観的でしたが。

では残りの50%は、裕福層となり電気・水道は使い放題、移動手段は車、船、飛行機。望めばいくらでも学ぶことができ、捨てるほど食料があり、保険が完備されている人達……となるんでしょうか。

冷静に考えるとそんなことはなく、貧困には段階があり、先に述べた貧困層は、データによると全世界の1割以下です。同じく1割が裕福層、残りの大多数が中間層……裕福でもないが貧しくもない層に属しています。ちなみにファクトフルネスが読めるような人たちは、ほとんどが裕福層に属します。そんな馬鹿な! 日本は貧しくなった! と思うかもしれませんけど、それは昔に比べてのことで、世界全体でみれば裕福です。

 

世界は、分断されていなくて、ゆっくりなめらかに移行している、というのが正しい見方です。しかし、人間は分断本能により対立構造に持ち込みがちになります。

裕福と貧困。男と女。政治家と一般人。マスコミと大衆。

 

老人と若者……どこからが老人で、どこからが若者なんでしょうか? 活動的な老人は存在しないのでしょうか?

健常者と保菌者……実際は保菌しているかグレーの人々が大半なのに、自分は絶対感染していないと思い込む人々。

 

ネガティブ本能

世の中を悲観的についつい見がちになってしまうという本能。最悪のケースを想定するのは、死と隣り合わせだった太古の昔には有効だったのかもしれません。しかし、テクノロジーの発展した現在においては、悲観主義の暴走がパニックを起こして大参事を起こすことも考えられます。

ニュースやSNSを、改めて見ると、良いニュースよりも悪いニュースのほうが多いことに気付きます。人間は悪いニュースのほうが、より知りたいと思うし、注意喚起したいという良心から拡散しがち。You Tubeのタイトルでも【悲報】といれると視聴率が伸びると言います。

これらの行動が悪いということではなく、人間にはそういう本能がある、ということを知っておくことが大事だんだと思います。悪いニュースを悪いと捉えるのではなく、どうしてこのニュースが発信されたのか、裏の意図まで考えるということ。

 

恐怖本能

人間は、なにか新しいものを怖がり、時に暴走させてしまいます。

 

食品添加物はすべて有害と考える人がいるそうです。自分が思い出したエピソードは、パンにはイーストフードと呼ばれるアルミニウム入りのパンをふっくらさせる添加物が含まれています。この添加物は、添加が許可されている以上、人が長期に摂取しても問題ないものと思われます。しかし、一部の人間によると、パン業界による献金や圧力によって事実を捻じ曲げ、利益を貪るために添加が許可されているものらしいです。イーストフードが添加されていないパンもあり、そのパンを反イーストフード派の人々は、汚染されていない正常な食べ物として奉っていたのですが、蓋をあけてみれば、イーストフードと似たような成分の異なる名前の食品添加物が入っていました。

同じように天然成分は絶対安全と考える人もいますけど、昔茶のしずくという天然成分が売りの石鹸が美容用品として流行りましたが、吸収性の良すぎる成分によってアレルギー反応が発症し、商品回収となりましたよね。

 

例のパンデミックにおいては、トイレットペーパーの枯渇や、27℃のお湯療法、キッチンハイター散布、河川敷の石がメルカリで飛ぶように売れるなど、数々のデマが流布しています。これらもちょっと考えれば、すこし情報を集めればデマと知れるのに、治療法の存在しない未知のウイルスの恐怖がそうさせたのでしょう。

 

パターン化本能

記事の冒頭で、「ははーん……こいつは全部答えはAだな!」と僕が先を読んでしまったのが、パターン化本能です。

 

この世のすべてのライブハウスでウイルス感染拡大している、と思い込む。

若者がウイルスをばらまいている、と思い込む。

すべての商品が商品棚から消えてしまう、と思い込む。

 

すべての物事がパターン化され、例外については考えなくなってしまう。

 

宿命本能

あの人たちはこういう人たちだから、変わりようがないという思い込みをさせるのが宿命本能です。

貧しい人たちは、学問を納めるチャンスが巡っても、それをフイにしてしまって、いつまでたっても貧しいままなんだ、と思い込んでしまう。

 

あの国の人たちの道徳観念は、いつまでたっても貧しいまま、永遠に我々とは交わることはない……と思い込んでしまう。

 

イタリアで、東洋系の人たちが、ウィルス感染者として暴力や排他の対象になってしまうニュース。

中国で、黒人の人が襲撃されているというニュース。

日本で、ウィルス感染者の家に、石が投げ込まれたというニュース。

 

これらのニュースを見聞きして、この国では例外だ、この国では日常だ、と勝手にラベリングしていませんか? 今でこそ日本は礼節の国だなんて言われていますが、戦前のモラルは酷かったと言いますし、この先もわかりません。絶対に変わらないと信じるより、いつかは変わっていくのかもしれない、と思えたことが、この章を読んで良かったことですね。

 

犯人捜し本能

元凶を探し出してしまうという本能です。それがわかったとして、なんになるというのでしょうか? 自分が悪くないと思いたいだけでは?

 

地球環境でやり玉にあがるのは、中国やインドなど人口の多い国です。グレタちゃんが、日本に興味があるといったとき、中国をどうして無視するの? と多くの人が思ったはず。

データによると、国全体レベルではなく、人一人あたりの温室効果ガスの排出量は、日本を含めた裕福な国が、中国などの倍の量を排出しています。要するに、排出量が多い国が悪いとする論点からすると、日本などの国が、もっと排出量を抑えなければならないのです。

こんな風に言うと、「我々が我慢して、車や電気を使うなというのか、貧しい時代に戻れと?!」と怒るかもしれませんけど、そう怒る口で、中国やインドなどにそれを強いているのか、と客観的事実に僕は恥ずかしい気持ちになりました。過去の時代、ガンガン温室効果ガスを排出しておき、先に発展してゴールしました、後進国は地球環境のために発展しないでね、とは虫が良すぎる。

 

地球環境を改善したいと思うなら、経済活動の抑制ではなく、温室効果ガスを排出しないような新しい技術の開発です。プラスチックストローを紙ストローにしておいて、プラスチックのコップはそのままではなく、分解されるプラスチックの開発にエールを贈るべきなんです。

 

感染拡大においては、予防やワクチン開発にリソースを割くべき。犯人探しは、我々の仕事ではありません。

 

まとめ

長い感想文になってしまいました。本当は10個の本能全部紹介したかった。

本に感化されすぎぃ! と思うかもしれませんけど、こういう見方もあるのか、と知れるだけでも、この本を読んで良かったです。

本への批判を入れるとすれば、著者はデータに基づき事実だけを述べ、誇張は避けると書いていますが、テスト結果が適当に選ばせたチンパンジーの採点より低いということから、人間の知能がチンパンジー以下とするのは、すこし狡い気がしました。これこそ誇張だ!

……どんだけ点数低かったこと気にしているんだ……。

まあ、今後はこの政治家はチンパンジー以下か、このニュース番組はチンパンジー以下なのか? と見下していこうと思います。

 

ちなみに、自分はオーディオブック版で読みました。オーディオブックだと11時間ほど。チンパンジー以下と侮られている読者のため、少々回りくどい表現、同じことの繰り返しが散見されるので、聞き流せるオーディオブックは自分に合っていました。キャンペーンで無料でしたし。でも、お金払ってもよい内容でした。

 

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