未だPC版で日本語がアンロックされていないサードパーソン・シューティングゲーム「CONTROL」。
追記:アンロックされています。
自分は非推奨の方法で、日本語をアンロックして約50時間でクリアしました。サイドミッションがいくつか残っていますが、満足しました。
ネタバレ含みますので、その点ご了承して読んでください。
レビュー要約
ゲームは斬新というより正統派と感じた。メトロイドや悪魔城シリーズのような2D探索アクションゲームを、ハイクオリティかつ硬派に3Dシューター化した作品。
ゲームプレイそのものの品質は高いが、シナリオは投げっぱなしで完成度はいまひとつ。設定、キャラクターや魅力的な小道具を活かしきれていないと感じた。ローカライズの品質の低さも、全体的完成度を下げてしまっている。
物語よりもゲームプレイを重要視する人向け。難易度が高めなので、歯ごたえのあるシューターゲームを求めている人なら満足できると思う。
レビュー詳細
ゲームレビューにあたり、前回の記事にも書いたとおり、ローカライズの質に難があります。
単純な翻訳のクオリティの低さ、UI表示がきちんと対応していない(字幕の切り替えが早すぎる、枠外からはみ出す)などの不具合によって、プレイ体験は損なわれてしまい、作品自体の完成度を下げてしまっています。ゲーム・オブ・ザ・イヤー候補にまでなった評価の高い作品なのに、とても勿体ないことになってしまっています。
ローカライズの問題を抜いてお話すると、ゲームプレイそのものは非常にレベルの高いものになっています。
陰謀論や超常現象をモチーフにした設定、グラフィック、カメラやプレイフィールは極上です。
海外レビューなどで、このゲームの斬新さを評価する論評が目立ちましたが、自分は新しさという点では評価しませんでした。
舞台となるオールデストハウスの中を、カードキーや特殊能力を獲得することによって進んでいくというゲームシステムは、メトロイドや悪魔城ドラキュラ、あるいはベイグラントストーリーそのものでしたし、真新しいものとは思いませんでした。
このゲームは、むしろオールドスクールで硬派なゲームだと感じました。
難易度が僕には結構高く感じました。特に序盤は、敵の攻撃を三度も食らえばゲームオーバーになってしまいます。
このゲームはRPGよりも、アクションゲームにドラマ要素を足したものに感じました。
レベルアップ(能力ポイント振り分け)による強化よりも、プレイヤースキルの方に比重が高く、進行に詰まり、サイドミッションをクリアして能力強化しようにも、どのミッションも総じて難しくて、何度もトライしなければならなかったという事がありました。
ゲームオーバーになると、直前の戦闘ではなく、長いロード時間を経てチェックポイントへ復帰、先程の戦闘の場所へマラソンするというのも、ゲームデザイン上のミスではなく、昔ながらのゲームの作りを世襲したものなんだと思いました。それが良いとは思いませんでしたけど。
苦労した分、ミッションクリアの嬉しさはひとしおです。
このゲームの評価ポイントは、古典的メトロヴァニアゲームをそのまま高品質な3Dシューターゲームにしているという点だと思いました。フィールドを駆け回る挙動、銃と超能力をシームレスに行き来するバトル、閉鎖空間でのカメラの自然な立ち回り。どれも高次元にあり、ストレスを感じません。
難を言えば、敵のバリエーションが少なく、後半能力が全てアンロックされてしまうと単調に感じてしまいました。敵のバリエーションに加えて、能力のスキルツリーにもう少しバリエーションやスペシャル技などあれば、飽きずに最後まで楽しむことができたのではないでしょうか。超能力にありがちな時間停止能力とか、透視能力で見えないところの敵を発見して狙撃など……。
一方でシナリオについては、今ひとつに感じました。
翻訳の下手さとストーリーテリングの複雑さでわかりにくいと感じますが、話のあらましは割と単純ですし、深い意味のある話とも思えません。ゲームがエンディングを迎えても、その多くが考察の余地もなく謎のままに終わってしまっていて、完成度については今ひとつに感じました。
ラストは盛り上がりに欠けていて、さあこれからラストバトルだ! という気持ちだったのに、唐突にエンディングを迎えてしまいました。まさか明確なラスボスが用意されておらず、通常敵ラッシュがラストバトルだなんて!
続編前提のシナリオのように感じてしまいました。
超常現象を巻き起こす変異アイテムやパワーオブジェクトは、日常的なアイテムが厳重に管理展示されている様を見て、デュシャンの泉などレディメイドアートのようなシュールさがとても魅力的でした。
特に勿体ないと感じたのは、登場キャラクター達です。
ゲームのシナリオは、ジェシーの独白から過去が語られるのですが、事実だけの具体的なエピソードに欠け、プレイヤーにはまったく思い入れが感じられませんでした。もう少しマルチメディアなどで、当事者から語られると心境に共感できたのでは。
最後まで弟に肉親への愛着がわかなかったし、助けたいという気持ちも出てこなかったです。強い目的意識がなく、指令をただやらされている感がつきまといました。
ポラリスは喋らないキャラクターで、おそらく北極星の名前から導き手=プレイヤーのことなんでしょうが、ずっと黒幕なのでは? と言う疑いがあり、感情移入できませんでした。ヒスに襲われるピンチも「ふーん……(鼻ホジホジ)」って感じ。
捜査局局員もユニークな連中だけど、最後まで信頼することができませんでした。一般スタッフは部署が違うと仲悪すぎで、常に上司の悪口を言っていて、全然気持ちが入っていきませんでした。
知性ある銃サービスウェポンも勿体ないと感じました。設定が空気。ただ便利な奇妙な銃でした。もっとジェシーに話しかけるとか、敵に奪われても自分で帰ってくるとか、そういう相棒感があれば愛着もわいたのに。
約50時間ずっと孤独な気持ちのゲームでした。
終盤、ジェシーはヒスの攻撃によって悪夢の中に閉じ込められるのですが、ここのシーンは良かったです。
新人として捜査局に入るという設定で、上司から使えねー、コネ採用などと罵詈雑言を浴びせられながら、雑務を延々とやらされるというシーンなんですけど、もういっそ、このシーンがゲームの冒頭だったら良かったのに、って思いました。
バカにされ、けなされながらも雑務をするジェシー。局長室へ届け物をしようとしたら、銃声が……。思わず銃をとってしまうと、ジェシーは新人から、いきなり局長に上り詰める。最初、能力を疑う局員達。ミッションをクリアするうちに、信頼され絆が生まれていく。下剋上、大逆転劇的な痛快さが生まれます。
やがて、ジェシーには隠蔽された過去の記憶があることを知る。実は弟がいて、自分は局長候補として育てられていたのだ……というふうなシナリオ展開だったら、自然だったのではないでしょうか。
シナリオ考察
間違いもあるまもしれませんが、シナリオを整理しておきましょう。
情報操作局という政府の秘密組織があり、ここは超常現象を巻き起こす変異アイテムやパワーオブジェクトを研究管理する組織です。組織を裏で操るのはボードと呼ばれる謎の上位存在(正体は明かされず)です。
操作局の局長は、代々ボードがパワーオブジェクトのサービスウェポンという知性ある銃を遣わして選定してきました。
17年前、スライドプロジェクターという異世界のポータルとなる変異アイテムが発見されます。その発見と封印に関わったのがジェシーとデュラン姉弟です。スライドプロジェクターのポータルから、やってきた思念生命体がヘドロンであり、ジェシーの頭に住んでいるポラリスもそうです。ジェシーとデュランは、操作局の局長になりうる高い能力を示したので、操作局は人材確保のため拉致をしようとします。結果、デュランは拉致されてしまい、ジェシーはポラリスの助けにより難を逃れます。
ジェシーはデュランを残して逃げてしまったことを後悔して、ポラリスと協力して弟探しをします。
情報操作局の所在地は、秘密組織なので探索は困難を極めます。ついに所在地を突き止めましたが、その時にはすでに弟の失踪から17年が経っていました。
操作局の中では、研究者のダーリング博士がヘドロンを研究。ヘドロンに乗っ取られてしまいます。
一方、局長のトレンチは、なぜかヘドロンを危険視して、スライドプロジェクターを使ってポータルを開放、ヒスを呼び込みます。ヒスは局員に取り付くと同時に、ジェシーの弟デュランに取り付きます。
トレンチは、自分のやったことが間違いであったことを認めて、情報局をロックダウン(閉鎖)して、事態を収拾しようとしますが、時すでに遅し。ヒスによって操作されたデュランによって殺害されます。
よくわからないのが、この時殺害に使われたのがサービスウェポンであることです。サービスウェポンはボードの眷属なのが、サービスウェポンはヒスの侵食を受けていたのでしょうか? 絵面を優先した結果で、深い考察はないのではないかと個人的には思っています。
自分の手足となるトレンチを失ったボードは、ヒスを封じる苦肉の策として、今までブロックしていたポラリスの追跡を受け入れて、オールデストハウスの位置を教えたのではないでしょうか? ジェシーも局長第7候補として身辺調査していた痕跡が劇中で示されますし、こりゃ一石二鳥だぜ、と。
トレンチがどうしてヘドロンを危険視したのかよくわかりませんが、おそらくトレンチはボードというよくわからない存在に牛耳られている情報操作局の状態が嫌だった。その上、ヘドロンというやつまでしゃしゃり出るのは辛抱たまらんわい、ということで共倒れを狙ったのではないでしょうか? ボードも、ヒス対ヘドロンで対消滅を狙ったようにも思えます。
DLCや次回作があるなら、ボードの正体と対決という感じでしょうか。