真・女神転生の最新作を難易度ノーマルで約62時間でクリアしました。
ネタバレなしの感想は、こちら。
このファーストインプレッションでは、絶賛と言っていいほどの評価に思えたかもしれません。
クリアしても、ゲームプレイとしては、概ね満足でした。
一方、シナリオに関しては、ネタバレで言えませんでしたが、当初から不満タラタラでした。
そもそも、前提として。
ロウとカオスの解釈が幼稚
メガテンにおいて、ロウ(天使)対カオス(悪魔)の構図は、善対悪の二元論ではないのが、僕の理解でした。
ロウは、全体主義的で秩序を重んじる。対して、カオスは個人主義的で混沌を好むスタンスの違いでしかなく、どちらもある意味正解でありながら、問題を抱えている。
しかし、これは4から感じていたのですが、5でも、ロウはほぼ善、カオスはほぼ悪という、幼稚な善悪二元論の戦いになってしまっているように感じました。
アブディエルも、ちょっとトゥが立ってるけど、劣勢のベテルなので、しゃーないって感じだし、なんか感じ悪いからカオス・ニュートラル陣営行きます、で良いのだろうか?
天津神がベテルを離脱したのは、日本と米国との関係に準えているんだろうけどさ。
舞台設定が上手くない
かつて、天使と悪魔が争い、現実の東京はダアト(魔界)化。悪魔の総大将であるルシファーが、創造主を倒し混沌の世界へとなりました。創造主は最後の奇跡に、結界の中にかつての東京を復活する奇跡をおこします。そこで人々は、天使や悪魔の存在を感知せず、平和に暮らしています。
この時点で、圧倒的に天使は善側なんですよね。だって、結界の中の東京は、僕たちが平和に暮らしている現代そのもの。ロウに進むか、カオスに進むかの異論を挟んで選択する余地がないんです。
僕なら、結界の中の東京は、現実世界とほぼそのまんまなんだけど、やたらと高圧的な天使が支配するディストピアとして描きます。そのほうがメタフィクションとして異様に映るし、たしかに天使のおかげで人類は生き延びた、しかし、これが人類にとっての幸福なのか? と疑問を抱かせることができます。
たとえば、快楽殺人犯に一家惨殺された人がいて、天使に復讐させてくれ、と訴える。しかし、天使は「ならぬ! 神の法により悔い改めた人間を裁くことはうぬらの裁量まからぬことである」 とかけんもほろろな対応で、闇落ちして逆に裁かれてしまうみたいな後味の悪いエピソードが作れそうじゃないですか。
もう一つの問題点は、カオスを支持する個人はいても、派閥が存在しないことです。
4にはかろうじてあったので、まだマシでしたが、5には創造主によって囲われた結界内にしか一般人はいないんです。ダアトでもたくましく生きる人達がいて、その中の敗者たちが、結界内に逃げてくるんだけど、生きづらさを覚えて、もう一度ダアトへ帰っていくエピソードとかあれば、どっちが人間にとって良いんだろうね、と葛藤を覚えたのではないでしょうか。
要するに、選択肢が無駄ァでクソ
僕がメガテンに期待したのは、心を鷲掴みにされて、思わず嗚咽が漏れそうな、どちらも正しく、狂気をはらんでいるようなギリギリの選択肢です。思い出補正もあるかもしれませんが、3にそれはありました。4、4FINALにはあまりありませんでした。
残念ながら、5にそれは皆無でした。
現代に生きる普通の感覚ならこれを選ぶよね、って選択肢(ロウ)と、常軌を逸脱した狂人の選択肢(カオス)の、僕にとって選ぶとしたら決まりきった意味のない2つの選択肢しかないのです。
ロウ、ニュートラル、カオスとエンディングが分岐するのなら、天使も悪魔も信用できず、中立へと向かいたい僕は、自分が思う選択肢ではなく、ロウ寄りにならないように、全然納得できない精神異常者みたいな選択肢を選ばなければならない(と思っていた)。
この時点で、ストーリーへの没入感はぜんぜん無かったです。
アンリアルな「いじめ」
序盤が終わると、樹島 サホリがいじめのターゲットになっているというエピソードがあります。このエピソードは、主人公が女子生徒を刺し貫くシーンのプロモーションを見てから、かなり期待していたんです。
何なんでしょうね……、この細田守監督の映画に出てきそうな記号的な薄っぺらい「いじめ」シーンは……。ちゃんといじめについて調べた? 悩んだ? フワッとしたイメージだけで脚本書いてない?
スクールカーストトップに君臨するタオの親友というポジション、あのルックスと性格で、おとなしく虐められてるってのがすっごい違和感。ミヤズがターゲットなら凡庸ですが、まだ理解できます。
僕なら、いじめのターゲットは、タオにします。学園のマドンナ、優等生であるタオですが、裏では気に食わないと思う生徒もいて、陰湿ないじめの対象であった。しかし、ベテルの聖女であるタオは、いじめっ子達を許した。汝、隣人を愛せってやつ。そんな態度にイジメっ子達は、次第にエスカレートしていき、傷害事件に発展します。
そんなタオを守ろうとしたのが、親友のサホリです。本人に、イジメっ子に毅然とした態度をしないと命が危ないと言いますが、本人は相手がいつか理解してくれると、態度を変えません。
そこで、サホリは天使に直談判して、タオを守ってくれるように願います。
しかし天使は、それが聖女の選択であり、試練なのだと対応してくれません。
ロウに頼っても、いじめという問題が解決しないのなら……。
なら、カオスに頼るしかありませんよね。
こうして、ラフムを呼び込むことになる、っていうシナリオだったら自然で、演出でのミスリードも噛ませれば意外性もあったのはないでしょうか。
親友のためにグロテスクな邪神と同化してしまい、友情のために袂をわかつ運命……。
あなたなら、いじめに対して、相手の善意を信じますか、それとも実力行使で戦いますか。
なかなかシビアな選択が作れたかもしれない、惜しい、あまりにも惜しすぎるエピソードでした。
ナホビノの神話解釈は良かった
一方で、終盤に明かされるナホビノの正体については心躍るものがありました。
唯一神が、自分の立場にとって変わられないように、神々から知恵を奪い、唯一神以外の神は悪魔へと落ちた。奪った知恵は楽園の樹になって知恵の実となった。蛇(ルシファー)がイブをそそのかして、人間は知恵の実を食べてしまった。以降、人間には神々の知恵が宿り、神々の知恵の宿る人間と悪魔が合一することで、世界を改変させることのできる神に成ることができる……それがナホビノ……聖書の楽園追放の物語をこのように解釈するとは!
しかし、シナリオで盛り返すと同時に、今度はゲームプレイに問題が発生します。
終盤のフィールドは、オープンフィールド性が高くなり、より自由な散策が可能なのですが、それはつまりレベルデザインがされていないということと同義です。
死ぬかもとわかっていても、相手のレベルわからないし、一度は挑まねばならない敵。どぎついレベル補正のせいで、理不尽な初見殺しのオンパレード。ゲームオーバー、長いダウンロード時間……。これは……楽しくないですよ。
神意で敵のレベルがフィールド上でもオーバーレイされる能力とかがあれば、まだ今は挑むときではない、探索を続けようと判断できるんですが……。
救済処置として、このころになるとレベルアップアイテムが大量にストックされているため、これを使ってサクッとレベル上げができます。このおかげで投げずに最後までプレイできたといえるんですが、これはゲームデザインとして優れているといえるんでしょうか。
中盤までのように、きっちりと自分の成長度合いに即した強敵とのギリギリのバトルを最後まで楽しみたかったです。プレイヤー側がセルフ調整して、丁度いい難易度にするというのは、なんだか製作者の仕事放棄に感じました。
完全版は絶対買わないぞ、出すならFINALでオナシャス!
個人的に今作のイベントシーンが少なく、ゲームプレイに偏ってる構成は好きでした。
しかし、もうちょっとキャラクター描写欲しかった面は否めません。ぜんぜん愛着わかなかった。キャラ多いわりに。だからこそ、要所要所でキャラクターを印象つけるような印象深い選択肢が必要だったんです。
これを言い出すと戦争になっちゃいますけど、僕はメガテンとペルソナどっちも好きですが、断然メガテン派だったんです。でも、今回の路線を続けるなら鞍替えしてしまいそう。僕には今はもう、メガテンよりもペルソナが扱っているテーマのほうが、クールで硬派なように感じます。それに明らかに予算が潤沢でリッチだし。
どこかで炎上したメディアが言うように、ハートがないペルソナとは言いませんが、個人的には今作には特にシナリオについて失望してしまいました。今作からメガテン始めるのには最適、という気持ちは今も変わりませんが、メガテンはこんなもんじゃないんだよー! という相反する気持ちでいっぱいです。
このシナリオに追加要素を加えた完全版には興味がありません。
ああ、久々に純度の高いRPGをプレイしている! と思えたゲームプレイは良かったので、シナリオを完全刷新したFINALバージョンを発売して欲しいです。