プライム・ビデオにて鑑賞。
結婚を機に足を洗った伝説の殺し屋が、最愛の妻の死の直後に、車を盗まれ、妻から贈られた犬を殺され、たった一人でロシアン・マフィアに復讐するアクション映画。
様式美と言えば聴こえは良いですが、ツッコミどころもある映画ですが、そんなこまけーことは良いんだよ! と頭を空っぽにして楽しめる映画でした。こんなふうに、キレることは現実では褒められたことではないのですが、キアヌ・リーブスさんのルックスと最高のアクションシーンで、とてもカッコイイ映画でした。
監督がマトリックスのスタントシーンを担当した方という訳で、キアヌ・リーブスさんとまたタッグを組んで、勝手もわかって、相性バッチリだったのでは。
キアヌ・リーブスさんといえば、家族の病気や親友の死などの不幸も見舞われていて、ジョン・ウィックの気持ちともシンクロしているように感じました。
野暮なのは承知で、ツッコミどころをいいますと、妻が一番悪いよな。ジョン・ウィックって殺し屋、悪いやつですよ。そんなやつに犬をわたすなよ、絶対過去の因縁で良い環境じゃない。最後で犬盗むし……犬が可愛そうです。ロシアン・マフィアのボスのツメの甘さ。さっさとジョン・ウィックを捉えた時、部下に任せずにさっさとトドメを刺せよ……ジョン・ウィックが伝説の殺し屋なのは、敵のツメの甘さが起因のような気がしてきました。
そういうシナリオ面での甘さがありましたが、それも観客がスカッさせるための演出として捉えました。我々が日頃溜め込んでいる鬱憤を、ジョン・ウィックが、銃とカンフーでメチャクチャに暴れて解消させてくれるのです。イキったボスの息子を、サクッと消した瞬間や、金庫を燃やした瞬間、スカッとしたはず(ボスの息子役の俳優さん、ゲームオブスローンズに出てましたね)。
息子を殺したあと、あれで手打ちにできたはずなのに、自分で破滅に突き進むように、ボスは友達の殺し屋マーカスを殺しました。あれも、観客にわかりやすく、ジョン・ウィックがボスを殺しても良い理由を伝えるためです。
あれで、ボスが最後まで逃げ惑うばかりだったら興ざめでしたが、ボスもボスなりのプライドがあり、きちんと立ち向かったのは良かった。おそらく、息子がジョンの犬を殺した瞬間から、こうなることが半ばわかっていたのかもしれません。ド派手は破滅を演出することが、悪党なりの矜持だったのかも。
ジョン・ウィックのやることは「正しい行い」と思っちゃだめですよ。映画の中だから通用することで、「面白かった」「スッキリした」「かっこよかった」と思っても、実生活で真似をして復讐を考えたり、暴力を振るったりしたら駄目です。ジョン・ウィックのように、もう二度と平穏な生活には戻れません。犯罪なら警察に届けて、嫌なことはツイッターで愚痴るくらいがちょうど良いんです。きっと。
実は昔、僕も隣人トラブルで、近所の頭のオカシイおじさんに、今は亡き犬を車で轢かれかけ(低速だったらしく、こめかみに軽いケガを負わされた)、リードを引いていた親父は殴られるということがありました。警察に届けても、軽犯罪ですぐに出てくるだろうし、相手は単身無職です。失うものも何もなく、家にカチコミに来られても困る。そのおじさんの中では、自分はジョン・ウィックみたいなやつになってるかもしれませんけど、現実にそれやったら駄目でしょう。村の寄り合いで親父を殴ったことを自慢していたらしいですよ。こんなふうにはなりたくありません。やりかえさず、我慢して話し合いで場を逃れた親父のほうがカッコイイです。