キャロルさん販売会で、一番手に入れたかったこけしです。今回の全3回シリーズ、ラストを飾っていただきます。
吉野誠二工人は、こけしを趣味とし、こけしの世界に魅了され、こけしのイベントを手伝うようになり、こけし工人の仕事を習うようになり、やがてこけしを作るようになって、定年を期に工人になってしまった……という経歴を持っているようです。
そのデビューは、清新な作風、力強い筆使い、迫力の面描をもって「10年に一度の逸材」として蒐集家からおおい歓迎されたとか。
この眼力。
このこけしの名前にある「石橋」とは「しゃっきょう」と読み、古くは能、世阿弥の時代には、猿楽や田楽に取り入れられていたそうです。石橋は歌舞伎にも取り入れられ、石橋物と呼ばれる作品群を形成するに至っているそうで、連獅子も石橋物の一つに数えられます。この題材選びも魅力のひとつかも知れませんね。
仏跡を訪ね歩いた寂昭法師(ワキ)は、中国の清涼山の麓へと辿り着いた。まさに仙境である。
更に、ここから山の中へは細く長い石橋がかかっており、その先は文殊菩薩の浄土であるという。法師は意を決し橋を渡ろうとするが、そこに現われた樵(前シテ)は、尋常な修行では渡る事は無理だから止めておくように諭し、暫く橋のたもとで待つがよいと言い残して消える。
ここまでが前段である。
中入に後見によって、舞台正面に一畳台と牡丹が据えられ、後段がはじまる。「乱序」という緊迫感溢れる特殊な囃子を打ち破るように獅子(後シテ)が躍り出、法師の目の前で舞台狭しと勇壮な舞を披露するのだ。これこそ文殊菩薩の霊験である。
小書(特殊演出)によっては、獅子が二体になることもある。この場合、頭の白い獅子と赤い獅子が現われ、前者は荘重に、後者は活発に動くのがならいである。前段を省略した半能として演じられることが多い。まことに目出度い、代表的な切能である。
”獅子が二体になることもある。この場合、頭の白い獅子と赤い獅子が現われ……”、これって完璧、連獅子じゃないですか。
このこけしには作品に登場する獅子、牡丹、胡蝶を描いています。
後頭部には大きなリボン(これも胡蝶をモチーフにしているのかな?)。
蝋引きがされていますが、光沢があまりないタイプ。
大きさは6寸。頭も胴も太いので、大きく見えます。
キャロルさんの販売時には3.5寸のタイプもありました。獅子の目の隈取色とパターンが異なる3種類があったような。自分はあまり見ない薄紫の隈取が面白いな、とこのこけしをチョイスしました。
胴体の絵付け。中央に大輪の牡丹。
左右を胡蝶が舞っています。オレンジとピンクの塗料って珍しい気がします。
黄色の塗料は一番紫外線に弱くて飛びやすいそうなのです。室内灯はしかたないですが、直射日光のあたらないところに飾り、おおいに楽しまさせて頂いております。
この記事を書いている時点で、キャロルさんのサイトでまだ少量購入可能です。おそらく、こちらではあまり購入できる機会がないと思います。気になった方は是非。
参照:肘折系
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