トイアートギャラリー×コムロタカヒロ / ダブルシンク[パール入りグレー成形・未塗装]
なんとオモチャのレビュー記事が前回から一ヶ月も空いてしまいました。
非常に難産でした、この記事。
スーパーフェスティバル大阪4でゲットしたオモチャの紹介ラストとなります。
これは、いわいる二次市場品(中古)です。
大きさ約27センチ。計7パーツ。
ソフビの良さは人それぞれあると思いますが、僕はもともとソフビを集めていない人間だったこともあり、ソフビ沼への入り方は少々特殊かもしれません。
僕がソフトビニール人形に惹かれる理由は、どこかアウトサイダー・アートの香りを感じるところなんです。つまり、学術的な芸術を習得していない人たちによる芸術性を感じるのです。もちろん、そう見えるだけで、実際は美術学校卒やデザイン学科など修めた人が手掛けられている場合もあります。原型や金型などを外注されている場合などは、専門職のサポートもあるでしょう。でも、僕にはソフビには垢抜けてなくて、純粋なメッセージ性を感じずにはいられないのです。
今回紹介するコムロタカヒロさんは、東京藝術大学出身の彫刻家です。芸術家を名乗るのに学歴が必要とは、僕は微塵も思いませんけれど、立派な来歴をもっておられます。ダブルシンクは、コムロさんの作品で一番欲しかったものです。
名前のダブルシンク(二重思考)とは、ジョージ・オーウェルの小説『1984年』に登場する思考能力のことです。とてもキャッチーなタイトルじゃないですか。……言葉だけ知っていて、本を読んだ事がなかったので、これほど時間が必要になりました。
ぶっちゃけ、本の内容と作品は深くリンクしている訳ではありません。僕が元から知っていたあらすじだけで十分でした。本のあとがきに、「英国で1984が見栄で読んだふりをする本の1位だった」と書いてあって、自分もそれで良かったじゃん、と思いました(笑)。
記事の頭が長くなりすぎなので、本の感想は記事の最後に、興味のある人だけ読んでください。
さて、重要なのはダブルシンクという概念です。
その意味は「相反し合う二つの意見を同時に持ち、それが矛盾し合うのを承知しながら双方ともに信奉すること」とあります。わかりにくいかもしれないけれど、人間生きていく上で、八方美人状態で矛盾を抱えながら生きていかなきゃいけないって事は、ディストピアでなくても現実世界でもままあることです。……個人的に案外身近に感じる概念なんです。
頭の悪い例かもしれませんけれど、社会人になって必ず聞く上司の愚痴を例えにしましょう。上司が「どんな些細なことでも報告して、勝手に行動するな」と言う一方で、「こんな事くらい自分で考えて行動しろ」と言う。矛盾していますが、そのまま歯向かっては、報告しなければならない/しなくていい、の線引のできない新入社員に言う上司と同レベルです。ぐっとこらえて、矛盾を飲み込む……こんな感じの理解ですけど、合ってますかね??
彼の頭は、矛盾する考えに分離しています。
いわれなき攻撃に晒され、皮膚はボロボロ、浮腫が現れています。
ゾンビのよう。
こめかみには銃弾の跡。
顎は半ば崩れ溶けています。
ちなみに、ここのカンチャクは動かせません。
無理にひねると破損するかも。
刈り上げくん。
身体には蜘蛛や虫がたかっています。
4本指。
テレビなどでは、身体的欠損は規制されます。ドラゴンボールのピッコロなどが例です。漫画で4本指で、アニメでは5本指。インディーズソフビにポピュラーなモチーフとして、双頭も同じく公共放送では、タブー視されますね。
独裁者政権によるマイノリティへの弾圧行為を連想します。
肘にはプロテクター。
エクストリームスポーツをやっている人なのかな?
ベルトのバックルは、コムロさんの作品「デモゴルゴン」の頭部にそっくり。
デモゴルゴンは悪魔の名前ですが、そういう意味でも彼が異端者であることが示唆されているのではないでしょうか。
膝にもプロテクターがあり、靴はハイカットのスニーカー。
本体は5パーツとシンプルな構成となっています。
しっかり可動するのは両腕のみ。
分割の位置が、とても自然な位置で継ぎ目が気になりません。
鉄球は2パーツ構成。
塗装版は金属製のチェーンで繋がっていますが、未塗装版では独立しています。
支配・隷属されていることを暗喩していると思われます。
砲丸投げ。
同じくトイアートギャラリープロデュースのケンストイズワークスさんのクロスボーンゾンビと並べて。
ビックサイズなソフビです。いわいるコンパニオンサイズです。
残念なことに、現行のダブルシンクは生産終了となっています。
現在、新しい原型で製作中の模様……、ニューバージョンは双頭が独立しているようですね。
小説1984の感想
パラレルワールドの地球を舞台にしています。地球は3つの国に分割されていて、そのどの国も共産主義から派生した強固な一党独裁政治によって治世が行われているある種のディストピアとなっています。
もっと未来的な世界(空飛ぶ車などが登場するなど)を想像していましたが、科学技術方面については、実際の1984年とあまり変わりなく(音声タイプライター以外)、イングソック(政治思考)や二重思考などの考え方に重きが置かれていて、思ってたのとは違いました。思考警察も、人を機械に繋いで実際ブレインストーミングすると思っていて、それを避けるのに2重思考が必要になるのかと思っていたら、全然ちがいました。
そんなわけで1部は非常に読むのに骨が折れました。二部からロマンス要素が出てきて、ラストまでは一気でした。
時代背景として、共産主義批判の部分もあるのでしょうけれど、一番感じたのは、客観性なくして幸福や不幸を測るのとても困難であるという事だと僕は思いました。小説の1984と比べると、現実はかなりマシのように思えますが、もしかしたらもっと良い世界があって、そこに住む人は、我々の生きる世界はずっと酷い生き方をしていると見えるのかもしれない。
- 作者: ジョージ・オーウェル,高橋和久
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2009/07/18
- メディア: ペーパーバック
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もう一つ投稿が遅くなった理由。MacのOSをアップグレードしたら、サファリでFlashが動かなくなりました……インストールし直したり、ブラウザ変えたりしましたが駄目で。はてなで写真のアップロードにFlashが使われるているんですが、他の方法もあるんですが、Flashのアップローダーが一番効率がよくて……明日はブラックパンサーを見に行く予定なんですが……ああ、もう3時ですよ。
マッキントッシュよ、次のビックブルーはお前だったのか!