あえて挑発的な記事タイトルにしましたが、本気で騙されたからなんです。
「ハリウッド版DASH村」と言うのは、「火星に一人取り残された宇宙飛行士が、残された数少ない物資でサバイバルしていく」というこの映画のあらすじを、確かに端的には表現していると思います。Twitterでも「見たら想像以上にDASH村だった」というツイートがあったので、「ああ、そういう感じなんだな」と安心して映画を見に行きました。
結果的に凄く裏切られました。内容は素晴らしい。本当に良い映画でした。もう途中から涙を禁じえませんでした。
以下、ネタバレがありますので、すでに見た人かネタバレ気にしない人だけ読み進めてください。
ハリウッド版DASH村と聞いて、僕が想像したのは「劇場版ドラえもん のび太の日本誕生(あるいは雲の王国)」でした。ひみつ道具(げんだいのちーかーら)で未開の地を自分の思い通りに圧倒する痛快な映画なのだろうな、と。
そんな気持ちでいたので、いきなり冒頭の「痛い」シーンに冷水をかけられた思いです。DASH村そのものは好きなTV番組です。「TVを見ない」ってカッコつけて言ってる僕ですが、居間でたまたまかかっていたら見ます。
けれど、あの感じとは全然違います。この映画とDASH村では農地開拓していることは同じでも、テーマが全然違います。
トム・ハンクスさん主演の無人島に一人残される「キャスト・アウェイ」という映画がありましたが、それの宇宙版と言った方が近しいです。
主人公は一人火星に取り残されて、助けが来るとは保証のない中、生き残っていくことを余儀なくされます。僕は趣味で山登りをしますが、ソロでテント泊した時、山の麓に街の灯りが見えるのに、そんな距離でさえ、凄まじい孤独感に苛まれた事があります。
映画では主人公は凄くタフで、狂気のような部分はあまり描かれていませんが、これはエンターテイメント的に面白おかしくするための演出で、僕はあえて描かれていない部分の孤独と絶望を思うと、自然と泣けてきました。
そんなの考えすぎだろ、と思うかもしれません。
もしも主人公と船長が恋仲だったり、前述のキャスト・アウェイのように地球に奥さんが残されているなどのラブ・ロマンス成分があったら、考えすぎだなと思いました。
けれど、この映画の主人公には、恋人がいるという描写もありません。地球には両親がいますが、「誰かのために生き残りたい」ではなくて、ただただ「生きている以上は生きる」ということを描こうとしたのだと思います。
火星の環境で冒頭ではムキムキだったのが、最後はガリガリになっていき、ローパーに積んだ放射性物質で被爆して、例え地球に戻ったとしても、重大な疾患を抱えてどれだけ寿命が残されているのか(これは妄想ですけどね)?
それでも彼は生きようとする。
その姿勢に感動します。
唯一ケチを付けるならラストシーンは、地球に降り立つ新芽にむかって「こんにちは」で終わる方が余韻があって良かったように思います。
火星で自分の命を繋ぐために栽培したジャガイモに、芽が出たことへの歓喜の「こんにちは」と地球環境の素晴らしさ・偉大さからくる「こんにちは」の対比は、深い情感を抱かせます。
その後の大学の講義シーンは、「成功者の成功の秘訣教えます」的なケッタイさを僕は感じてしまいました。
あと「指輪物語」の部分は、キャストの相乗効果で思わず笑ってしまいました。
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