16bitゲームスタイルのアクションRPGクロスコードの本編を約四十時間でクリアしました。サブクエストは特に後半はほとんど手付かずです。イヤ~面白かった! 途中、ダンジョンのパズルの量に辟易して、しばらく手付かずだったんですが、再び始めたら一気にラストまで遊んでしまいました。
個人・少人数制作のインディーゲームにしては……、という枕詞がありがちですが、このゲームは下手をすると大企業のゲームよりずっと演出面、シナリオ面が優れていました。今どき2Dドット絵のビジュアルで……と思うかもしてれませんが、このゲームの世界観は、とても素晴らしいものです。
パズルが嫌いでなく、長大でシナリオの良いRPGが好きだったら、かなりおすすめのゲームです。ニンテンドースイッチに移植が決定しているので、多くの人にプレイしてもらいたいタイトルです。
今回はネタバレ感想となりますので、嫌な方はこちらのファーストインプレッションレビューを参考にしてください。
血のかよったキャラクターたち
このゲームで一番関心したのはキャラクター造形です。
クロスワールドという未来のヴァーチャルリアリティMMORPG(正確には現実世界に実体を投影したゲームなんですが)をモチーフにしているのですが、ピクセルアートで描かれたキャラクターたちがとても人間臭くて良かったです。
エミリネーターというキャラクターは、とても元気の良い性格でこのゲームを飄々と楽しむのですが、現実の世界のほうではなにやら対人関係で問題を抱えている風です。「この世界が現実だったらいいのに」というのは、僕たちが一度は抱かずにはいられない幻想です。主人公のレアが、とある事情でレイドバトルから離脱を余儀なくされたとき、彼女があそこまで怒り猛ったのは、想像ですけど、彼女は現実世界でも同じような裏切りを体験したからではないでしょうか? 劇中で描かれない背景まで想像がめぐります。
レアがガクウムの介入により朱染の荒野へ飛ばされたときのシュナイダーとのエピソードが特にお気に入りです。後にエヴォターであることが判明しますが、彼はベテランプレイヤーで、そのときのレアより倍以上レベルが高く、強さに関してはものすごく頼もしい。しかし、このプレイグランドから抜け出せないとわかったとき見せる心の弱さ。でも、レアがシズカに拒絶されて、沈んでいたときに優しく寄り添う姿は実に感動的でした。ステータスには見えてこない、人間の弱さと強さ。このような深い人間性を描いたゲームはそう多くありません。
はっきり言って、こんなに現実世界は優しくないはずです。現実的に人間をコピーして生まれたAIに、人間は容赦しないでしょう。すくなくとも最初期は、法整備もできていないし、自分の記憶や秘密をもつ、自分がコントロールできない別個体なんて、恐ろしくて放置しておけないでしょう。でも、レアの正体が明かされ、ゲームを通じて知り合った仲間たちに協力と募り、決戦の地へ向かう道中、仲間たちがレアに語りかけます。このシーン、本当に涙がでそうでした。
自分の創作意欲すべてをぶつけられる環境を手に入れたガクウムは、しかし同時に悪事にその手を染めてしまうことで心が病んでしまいます。世界初のAIというレアを主人公として見出し、未だに終わりが実装されていないクロスワールドの最後を、自分のクリエイター人生全てをぶつけ、そして自らの人生に幕を下ろします。当初、青いアバターの姿は、プレイヤーに黒幕はサトシであるということをミスリードさせました。正体がガクウムとわかると、彼がサトシに……不治の病に侵されながらもエヴォタ-たちの未来のために生涯を賭した姿に……あこがれを抱いていたことを匂わせます。
クロスワールドそのものは凡ゲーかも……
クロスコードの舞台となるのは、架空のゲームクロスワールドなんですが、こちらのゲームは未完成状態。最後のダンジョンがまだ実装されていない状態です。
クロスコードのシナリオは良かったけど、クロスワールドのシナリオはほどんど空気でよくわかりませんでした。未来の人々が熱狂しているのは、インスタントマター(アバターやNPCを構成する物質)やヴァーチャル・リコシェット・プロジェクタイル(ボールなどゲームで武器として投影される映像)などの技術面と言えそうです。クソゲーとまではいわないけど、現実世界を舞台とする理由が、今の所ありません。オペレーショントラックウォーカーに登場する古代文明が実存し、プレイヤーを使って謎を解き、支配権を得ようとしている……という現実と虚構がクロスオーバーする展開を夢想しましたが……クロスオーバーというか、途中から別個の話って感じでしたね。
ゲームの中で二箇所ぐらい理不尽すぎて、虚脱感を覚えたパズルがあります。
最初のレビューにも書きましたが、一つは炎エレメントボールを当てて、爆弾を弾き返すというものです。どうして火気厳禁の爆弾に炎ボールを当てると反射するのか。
もう一つはラストダンジョンの写真の地点。水にボールを当てて、狙えるところで氷エレメントボールで水玉を氷に変え、波動ボールをあてて壁を通過させ、氷に当てて滑らせ、その先の炉で氷を溶かし、蒸気でスイッチをオンするというもの。謎を解いたあと、注意よくみると、ボールの部分が薄く波動色になっていますし、床にヒントとしてラインが描かれていますが、これをクリアするのに何度ゲームを中断したことか!
ミスリードの原因は、波動ボールは物質を通過するという原則に反して、なぜか氷には干渉するという物理現象を捻じ曲げたことです。水玉は普通に通過するんです。なんで?! シ・トロンじゃないけど、僕は激おこぷんぷん丸ですよ。
おそらくゼルダの伝説をすごくオマージュしていると思いますが、パズルに関してはクレバーじゃないです。なんどもゲームを断絶させた原因。
追加コンテンツについて
ゲームでは、エンディング分岐により、レアが破棄されるバットエンドと、レアが将来クロスワールドに戻ってくるハッピーエンドがあります。ハッピーエンドには、追加コンテンツにより、物語のその後があることが示唆されます。
いくつか個人的希望があります。
まず、唐突に離脱したシ・トロンについてです。おそらく追加コンテンツで彼が離脱した理由と、その後が明らかになるのではと考えています。エンディングで彼がクロスワールドに戻っていることがわかりますが、セリフの「彼が言っていてたとおりだ」の彼ってだれでしょうか?
僕の予想では、シ・トロンはクロスワールドのテストプレイヤーかデバッカーなのではないでしょうか? で、彼というのはその上司で、クロスワールドの環境を作っているスタッフです。CTRONって電話交換機に使われているOSの名称みたいです。なんとなく誰かと連絡しているイメージ。
もうひとりの黒幕であるシドウェルについて。
回想のなかで、かつてレアと同じように話すことができない女性とビジネスパートナーであったことが判明します(もしかしたら、公私ともパートナーの関係だったのかもしれません)。彼はおそらく故人であろう彼女の面影をレアに見出し、プレイヤーからエヴォタ-を作り出し、エヴォタ-を尋問して情報を聞き出して売りさばくというビジネスが崩壊しかかっているのを承知で、レアを逃し放置したままにしました。
根っからの悪人ではなく、彼にも葛藤があったということ。どうして法を犯してまでお金を得ようとするのでしょうか? その背景も明らかになると良いですね。
あとはエヴォタ-シュナイダーとのロマンス。
ヒロインの相手役としてルックスはいまいちな彼ですが、あのエピソードを見たあとでは外見なんて関係ない、すごくかっこいい奴だと思いました。何かしら進展あると面白いなぁ~。