確か、この漫画がすごい! を受賞していたと思うので、かなり有名だし面白いのだろうな、と思いつつも読んでいなかった漫画を読みました。
ミステリと言う勿れは、名探偵コナンばりの文字量を誇る漫画なんですけど、そのタイトルのとおり、これまでのミステリ(探偵もの)とはちょっと趣が違います。当てこすりではないでしょうけど、劇中のセリフに「真実がいつもひとつ、なんてことはない。真実は人の数だけある。ひとつなのは事実だけ」というのがあり、めっちゃ痺れました。誤認逮捕や誤審がおこるのは、刑事や判事の思う真実なだけであり、事実ではないってことなんですねぇ……。
主人公の大学生、久能整(くのう・ととのう)は、休日にはカレーを作るというのが趣味の、天然パーマの大学生。上のリンクの紹介で、彼女なし・友だちなしの大学生が主人公と書かれていますが、恋愛対象が彼女と断定するのは、ちょっとこのキャラクターを紹介するのに間違った表現と感じます。劇中でも、世の中ある性別には3種類あると良い、と久能本人が言うんですけど、彼自身が第三の性を象徴するキャラクターのようで、生まれて一度も人間を愛したこともなく、しかもその対象に頓着していないような気がします。バイセクシュアルというよりも、中性的な印象。
劇中は、彼が様々な事件に巻き込まれ、容疑者含む登場人物と事件と関係ないようなおしゃべりをずっと続けるという形になっていて、その会話が全部面白いんですね。登場人物はいろんな悩みや不満を抱えているんですけど、久能はカウンセリングをするみたいに、「僕はこう思うんですけど」と空気を読まずに緊迫した状況で滔々と自分の考えを語りだす。ちょっとシュールな状況が面白いんです。
会話の内容には、子育てや女性蔑視など、今すごく大切な問題を説教臭くなく取り扱っています。自分が特に良かったのをひとつだけピックアップすると、「いじめっ子は、いじめないと自分を保てない状況にあって、それは病気。いじめっ子に治療が必要」という内容。僕は、「いじめられる人間にも問題がある」という言葉が嫌いで、そういうセリフを言うヤツって、いじめてる側か傍観者がいうと思っています。自分に問題があるなら死ぬような真似はしないと思う。自分の問題でいじめを終わらせることができるなら、やっとるわ! って思う。
久能は、何かに付けて「欧米では」って言うんですけど、そんなに欧米のやり方が優れているのなら、どうして向こうは凶悪犯罪やら暴行事件とか多いんスかね……。こういう考えもあるのか! とは思いますけど、日本も捨てたもんじゃないと思うけどな。これは漫画の批判というより、すぐに日本終わってるとか言う人批判です。