今回手に入れたこけしは津軽系でも「盛秀型」と言われています。
津軽こけしの祖と言われる、盛秀太郎工人(1895-1986)は、知人の薦めで22歳の時、はじめてこけしを作ったそうです。こけしをよく見たことが無かった盛秀太郎工人は、本人の創意工夫を凝らした独自のこけしを誕生させ、今に伝わる「盛秀型」を創りだしたと言われています。
参照:朝日新聞デジタル:第123号「津軽こけし」 - 福島 - 地域
今回手に入れたこけしは、盛美津雄工人の一尺(約31センチ)の大きなもので、お名前に「盛」が付くので予想できると思いますが、盛秀太郎工人のお孫さんです。父親もこけし工人で、サラブレットですね。サラブレット故の苦悩もあったんでしょうねぇ。
当初より制作数が少ない上に、近年は体調を崩しがちになり、人気もあって入手困難な工人となってます。
……という凄いのを手に入れました。
今回の記事は前半をレビュー、後半をこけしを手に入れた三重県四日市の旅レポートです。
◯まず、何で欲しいのか
はい、ミロクロケットのモチーフなんですよ。
ミーハーでスミマセン。
本当は価値の分かる人が手にすべき逸品なんでしょう……。
インスタに軽はずみに購入したことをアップしたら、反応が凄くてビックリ!
購入する際も店長さんに、大切にしてね、と念を押されました。
とても気に入ってて、直射日光も当たらないようにしてますし、僕も少なくないこけしを手に入れて、幾つか色移りとかさせてしまって取り扱いも分かってきましたし、大切にします!
◯大きさ
堂々たる一尺(約31センチ)です。
こちらは新品ではなく、中古美品です。
平成9年5月とあるので、18年も前の作品です。こけしwikiを読むと作風がより祖父の作風に近くなっていく過渡期だったようですね。
◯全体
繊細にして大胆。
優美にして剛毅。
例え僕がミーハーでも、このこけしの凄まじさは何となく感じます。
胴のくびれから円錐状の独特の形状が面白いです。
ミロクロケットの形状が、ここまでモチーフとして写されているとは驚きです。
オング部分が末広がりなのは、単に安定性のためではなかったんですね。
◯細部
柔和な微笑み。
髪や顔の線描の黒に薄い紅が印象を柔らかくします。
アイヌ文様部分。
ロクロ引きの縞模様と遜色ないくらいキレのある線です。
一筆で、すっと描いてあるみたいです。
ねぷた絵。
少し左にバランスが傾くのは癖のようです。これも味ですね。
カッチリとしたアイコン的な達磨の顔ですが、髭が凄く細かく描き込まれています。
光の当て具合で、筆運びが推測できます。
この部分は輪郭を描いてから中を塗ってるみたいですね。
眉毛の力強い感じ、好きです!
◯ここから三重県四日市の旅レポート
遠くに、かの有名な四日市工業団地が見えますね。
旅の目的地は、このブログでも何度も紹介している、こけしを購入しているキャロルさんです。
いつもはネットショッピングしているのですが、今回紹介したような一部のこけしは店頭でしか販売されていないのです。個体差があるので、見比べて購入できるので、その方が良いと思います。
キャロルさんの開店時間まで、菰野町湯の山温泉へ行くことにしました(実は事前にSNSを通じて知り合った地元の方に色々と地元情報を教えて頂いていました)。
参照:アクアイグニス 湯の山温泉にある癒しと食の総合リゾート
まだ外構工事が途中でしたが、なかなか素敵な建物でした。
多分、嫌というほど言われてると思いますが……近代の有名建築家の作風をパクりまくってて、ちょっと知ってる人間だと元ネタがわかって笑えちゃうだろうな、と思いました。
けど、僕は好きです。地方の趣味の悪いデコラティブ建築見るよりはずっと良いです。ただ、僕みたいな奴と一緒に行くと、知ったかぶりがウザくて同行者は大変でしょうね!
伊東豊雄さんの多摩美大図書館っぽい。
多摩美術大学新図書館/伊東豊雄/architecturephoto.net
安藤忠雄さんの水の教会っぽい。
ミース・ファン・デル・ローエのバルセロナ・パビリオンっぽい?
ペーター・ベーレンスのAEGタービン工場が浮かび、アトリエ・ワンさんなんかも脳裏に。
AEGタービン工場 -ドイツ -Architecture //ヴォルフロッシュ
外構の感じは結構好きです。
池の水がブロックっぽくて倉俣史朗……をオマージュした中村拓志さんの作品か?
エントランス。
アーティストさんとコラボしてるみたいです。
内装。
手塚さんっぽい。
柱の垂直性を強調する感じは藤森照信さんっぽいですね。
- 作者: 藤森照信,二川幸夫,二川由夫,伊東豊雄
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ベンチはクライン・ダイサム・アーキテクツさんみたい。
コルビュジェのユニテの廊下を連想しました。
こんな感じでニヤニヤしながら見てました。
建築の本を買わなくなって久しいので、昔の記憶を掘り起こしながら、温泉そっちのけで楽しみました。
入浴料は大人600円です。これは価値あります!
温泉も良かったです。
ってか、北近江リゾート高いよ!
お昼は、よろゐ屋さんのイカ焼きと焼肉丼。
イカ焼きはイカまるまる一匹!
パラミタミュージアムで竹久夢二展と常設展示をみました。
ただ、前日名古屋の漫画喫茶で夜を明かしたのと、荷物が沢山で疲れがピークに。もっとしっかり見たかった……。
そんなこんなでキャロルさんへ。
ロックファッションと楽器、そしてこけしを取り扱っておられるお店です。
神社の隣で商店街のアーケード入って直ぐの所にあります。
公式サイトの写真の印象と少し違った(アーケードの中とは思ってなかった)ので、スマホのナビが無ければ辿りつけたかどうか……。
カウンターの上に、ズラリとこけしを並べてもらい、微妙に異なるカタチ、絵付けを吟味しました。並べると一目超然、顔のカタチが丸かったり、細長かったり、胴の太さも違ったりで手仕事なんだなぁとしみじみ思いました。
店長さんにも色々とお話をお聞かせ願いました。
興味深かったのは、こけし工人の年齢層の話。年配と若手の二極化されているんですってね。現在はこけし第3次ブームらしいのですが、需要の割に生産数が少ないのは、前回のブームの終焉と共に、こけしでは食べていけない工人が多く出て、その時の苦い記憶がありなかなか専業にできないそうです。
そう、ソフビ作家さんと同じく、こけし工人もお勤めしながら休日に制作を当てている人も多いみたいなんですね。
また、伝統工芸としての側面として、愛好家の見る目は厳しい物があるらしく、掛かる重圧は凄まじいものがあるようです。自分みたいな、よく知らない人間からしたら、自由にやっても良いのになって思うんですけど、そうも行かないんでしょうね。
でも、それこそ盛秀型は、自由そのものだった訳でしょうし、革新のない伝統は廃れるだけじゃないかなぁ、なんてナマイキにも思ってしまいました。
おじいちゃんなんで、受注したこと忘れてたって事もあるみたいですw
四日市は、電車で行ってみると滋賀からでもアクセス良かったので、また暖かくなったら行きたいと思います。