PCにてフリーゲームとしては出色の完成度と面白さを誇っていた「洞窟物語」。
その後、海外での評価からコンシューマ機にも移植されました。
僕は今でこそ、マインクラフトでPCでゲームを遊ぶことに抵抗ありませんが、高難易度と聞いていたこともあり、3DSで購入して遊びました。もともとフリーゲームだったにも関わらず、とんでもないボリュームと、ノスタルジーを感じさせるピクセルアートに反してコアで悲劇的なストーリーにすっかりハマった覚えがあります。「ひよこモード」で遊んでいたのに、クリアはできませんでした……。
今回紹介するのは、そんな洞窟物語をほぼ一人で開発した開発室ピクセルさんの初商業作品「ケロブラスター」iOS版です。
「洞窟物語」と同じく、横スクロールアクションゲームとなります。
ちなみに、このケロブラスターも目当ての一つとしてインデーズゲーム見本市のビットサミットに出掛けたのですが、出展されていたのかいないのか、アングラな雰囲気にあてられたのか、発見できず試遊できませんでした。
◯スタート画面がチュートリアルとなっていている
これがスタート画面。
「はじめる」のボタンもなく、主人公と思わしき直立2足歩行のカエルを画面下のUIで操作します。右と左のボタンとジャンプはわかるのですが、「ショット」のボタンが見られぬカタチになっています。
操作方法は、左上の「?」ボタンを押すとわかります。
「ショット」は、フリックすることで、右上左の3方向に固定された状態で、手に持った銃で攻撃します。後ろに進みながら前方向を攻撃することができるということです。
このUIが非常に秀逸でして、自動車のマニュアルシフトのように、頭のなかでコクコクッとレバーが入った感じを幻覚するぐらい、いい感じなのです。
滋味だけど、コレ以外にないってくらいタッチスクリーンの操作として利に適っていると思いました。
このゲームの素晴らしさは、レトロテイストのドット絵や音楽、演出、ストーリーなど多く上げることができますが、このUIことがキモなのだと思います。
多くのiOSゲームが、物理キーを備えたゲーム機で遊んだほうが快適で楽しいと思えるのに対して、ケロブラスターは、タッチスクリーンで遊んでもストレスないどころか、触っていてとても気持ちいい。ゲーム開発に何十倍、何百倍もお金使っている企業連中は何をしているのか。
ケロブラスターに良く似たUIを持っているゲームもありますが、他のゲームジャンルに置いても、タッチスクリーンに置いてのユーザーインターフェイスの解はなにか? を真剣に考えているゲームは少ないように改めて思いました。
◯スタート画面が意味しているモノ
スタート画面の敵らしき黒いモノを片付けると、タイトルロゴに色が付き、電話が鳴ります。
この敵は、しばらくゲームを起動しないでいると、また増殖します。
この事から、この敵を消すことが主人公の仕事なのでは? と推測できます。敵の退治と共に鳴り出す電話が、主人公を監視している上部の存在を示唆しているのではないでしょうか。
そして、何も語らない主人公。昔のRPGに多かった物言わぬ主人公のオマージュを感じさせ、また主人公の勤勉さを匂わせているように思いました。
◯演出とステージ設計の巧みさ
寸劇じみたデモが開始します。
言葉は1、2センテンスの短いやりとり。謎めいたストーリー。目的もわからぬまま、広陵とした世界へワープします。
仕事に疑問を投げかけないのが社畜の流儀か。
最初は体力は2つ、武器のブラスターも1つしかありませんが、敵や障害物を破壊し、コインを集めることで、パワーアップさせることができます。
また、ステージの最後のボスを倒すことで、新しいブラスターを入手することができます。
コインの入手が少ない序盤は、ステージをクリアし、ボスを倒すことで入手できる新しい武器がモチベーションとなります。中盤からは難易度が上がり、手応えを感じさせるものの、一度に手に入るコインの単価が増え溜まりやすくなるので、パワーアップが容易となり、大きくグレードアップするブラスターが楽しみで先に進みたくなります。
◯日本のお・も・て・な・しとは
少なくとも、ああ言う場で綺麗な女性が「おもてなししまっせー! ウチの国の美点ですがなー!!」と言いふらすようなものが「日本のおもてなし」だと僕は思いません。
金にモノ言わせて、街の区画を整備し新しい施設を建造し、その成果を喧騒する。そんな差し出がましいモノが、おもてなしである訳がない。
どこかで読んだか聞いたかした覚えがあるのですが、茶人の千利休が、大事な客を茶室でもてなす際に、弟子に「今日のお客さまは、大変繊細な方だから、特におもてなす準備をしなさい」と指示しました。
弟子はいつもより念入りに、茶室までの道のりの飛び石の上の葉っぱを綺麗に掃除しました。
それを見た利休は弟子を叱りつけ、掃除した葉っぱを飛び石の上に、再び散らします。そして、怒った理由を述べます。
「今日のお客さまは、大変繊細な方と言っただろう。こんなに一生懸命掃除したところを見せてしまっては、恐縮してしまってくつろげない。相手の立場に立ってもてなすのが、心尽くしというものだ」・・・的な事を言ったような、言わなかったような。
ケロブラスターに話を戻すと、このゲームはお金のかかった美麗ムービーもないし、豪華声優陣が声を吹き込んでいる訳でもありません。しかしながら、ユーザーインターフェイスという基本格子の部分で、プレイヤーがストレスなく遊べるように心を砕いている。開発に幾ら使ったとか、わかりやすく苦労は語り難い部分に力を注いでいる感じがします。その点において、実に古き良き日本らしいと思いました。
パッと見の派手さで購入意欲を刺激する商法が横行する一方で、このようなゲームが日本ばかりではなく、海外でも評価されているのがとても誇らしく思いました。