バックパックで背負う荷物の中で、大きな比重を占め、尚且つ無くてはならないもの……それは「水」です。
人間が一日に必要な水の量は、登山の場合、食物中の水分も含めて1.5リットル程と言われているそうです。1泊2日の山行なら、単純計算3リットル! 重量にして3キロとなります(個人的には、丸々2日間、山に居る訳ではないので、2.5リットルあれば十分かな、と思っています)。
安全な水場が確保されているのなら、現地調達で荷を軽くするのも手段の一つです。しかし、山によっては水場のないところもありますし、自然環境ですから、常に同じ状態であるという保証はありません。
そこで携帯浄水器や薬品などを持つ訳です。
特にセイシェルという携帯浄水器は、ウルトラライトハイキングの本や有名ブロガーさんたちが紹介しているので、日本でも有名だと思います。性能そのものも、水に溶け込んだ有害な金属や放射性物質を除去できるという他の浄水器には無い特色を持ちます。
ですが、僕は天邪鬼なのです。
どうせ買うのなら、まだあまり紹介のされていない製品を使いたい。
それに、仮にセイシェルが必要な放射能なんかに汚染されているような状況で山に登ることはないだろうと思いました。もう一つ加えると、セイシェルのフィルター寿命とか、嵩張りや重さ、値段が気になりました。
今回紹介するソーヤー・ミニは、まず値段がセイシェルの約半分です。重さは本体が実測47グラム。付属の水筒を含めても70グラムを越えません。
水に溶け込んだ金属や放射性物質は除去できませんが、微生物や病原体の除去率は引けをとりません(細菌よりも微細なウィルスは除去できない)。
素晴らしいのは耐久性です。
最大濾過量は100,000ガロン(=約38万リットル)とセイシェルとほぼ変わらないものの(2017/7/23訂正:セイシェルの約100倍の耐久性があります)、セイシェルなどの交換式フィルターを持つ浄水器は、フィルターそのものの耐久性が低いので、水を逆流させて目詰りを取り除くことが出来ませんが、ソーヤー・ミニは可能です。記事中に紹介しますが、付属のポンプでフィルターを掃除する事ができるので、少々のゴミが目詰まりしても洗浄して再び使う事ができます。
◯セット内容と実測重量
左から
フィルター本体:47グラム(*使用後計測、うろ覚えだけれど、乾燥重量はもっと軽量だったような気がします)
洗浄用ポンプ:34グラム(僕の場合、家で使うので持って歩かない)
ストロー:6グラム(水場の水を直接汲み上げて飲む場合使用する)
水筒:15グラム(後述しますが、これだと水源から直接、水を汲むのには適しません。水汲み用にカップかバケツを用意するか、ペットボトルに変更した方が使いやすいと思います)
◯水場選び
ソーヤー・ミニは、細菌よりも微細なウィルスは除去できないので、いくら浄水器でも過信はできません。
被災地や難民キャンプ、上水道が整備できていない地域などで使用実績があるののの、まずは水場選びが必要かと思います。
僕は、精神的なモノで腹痛が発生してしまうタチなので、水源そのものが”安全そうな感じ”をしていて欲しいのです。
具体的に言うと、最低限、流れている水である事です。湧き水なら最高。モチロン、危機的状況でしたら、その範疇ではありません。
◯使用方法1:付属の水筒を使う場合
この製品は、ペットボトル等のキャップの溝が付いているので、いろいろな製品に付ける事ができます(全てのペットボトルに取り付けられる訳ではない)。
まず、水源から水を汲みます。
付属のパウチ型水筒だと、水源に沈めても全然水が入ってきません。
写真のように、カップやバケツなどで、水をすくって注ぐと楽です。
水源がそれなりに深くて、一気に水を汲み取りたい時は、ペットボトルを使うといいです。炭酸飲料の硬い容器だと、浄水する時に絞るのが大変なので、「いろはす」などの柔らかいペットボトルを使うと特に良いと思います。軽いし、つぶしてしまえば省スペースですし。
後からフィルター洗浄できるので、目詰まり=寿命が縮んでしまう交換フィルター式携帯浄水器と違い、大きなゴミを濾すために、バンダナを被せたりなどは、しなくてもいいんじゃないかと思っています。手で取り除けるゴミは取るとしてもね。
水が入ったら、キャップするようにフィルター本体を取付ます。
次に、中の水を絞り出すだけです。
キチンと圧力をかけないと濾過されません。
試用しないまま、ゴールデンウィーク中のテント泊でいきなり使った時は、硬いペットボトルを使ったため、難儀しました。
この辺りの記録は、次回以降の記事にて書きたいと思います。
以上で、プラティパスの中の水は一応、飲める水になっているという事になっています。
実際に使用してみて、煮沸無しでも飲みましたが、ニオイは完全には取れず、川のニオイがしますし、硬水のようなエグミがありました(多分、硬水だったのでしょう)。
でも、喉が乾くと、美味しく飲む事ができましたし、お腹も壊しませんでした。後は慣れかと思いました。
◯使用方法2:ストローを使う場合
取り付けてこのまま吸引します。
モチロン、ストローが水源に付くようにです。
◯フィルター洗浄方法
必ず、水道水などの綺麗な水を使います。
2017/07/10修正:コメントでご指摘いただきましたが、洗浄は水道水直接使用は不可との事。なので、水道水を使う場合も、一度ソーヤーミニで濾過した水を使ってください。参照‐公式サイト
ポンプ(針のない注射器)で綺麗な水を吸い上げ、フィルターの飲み口にポンプの先を押し当て、ポンプの中の水を注入します。
何度も繰り返し、洗浄します。
◯まとめ
自分のお腹が精神的に弱かったので、中々、踏み出せなかった製品でした。
ソーヤー自体の存在そのものは、バックパッカーエディターチョイスを受賞したことで知っていたのですが、セット内容が充実している反面、価格がセイシェルと変わらなかったので、購入できずにいました。
今回、安価でより軽量なモデルが登場したので、購入に踏み切りました。
実際のテント泊でも使用しましたが、水が無いと、凄く荷が軽くなります。
現地で、もしかしたら水が確保できないかも、というドキドキ感もいい刺激になるかも(笑)。
紹介したソーヤー・ミニは、本体そのものも軽量です。
水場の水が枯れているかも知れない時や、存在があやふやな時など、必要最低限の水は登山口から担いで、フィルターも一応持っていくという場合でも、重量的に負担になりません。
僕は、エマージェンシーとして、どの山にも持って行こうと思います。
また、アウトドア用途以外でも、もしもの時のためにも、一つ家にあると心強いと感じました。その場合はセイシェルの方がより安心かな。
公式サイト→ソーヤー浄水器・SAWYER正規代理店/UPI OUTDOOR PRODUCTS
山での使用レポ