
先日の夜勤の帰りに、店前に新しい限定メニューののぼりが見えたので、明日の夜勤前に食べに行こうと思いました。
次の日、予定通りに日付が変わる少し時間に店に向かいます。
この時間帯、いつもは若さを持て余したヤングメン達が、誘虫灯に群がるように駐車場にたむろっているのですが、珍しくガラガラで「ラッキー!」 と思うと同時に、別宇宙に紛れてしまったかのような居心地の悪さを感じました。
新メニューを確認すると、「プレミアム醤油とんこつラーメン」。
あれ? 似たようなメニューが通常メニューに無かったっけ? と首を傾げつつ、入店しようとすると、同時に男女のカップルが店から出てくるところでした。
男女共長身でスラリとしたモデル体型、茶髪に日に焼けた肌。全身ハイブランドのゴテゴテとした共通のファッション。何気なく視線をおくると、相手も自分を無遠慮に見てきます。知り合いか? いや、こんな格好するやつ知り合いにいないぞ? と訝しがると、相手はなぜか笑みが浮かべながら、僕とすれ違います。
んん?!!! 思わず自分の格好を確認します。
いや、社会の窓は空いてません。
作業服の上下に、微妙にシミのある汚いダウンジャケット。むしろこの店の完璧なドレスコードです。
釈然としないまま、食券で限定メニューを購入、席につきます。
ここでも違和感を感じます。
なぜか店員に覇気がないのです。
いつもは席を案内しますし、席につく前に食券を預かりに来る勢いです。
空席の目立つ店内は、寂しげで、空気が淀んでいる気がします。
スタッフの数は十分足りているはずですが、水を取りにいって再度着席しても、スタッフの人たちはチンタラ持ち場を離れず、見かねたのかリーダーらしき人が「〇〇さん、行って」 と声にします。
言われた人は、それでものっそりと自分の仕事が一段落するまでワンテンポの遅れ、たっぷり時間をかけて手を拭いて、ようやく自分のところへ。
早く食わせろ! と思うよりも、なんか妙だな、変だな、という気持ちが先行します。
いつもの「硬め、普通、薄め」 でオーダーし、着丼。
ラーメンの見た目もなんだか具材にインパクトに欠け、覇気がないように感じられます。

スープを一口。
煮干しの効いた、とても滋味深いスープでした。
薄めのオーダーにマッチしているように思います。
ジャンキーさは鳴りを潜め、とても優しい味。

麺は中太で、プリプリシコシコとした食感。硬めにしてよかった。
具材はなんだかスープにマッチしていないような気がします。
いつもの期間限定メニューは、結構具材が凝ってるんで、これで通常メニューよりも値段が高いのはちょっとコスパ悪いかな? 美味いけど。
特にワカメの異物感。
なんだか、さっきのカップルの笑みが脳裏によぎります。
カウンターにあるサービス券の利用方法を見ていて、プレミアム醤油とんこつラーメンは、東北の方の通常メニューと知りました。
既視感の正体はこれかぁ。
続いて、年末のバイト募集の張り紙を見つけて、深夜帯時給が通常1500円のところ、大晦日と年始は+500円の2000円と書いてあります。
へぇ! めっちゃ儲かりますね!
ははぁ……合点がついたぜ、要するにこの高額時給を見て、やる気を失ったんだな……。
……いや、待て。
そうじゃない。
なら、今日の店のガラガラ具合はなんなんだ……。
駐車場のガラガラ具合。
店を出ていくカップルの笑み。
覇気のないスタッフ達。
店内のどこか淀んだ空気。
まるで仲間外れのようなワカメの異物感。
脳裏に浮かぶ情景が、パズルのピースのように脳裏に組み上がっていき、ハッとします。
そうか!!!!
今日はクリスマス・イブじゃん。
……な、なんてことだ。
あのカップル、クリスマスも頑張って働くスタッフを嘲笑し、こんな日も単身働く戦士を見下しに来たのか!!!
それを肴にして、この性夜を盛り上がろうってのか!!!!!
ち、畜生!!!
なんて連中だ!
あんなに趣味の悪い金持ちアピールした服着てるなら、それに相応しいオシャンティーなレストランとかで食事すればいいじゃんか!
でも、僕は知っています。
自分は毎年、クリスマスはブログ更新をサボらないようにしています。
毎年クリボッチな自分を恥じてないし、自分は知ってるんです。
こういう日は、いつもより閲覧数が増えるんです。
つまり!
リアル世界から痕跡を隠し、地下に潜って連絡を絶ち、周りから「あいつ忙しいのかな? リア充してんのかな?」 という状態をつくり、実際は暇を持て余して、こんな辺境のブログを読みにきている、観測されなければリア充か非リア充どっちの状態も同時に存在している「シュレディンガーのクリボッチ」 がいることを!
そんな連中よりも、クリスマスを労働するスタッフの皆さん、カウンターで一人ラーメンを啜る人たちはずっとカッコいいよ!! 最前線で戦ってるよ!
僕はラーメンのスープを完飲して、「同志」 と書いて「とも」 と読む人達にむけて、心の中で「Merry Christmas」 と書いて「ごちそうさまでした」 と言って店を出ていきました。
以上レポっす。
チラシの裏スンマセン。
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