スリーエーのデザイナーでもある、アシュレイ・ウッドさんの初の邦訳コミックが、Amazonから届きました。何で2冊並んでいるかと言いますと、スリーエーにハマりだした頃、アシュレイ・ウッドさんの本を数冊購入し、その中にZvRの原書もあったので、並べてレビューします。
この本の売れ行き次第で、今後のアシュレイ・ウッド本が出版されるか否かの一つの指標となるようなので、ファンの方は是非買いましょうね!!
ところで、地味に訳者が、金原瑞人さんですね。彼の訳した児童文学とかファンタジー小説とか、沢山読んでいた時期があります。訳者として大御所のイメージがあるので、ちょっとビックリしました。
◯装丁
【原書:上の写真右】
いかにも洋書らしいペーパーバックの本です。表面は梨地のコートがかかっていて、安っぽさはありません。本体の紙質は画集などに使われる厚手の光沢のある物が使われています。ずっしりとしています。
【邦訳:上の写真左】
ソフトカバー製です。普通のコミックに使われる薄手のつるつるのカバーがかけられています。中身もやはり、日本のコミック本のような薄手のマットな紙質の物が使われています。軽いです。
◯比べてみて
原書はアート本で、邦訳はコミック本という体裁でつくられているように感じます。原書と同じスタイルで出版すると、おそらく、価格は現在の1.5〜2倍くらい高くついたのではないでしょうか。
【上:邦訳 下:原書】
邦訳の監修・解説に携われた、カドゥさんが更新しておられるワロウォロレによると、原書では、一部正確に色が出なかった部分があり、今回の邦訳では、正確に再現されているそうです。並べてみると、原書は赤みが強く感じ、邦訳版は緑が強く感じられます。色彩の再現度は、より正確な方が良いに決まっていますが、原書の紙のほうが線がシャープに映るので、紙はこちらの方が良かったなあ、と思いました。
◯おもちゃとしてまだ見ぬキャラたち
スリーエーのおもちゃを集めていると、この本の中にそのキャラクター(人もロボットも含む)の原型を見つけ、ニヤリとしてしまいます。中には、是非コイツを出して欲しいな、と思うものもいます。
写真の頭部が砲台になったバーティー風のロボットとか最高だと思うのですが! 人間とのサイズ比較すると、めちゃくちゃ全高が高いようですが・・・。
◯ストーリーについて(ネタバレ有り!!!!)
英語のテストは選択問題のみをシックスセンスで答えて赤点をとっていた僕ですから、原書を最初に読んだときは、絵とタイトルから内容を推測する他ありませんでした。そこから読み取れた内容は、ゾンビとロボットが戦っている、という、そのまんまな内容でした。邦訳を読んでみると、きちんとしたテーマがあることがわかります。
それは人間の「愚」が描かれているように思いました。人とゾンビの話なら、人の中にヒーロー役の善人がいて、世界を救済するのでしょうが、ロボットが中にはいることで、無慈悲な救いのないお話となってしまいました。ロボットは人間によって使役される存在という固定概念がありましたが、このお話では、人にもゾンビにも属さない第三勢力です(人間寄りのロボットもいましたが)。
登場人物一人一人に強いクセがあります。ストーリーはクリス・リアルさんという方が手がけられていますが、アシュレイ・ウッドさんおなじみのダークで野蛮な感じを強く感じます。
語られることが無かったいくつかの謎がありますが、その謎が物語に深みを与えているような気がします。中でもウイルスは、どこからもたらされたのか? という謎は、冒頭のタイムトンネルを通しての過去と未来の無限の循環(ループ)が、ラストの展開を見ると分かるように、人間の愚行と業は尽きること無いループである事が示唆されているような気がします。