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映画はたらく細胞‐マーベルの屍を乗り越えた真のヒーロー映画

年末にはたらく細胞の映画を見てきました。

コミック未読でしたが、めちゃくちゃおもしろかったです。

近年、欧米圏で吹き荒れたポリコレ旋風によってお目覚め映画が増えてしまい、その「正しい」主張とは裏腹に、作品の品質が低下が著しいです。

もちろん制作費の関係で、映像やVFXの面では比べることができませんが、作品のテーマ性やシナリオは、ハリウッドを超えたと個人的には感じております。

人間の中というミクロの世界で細胞たちが自分の役割を、どんなに他人から軽んじられ、誰からも感謝されなくとも全うしようとする姿に、取るに足りない自分自身を投影して、何度も瞳から熱い涙が溢れました。

めちゃくちゃ泣けてしまって、隣で見てた友人が「どこに泣くとこあったの!?」 と驚いていました。

 


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ヒーロー映画ですが、マーベルのようなスタイリッシュなスーパーヒーローものではなく、コテコテの昭和特撮ヒーロー的な間の鈍くささがあり、それにるろうに剣心的なワイヤーアクションが加えられています。シン・仮面ライダーとは真逆、かっちり決められた阿吽の呼吸の殺陣が気持ちいいです。派手なエフェクトの必殺技はないのですが、通常攻撃を高速で繰り出して、敵病原菌をやっつけていき、爽快です。

 

主人公の二人のポジションは、「その他大勢」 でしかありません。マーベル映画のように選ばれた、勝利が約束された真のヒーローではないんですね。お前の変わりなんていくらでもおるわい、という。それでも、自分の役割をひたむきにこなしていく。時に自分なんて、本当に必要とされているんだろうか? と悩み、もがく。まさしくそれは、現実の自分に置き換えることができます。

 

主人公たち、細胞たちに降りかかる運命は理不尽です。これが普通のヒーロー映画なら破綻してしまうストーリーですが、彼らが守るべき世界は「人間」 なんですね。だから、マーベル映画でヒーローが自分の命を賭して世界を守るというシナリオよりも、ずっと感情移入できるんです。この斬新な設定に痺れました! サノスの指パッチンを彷彿とするような展開もありましたが、こっちのほうが納得できます。神様の理不尽さってこういう感じなんだろうな、って。細胞達にとって知覚できるレイヤーが違う。

 

近年のヴィランが「正義に倒されるべく生み出された悪」 という幼稚なキャラクターに成り下がっていくに対して、本作のヴィランは救いがなく、理不尽な存在ですが、「人間の中で起こる現実」 という回避できない残酷さが胸に刺さります。これをマーベル映画にしようとすると、なにかご都合主義がおきて改心させるということになるでしょう。細胞の世界では、こうだけど、人間の世界でこういうことが起きた場合、我々はどういう風に対処するのか? という問題提起をしているような気がします。

 

がん細胞の扱いは、差別を連想しますし、男の赤血球のナヨナヨした感じはジェンダーや同性愛的な要素を自然と取り込んでいて、活動家が自己肯定感マシマシでコンサルした作品よりも、ずっと作品の質を高めています。

 

人間の世界と細胞の世界で、演技のトーンが違うのも演出として良かったです。細胞の世界では、誇張した演技になっていて、キャラクターを全面に押し出したクサイ演技になっていて、人間の世界はシリアスなトーンが強めになっています(コメディシーン以外)。

 

お父さんが医者から娘の病気を告知するシーン、瞳からハイライトが消えて、相手に焦点が合わず、心が現実と乖離していって、それでも相手に縋ろうとプログラミングされた定型文を口にしていることが伺いしれて、息を呑みました。演技でレ◯プ目ってできるんやな……。

 

子役の演技が素晴らしかったですね。

実は中身大人で過去に転生したのでは? っていうくらい真に迫る演技でした。この人達が大人になったら、すごいことになるのでは。

 

見たあとは、エンターテイメントとして楽しく人体のことが学べて、明日から自分の身体を労ろうと思える良い映画でした。