
今週のお題「好きな小説」
自分の一番好きな作家はジョン・アーヴィングである。
が、ダントツ一番好きな小説と言えば、1986年に刊行されたアゴタ・クリストフの小説「悪童日記」である。好きすぎて、捨て値で売られていた中古本を保存用的にもう一冊買ってしまったくらいだ。
本との出会いは、本著がゲームのマザー3の主人公である、リュカとクラウスという双子の兄弟の名前の由来となったというエピソードを知り、ごくごくミーハーな感じで手に取った。
いい味で予想を裏切られた。
戦時下の敵軍に占領された寂れた村に疎開した双子の兄弟が主人公で、三部作の第一部となる本著では名前は明かされない。双子はとても賢く、独特の倫理観を有していて、大人たちを圧倒している。
文体は、本の中でも説明しているが、双子によるモノローグ形式の日記という体裁をとりながら、双子のどちらが語っているかを明記しない「ぼくら」という語り口を採用している。また、感情的な表現を廃して、客観的な表現に徹するようにして物語るようになっている。淡々とした乾いた文体でありながら、エピソードは劇的で凄惨であり、双子はそのとき、本当はどういう感情だったのだろうか? といろいろ考えさせるのである。
本著は、中編程度の短い小説かつ、文体も凝ってないので、サラッと読むことができる。その点も良い。
本著は作家のデビュー作で、三部作の第一部であり、『ふたりの証拠』(1988年)、『第三の嘘』(1991年)と続いていく。
この二作も、一応読了したが、自分はピンと来なかった。悪童日記以上の面白さは感じなかったし、むしろ一部で終わっても良かったのでは? と思っている。
戦時下という異常事態の狂気の中、幼い双子のぶっ飛んだ行動、決断。なにか正しく、間違っているのか。この部分が面白いと思っていたので、成長してしまった二人についてはあんまり興味が持てなかったし、双子を区別せずに物語るという独特の文体も失われてしまって、凡庸に思えてしまった。スター・ウォーズのEP7‐9みたいな、蛇足感を感じた。
映画化されているのは知らなかった。でも、映像化しちゃったら、悪童日記の独特の表現は不可能ではないだろうか?


