お正月休みが終わります。っていうか、この記事を公開した時点で終わってます。
休み中にやったことと言えば、このゲームをやりました。
「東京ゲームショウ2013」のインディーたち Page7 « WIRED.jp
この記事を読んで日本語化を楽しみにしていたのですが、2013年中のリリース告知から音沙汰なしでした。
無事リリースされて嬉しい。
Windows版、Mac版、Linux版あり、playismではLinux版の取り扱いはなく、Mac版もまだ販売開始されてません(ミスって2回買ってしまい返金してもらいました)。
1月5日まで980円が半額なので、残念に思っていたらsteamの方で66%セールをやっていましてました(もう終わってるかも)。
Save 66% on Analogue: A Hate Story on Steam
ゲームのジャンルはビジュアルノベルとありますが、いわゆるAVG(アドベンチャーゲーム)です。テキストを読み、選択肢を選択し、フラグを立てて、枝分かれした先のエンディングを迎えます。
日本ではAVGのAはアダルトの略なんじゃねーか、と勘ぐりたくなるほど偏った印象があります。このゲームでは扱っている題材も題材なので、テキストベースですが、昼ドラレベルの性描写もありますし、エグい暴力シーンもありますので、その点はご注意ください。
舞台設定は未来です。
宇宙開拓時代に行方知れずとなった宇宙船「ムグンファ(朝鮮語でムクゲを意味し、大韓民国の国花だそうです。)」が600年の時を経て発見されます。
主人公は依頼によって宇宙船の失踪の謎を解き明かすため、自分の乗っている宇宙船から通信をもちいて宇宙船のメインコンピュータにアクセスするのです。
このお話はSFですが、記事の表題にもあるように、約100年前に滅んだ韓国最後の王朝(李氏朝鮮 - Wikipedia)の強烈な男尊女卑社会の時代をモチーフにしています。
このゲームをする動機として、怒られるかもしれませんが、近くて遠いお隣の国の事件や事故にどうして? なんで? という疑問があり、この先も否応なくお付き合いしていく上で、彼らの歴史背景を知ることで理解できるのではないか……という高尚な理由がありました。
キャラクターにブヒれるって訳ではないのだ!
製作者は、カナダ人の女性です。自身が同性愛者である事を告白した上で、当時の韓国の女性の扱われ方に衝撃を受け、その当時に自分が居たらどうしたか? がこのゲームを作る上での動機だったようです。
男性優位な社会構造というのは、もちろん日本も(多分今でも)そうです。
自分が男である以上は、関係ない話ではないし、自分の考えを持っておくべき問題だと思います。
ゲームのボリュームとしては、僕の場合は6時間遊んだ時点で5つのエンディングのうち、4つまで見ました。最後の一つが多分グッドエンディング(タイトルは不謹慎だけど)なんですけど、資料を読み漁るというゲーム上、何周もしにくくて攻略が出るまで待とうかな……という感じです。
以下、ゲーム序盤のネタバレがありますが、最初は「大海原で迷子」状態で何をやっていいのかわからないと思いますので、なんじゃこれ? ってゲーム投げる位でしたらご参考頂いた方が良いと思います。
◯ターミナル画面
衝撃の事実として、ゲーム中に登場する二人のヒロインは人間ではなくAI(人工知能)です。
また、宇宙船の中は完全に無人でです(600年前に全乗組員……というかその認識はなく、船長とは名ばかりの皇帝を頂点とする民族が宇宙漂流していた……が、謎の滅亡を迎えてしまった)。
主人公は宇宙船のAIの協力のもと、死者の手紙やコンピュータに残った通信ログを頼りに宇宙船の謎を解き明かすことになります。
最初は上の画面で進めていきます。
Windowsでコマンドプロンプト、Macだとターミナルの画面です。
ほとんどの人が使っているグラフィカル・ユーザー・インターフェイス(GUI)ではなく、テキストで入力します。
大昔のAVGもこういう方式で、前にシュタインズゲートでもこのシステムで出ましたね(一応クリアした)。
この入力方式の厄介さは、タイプミスするとアウトですし、一度実行されたらアンドゥすることは出来ません。10年前くらいにデーターベース(MySQL)を少し習ったことがあるんですが、「消す」と打ち込んだら警告なしに問答無用で全部消えます。そういう怖さのあるパートです。
ゲーム開始はまず、一人目のヒロインのAI「*ヒュネ」(*はAIを示す)を選択してGUIのモードに切り替えます。写真を見るとわかりますが、コマンド打ち間違いで苦労してます。こうやってログが残る挙動も当時を思い出します。
◯GUIのモード
左側の女の子が*ヒュネです。
この画面でやることは、ログを読んでそれを彼女に見せて、関連するログを探してもらい真実に近づいていくということをします。
AVGでお馴染みの選択肢もあります。
なんと! 美少女ゲームという側面もあるので、お着替えもあります。
こんな感じ。
これは(あえて)科学者。
ほかにもあります。
◯物語について
政敵同士であるキム家とスミス家のログを読んで進めて行きます。
物語は、コールドスリープから目覚めた現代人(今の私達に近い感覚を持った)である「蒼き花嫁」がキム家の養女となり、一族を重用させるために皇帝の側室として政略結婚させられることを軸に、当時の強烈な女性蔑視を垣間見ることになります。
僕が印象的に感じたのは、「女性は家系図に名前を残せない」、「前提として、文字が書けない方が女性らしいとなっているので、書いた手紙は処分する」、「家から自由に出られない」、「そもそも当時の女性はそれが当然と思っていた節がある」ということでしょうか。
日本にもそういうところが昔はあったと思いますが……。
ゲームの簡単なあらましは、ここまでです。
以下は、4つエンディングが終わっての感想なので、できるだけボカして書くつもりですが、察しの良い人は強烈なネタバレになると思いますので、ご注意ください。
◯二人のヒロインの意味
こっちがもう一人のヒロイン「*ミュート」です。
こちらもAIです。代々皇室に使え宇宙船を維持管理してきました。
この二人の性格はまさしく水と油です。
「男尊女卑」という言葉を例にあげると、*ヒュネは現代っぽい感覚を持っています。
一方、*ミュートは「(極度な)男性優位」と言う表現を使います。
ゲームを進めていくと、衝撃の事実が明らかになって納得するのですが、*ヒュネというキャラクターは作者の自己投影の強く出ていると思います。コスプレが趣味とか。
*ミュートは保守派といいますか、その時代の女性の代弁者という立ち位置です。
自分が正しいと思う一方で、こういう見方もあるぞ、という別の可能性を示唆しているんですね。
ムグンファ号の最後を思うと、「彼女」の行動が正しかったとは思えません。
けれど、無念を晴らすにはああするしかない、と言うことも理解できます。
だからこその悲劇なんです。
◯まとめ
非常に考えさせられるストーリーでした。
僕達の現在は、今まで数えきれない程の人々の行動と犠牲の積み重ねで成り立っているという事を強く感じました。今、当たり前の権利だ! って思っている事を獲得するのに、どれだけ苦労したことか……。
ゲームの作りとしても、固定化してしまった感のある日本のノベルゲーにはない趣向で楽しめました。
一つ難点をいうならば、最初に書いた通りに何度もやる気持ちにはなりません。
ログを読んだか読んでないか、AIに見せたか見せてないかのわかりやすいインターフェイスがあれば、尚良かったと思いました。
なんにせよ、海外の個人ゲーム開発者が日本のAVGに影響されて、こういうゲームが登場するなんて面白いなぁと思います。
日本語に翻訳されて嬉しいです。PLAYISMさんや、その他のインディーズゲームを取り扱うプラットフォームは、今後もこういう取り組みは続けて欲しいです。