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アンドレアス・グルスキー展

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倉俣史朗の企画展を見た次の日、普段なら、おもちゃ収集しようと考えていたのに、掘り出し物が見つからず、ギャラリー間でクリスチャン・ケレツ展を見たり、アウトドア用品を買いに吉祥寺のVic2や、三鷹のハイカーズデポに寄ったりしました。時間が余ったので、ふらりと国立新美術館に寄りました。アメリカンポップ・アート展とアンドレアス・グルスキー展が開催されていました。で、後者を見ることにしました。

 

アンドレアス・グルスキーさんについて、全く知らないわけではなく、デジタル処理して加工したライン川の写真が、オークションで写真として史上最高額で落札されたのをニュースで知っていました。また、国立新美術館のロゴ等のデザインを手がけた佐藤可士和さんも、アンドレアス・グルスキーさんを尊敬しているとのことを本で知っていたので、その繋がりもあって、この企画展が国立美術館で開催されたのでは、と思ったりしました。

 

前回の記事と同じく、写真ごとに思った事を書いていきたいと思います。

 

◯ガスレンジ

初期の作品みたいです。

コレを見て、この人才能あるわー、とか思えません。

何が凄いんだろ、解説して欲しい。こういう写真の違いがわかる人間になりたい。

 

◯パリ、モンパルナス

集合住宅の写真をつなぎあわせて、レンズの歪みを廃した均一なグリッドを表現しているように思います。題材自体はル・コルビュジェの集合住宅であるユニテ・ダビタシオンだと思います。写真では、画一的なグリッドの中に多種多様な人それぞれの暮らしを読み取れます。ユニテ・ダビタシオンは、画一的な外観に反して、屋上には幼稚園があったり、街のアーケードを思わせるように、通路は2階分吹き抜けになっていたりと内部のプランは結構自由になっていて、そういう背景を知っていたので、写真をより楽しむ事が出来ました。

 

他にも北京のヘルツォーク&ド・ムーロン設計による競技場や、レンゾ・ピアノとリチャード・ロジャースによるポンピドゥー・センターなど、有名な近代建築作品を題材としたものがありました。

 

◯ライン川 II

想像していたのと違って、小さい写真でした。デジタル処理によって背景の工場群は消去されてしまい、写真でありながら、抽象絵画のような印象を受けます。デジタル処理によって、何でもありになってしまったら、それは写真としてありなのか? という議論はもちろんあるでしょうが、美術作品に対してもっとも重要なのは、鑑賞者にどんな影響を与えるか、だと僕は思います。筆もカメラもフォトショップも、芸術家にとっては自己表現の為の道具であり、絵画か写真であるかのカテゴライズは、ブローカーの都合で決められていると僕は考えています。

 

◯無題

無題と名付けられた写真は、実験的な写真だそうです。例えば、一面に並べられたフロアタイルを撮った写真や、赤茶けた地面を撮っただけのもの。写真としてプリントアウトされると、作成のプロセスを、僕たちは写真家自身に聞く以外には知ることができません。もしかしたら、フロアタイルの一つの毛羽立ち、地面に転がった小石の配置に数日もかけて撮影に挑んでいるのかもしれません。または、なんでもないような無作為な写真に、鑑賞者がどんな重大な意味が隠されているのだろうか・・・と考える滑稽な姿を含めて作品なのかもしれません・・・。

 

無題 VIは、壁にかけられたジャクソン・ポロックのドリッピングによる抽象絵画を撮影したものです。「有名な写真家による撮影」という事実が作品としての骨組みになっていると思います。

 

◯カミオンデ

日本のスーパーカミオカンデの内部を撮影した写真です。図録やポスターにも使われています。差先端の科学技術の結晶なのですが、荘厳な宗教儀式にも見えます。何かのゲームのワンシーンのようです。

 

◯オーシャン

衛星写真を組み合わせ、数週間も掛けてノイズを消し、色調を合わせて作成した写真です。もはや、自分でシャッターを切った写真ではないという作品。水墨画のように、余白を読む写真だと思いました。

 

◯バンコク

このシリーズの写真は、嫌いです。

未開地の人間を野蛮人と言うような、あるいは、親から受け取っただけの財産を盾に、貧しい人を見下すような、程度の低い人間性を感じずにはいられません。写真が意図していることは自分なりにわかるのですが・・・。この作品の一部をトリミングして、会場限定で限定販売していたことも含めて、このシリーズは嫌いです。せいぜい、お高くとまっているがいい。

 

◯まとめ

自分勝手に色々と思うところがあり、予想以上に僕にとってはイイ企画展でした。図録は写真の個展ということもあり、立派で、お値段も結構しましたが、コレが一般流通した後は、価格も2倍くらいになると思って、購入しました。貧乏性です。アンドレアス・グルスキーと言えず、グル、グル・・・と唸っていたら、ミュージアムショップのオネイサンが察してくれました。

 

たまには、こういう高尚な旅もいいものです。

・・・帰りに秋葉原によって、ソフビのおもちゃを買いましたけど。