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VA-11 Hall-A ヴァルハラ[Switch版]一周目クリア後の感想

サイバーパンク・バーテンダーアクションという奇天烈なジャンルを名乗るテキストアドベンチャー「VA-11 Hall-A ヴァルハラ」のSwitch版のレビューです。世界で最も治安が悪い国の一つと称される南米のベネズエラ出身の二人組が主に開発したという出自と、日本のカルチャーの影響を感じられる部分が面白いですね。

ダウンロード販売は結構前からされていましたが、パッケージ版がPS4とSwitchで出るということで、気になっていたものの、タイミングを逃していたし、せっかくなので……と、初回特典付きを購入しました。

今回のために書き下ろしされたイラスト。ちなみにPS4版は赤で鏡合わせになっています。

 

ジャケットはリバース仕様になっていて、『おしえて!ギャル子ちゃん』の作者の描き下ろしイラストになっています。なんかすげーハマったそうです。登場キャラクターが現代秋葉原にいたら、という設定らしい。

おしえて! ギャル子ちゃん 1

おしえて! ギャル子ちゃん 1

 

 

特典その1サントラ。

ジャケットはかなりエッチぃイラストございます。肌の露出はぜんぜんないのにね。

BGMがすごく良いゲームですが、自宅にプレイヤーがない(正確にはあるけど、設定するのがめんどくさい)ので、Spotifyで聴いてます。

 

特典その2、設定資料集。

ローカライズを担当されたPLAYISMがきっちり翻訳してくれています。

内容は(主に女性の)主要キャラの設定とイラスト、開発者インタビュー、続編でもある次回作ニルバーナの紹介。プレイ後に読みましたけど、とても良い内容でした。

 

スケバンゲームズって名前のとおり、日本のカルチャーにすごく影響を受けているみたい。たとえ世界最悪水準といわれる治安の悪さの南アメリカのベネズエラと言えども、ネットが発達した現代なので、「こんなに日本のこと知ってるの?!」とゲーム中に出てくる、正しく理解された日本にびっくりします。

 

では、プレイ開始。

舞台は腐敗した政府と大企業・財閥コーポレーションが仕切る街「グリッチシティ」。貧富の格差が増大して犯罪が多発する一方、全市民に監視用のナノマシンが注入されているディストピアです。

食料問題、強烈なインフレ(カップ麺が一個約六千円!)、政治腐敗、犯罪……さまざまな問題が散在しています。

 

そんな街の下層部に、BTC(英国商標協会-British Trademark Council-という大企業。 グリッチシティのバーの元締め的存在。 商標やそれに関わる特許・認可で商売をしている会社)認定バー番号VA-11 のHall-A (お店のサイズ)を、ヴァルハラと読ませるバーがあります。

主人公はジルと言う名前の27才の女性バーテンダーです。

 

彼女の元に一通の手紙が送られてくるところからお話は始まります。

 

プレイ内容は、バーへ出勤してお客の注文を受け、カクテルを提供して会話をするだけ。ストーリーは選択肢の選択ではなく、どういうカクテルを出したか? で会話が変化します。客の要望に答えるか? わざと間違った酒を提供するか?

お酒はゲームの中のオリジナルなので、カクテルの知識がなくても大丈夫です。ビールなどもありますが、似たような味のする原料が全く違うまがい物です。なので安い。重要なのは、お客の注文を覚えておくこと。常連客のいつものだとか、凹んでいる客に好きなカクテルを提供できるように。

 

レシピは検索できるので覚えておく必要はありません。

甘めとか、男らしいとか、そういうジャンルでも検索可能。

 

材料を二倍入れればLサイズになります。フレーバーは10が限界に思えて、実は20まで入れることが出来ます。なので、原料6のLサイズも可能です。一日の客の要望に完璧に答えると、パーフェクトボーナスでお給料が増えます。アパート代や公共料金を期日まで払わないといけないので、お金を稼ぐ必要があります。

 

しかし、ジルは買い物依存症のようで(親近感!)、日々物欲に惑わされて、仕事の集中力を欠きます。

自宅から買い物ができるので、欲しいものを購入すると、心が満たされ、客の注文のヒントが表示されるようになります。

 

最初のうちは気軽に買い物できましたが、あとの方は買い物する余裕がなかったです。お金は二週目に引き継ぐことができるので、あまり使いすぎは禁物。部屋の模様替えは一周目は諦めたほうが無難だね。

 

このゲームは開発者が基本二人ということから伺えるとおり、インディーズタイトルですが、中身はけっこう凝ってます。

まず、すごい量のキャラクターたちです。そして誰も彼もが濃いキャラクターです。

この大量のキャラクターが、この世界の多様性を表現したかったのか、きちんと物語としてつながりのある、なくてはならないキャラクターなのか、まだ一周目では理解できていません。

 

 

ピクセルアートが多彩なのが魅力の一つ。演出もリッチです。

 

UIがいろいろ変化するのも豪華な感じがしますね。

次回作のニルバーナの話が出てます。

 

キャラクターの会話は、実に下世話でアダルティです。設定資料集によると、注目をあびたくてやってるのではなくて、普通の人々をしっかり描きたいのと、ゲームが稚拙な娯楽ではなくもっと高尚な芸術でであることを証明したかったからみたいです。僕は村上春樹を公共の場で読んでも許されるポルノだと思ってますけど、同じことをゲームでやると批判されちゃうもんね。

幼女型(精神年齢24歳)のセクサロイド。欲求不満の巨乳ハッカー。ベットインも公開してお金を稼ぐ動画配信者。どうして彼女たちはそうなのか? ちゃんと考えれば、なかなか奥深い要素です。

 

正直、サイバーパンク要素を抜いたジルのストーリーは割とありきたりに感じました。うるっとしたのは白状しますが。

やはり世界設定が魅力なんだと思います。ナノマシンによる監視がされていますが、劇中ではあまり窮屈な感じはしていないように思いました。住めば都っていうか。それよりもナノマシン拒絶症の方がずっと重要なファクターになっているみたいで、これは多分、サイバーパンクと同じで、高度なテクノロジーがもたらす拒否反応を表現しているんでしょうね。 

僕はサイバーパンクが未来への漠然とした不安から生まれたものと思っていたのですが、ベネズエラではすでにサイバーパンク的な世界になりつつあるみたい。そのリアルな空気感がゲームにながれているのか、街では大きな事件が起こっているのに、バーの中は隔絶した世界のように、日常のまま。ベネズエラではこういう毎日なのかなぁ、とカルチャーショックを受けています。例えば、日本でも交通事故で痛ましい事件が起きたとしても、やはり普通に仕事して、届いたブツをレビューしているじゃないですか。そんなふうに、海外では自爆テロとか銃乱射が起きても普通に生活しているのかもなぁ……なんて想いを巡らせました。人間はタフにできていて、不幸な現状よりも大きく変化する未来……とくに良くない未来の方を拒絶する生き物なのかもしれません。

 

登場人物の誰も彼もが、僕より頭が良いみたいで(僕は犬に劣る……)、さらっと一周しただけでは、あまり理解が追いついていないのかも。

要素がバラバラで、どこがどう繋がっているのか……。

有耶無耶になっているのは演出なんでしょうか?

これがサイバーパンクなのか!?

何度読んでもAKIRAが理解できない僕には、一生理解できないのかもしれない……。

 

 

一周目では、ジルの過去の問題が一つ解決しただけで、多くの謎が残されています。

あの人の過去は? あの人とあの人は結局どういう関係だったんだろう? そもそもあの客の登場は話の筋書き上、なんの意味があったの?

世界設定を楽しむゲームなのかもしれません。いくらバーテンダーだって、全員の過去や秘密を全部知ってるなんてことはできない。せいぜい想いを巡らせるに留めるくらいが、確かにリアルなのかも。映画やゲームに慣れすぎて、全ての登場人物に意味があり、ほぼすべての伏線が綺麗に回収されることが当然って思っていたのかも知れませんね。

プレイするたびに新しい発見がありそう。

 

最後にBGMについてです。

このゲームのBGMは、仕事前にジュークボックスで12曲を任意で選曲してバーの店内にかけます。これが偶然だとおもうけど、話の展開と妙に噛み合ったタイミングで、すごいベストなチョイスの曲がかかることがちょくちょくあるんですよ。鳥肌が何度も立ちました。

 

このゲームを今は最高に気に入ったタイトルという訳ではないんですが、かと言って自分には合わなかったと断ずるのも難しく思っています。そんなこと考えずに単純にキャラ萌えすれば良いのかもしれませんけどね。

VA-11 Hall-A ヴァルハラ - Switch

VA-11 Hall-A ヴァルハラ - Switch

 
VA-11 Hall-A ヴァルハラ - PS4

VA-11 Hall-A ヴァルハラ - PS4

 
VA-11 Hall-A: Complete Sound Collection

VA-11 Hall-A: Complete Sound Collection