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フィンチ家の奇妙な屋敷でおきたこと(PC版) - 一族の興亡を巡る斬新な演出と造り込まれた舞台環境

もう10年以上前の事です。当時、建築の現場監督として働いていた僕は、とある物件の解体の見積もりを頼まれます。僕は、解体業者さんを現場に呼び、自分はメジャー(建築業界ではコンベックス)で建物の大きさやら壁の長さや厚みを測り、デジカメで部屋を記録します。その物件は、もう住んでいる人間がいないのに、家財道具のほとんどが残っていて、棚には沢山のモノで雑然としていますし、クローゼットの中身がベットの上にとっちらかっていました。夜逃げ物件なのかな、とその時は思ったんですが、なんだか、自分が知らない他人の家のその状況がミステリアスで、好奇心を刺激されたのを覚えています。いい趣味ではないけど。クリストファー・ノーラン監督のデビュー作「フォロウィング」にも似た感覚を感じました。

「 フィンチ家の奇妙な屋敷でおきたこと」は、フィンチ家というとある裕福な一族の最後を辿る一人称視点(主に)アドベンチャーゲームです。銃撃戦のないFPS、ウォーキングシュミレーターなんて呼ばれますね。

 

一族最後の生き残りであるエディスは、亡くなった母親からフィンチ家の邸宅の相続権と奇妙な鍵を受け継ぎます。この家は、一族の者が亡くなると部屋を封印して残し、新たに生まれると増築するというような奇妙な造りをしていて、景観も独特です。

 

増改築を繰り返す家といえば、アメリカに実存する「ウィンチェスター・ミステリー・ハウス」を連想しますが、このフィンチ家の邸宅も鬱蒼とした薄暗い森の中にあり、どこかホラーテイストを感じます。

 

エディスの独白やセリフは、空中に表示されます。独特ですが、絵面にマッチしていると思いますし、3D空間でプレイヤーを迷わさないよう、次の場面へ向かわせる道先案内にもなっています。とてもクールです。

 

ゲームは主としてエディスの目線を通して、一族の他の者たちの最後を追体験していきます。

語り方が独特で、虚実が入り乱れ、時にはアートスタイルが変化し、プレイスタイルも変化します。物語のスムーズな流れを妨げないように、いかにもゲーム的に操作方法が特にレクチャーされるわけではないので、戸惑う部分がありますが、すごくリッチな体験だと思いました。この部分はネタバレになってしまうので、詳しくは書きません。ぜひ実際にプレイしてもらいたいです。

 

屋敷の中は、どの部屋も特徴的で見入ってしまいます。歩行速度の遅さが気になりません。

 

特に行ったり来たりせずに、一本道なのが良いのかもしれません。

 

この話には、ほとんど確かな真相というものがありません。

一族のほとんどが若くして死んでしまうのは呪いなのか? 遺伝的に精神疾患を患いやすいのか? 虚実が入り乱れ、電気が来ていないはずの館に電気が灯っても、普通のことのように受け入れられている自分がいます。

 

僕はプレイ中、この家を全く知らない僕と、ある程度知っているエディスの間に乖離を感じていたんですが、エディスが独白で語りかける誰かが明らかになった時、すごく感動しました。悲劇に満ちたフィンチ家の歴史ですが、なのにクリア後の感覚としては、なぜか希望や喜び、爽やかさがありました。

 

プレイ時間はゆっくりやっても3時間程度でしょうか。

ゲームでたった3時間っていうのは、悪くとられることもあるかもしれませんが、このゲームにとってはそうではなかったです。

丁寧に造り込まれた屋敷の内装。追体験によって大きく変わるアートスタイル、プレイスタイル。

映画ではきっとこのやり方では難しいでしょう。ゲームならではの体験でした。

素晴らしい作品でした。

こういう作品を、それこそGoogleのスタディアのようなストリーミングサービスで、別途コンソール機を購入せずに、映画をレンタルするようにプレイできたら良いなって思います。

 

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